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11月から「フリーランス新法」スタート!育児介護の配慮やハラスメントにも対応


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8 働きがいも経済成長も
11月から「フリーランス新法」スタート!育児介護の配慮やハラスメントにも対応

11月1日から、フリーランスに仕事を発注する際に取引条件の明示や就業環境の整備を企業側に義務付ける新法が施行されました。正式名称は「フリーランス・事業者間取引適正化等法」といいます。今回はこの新法の概要について理解を深めてみましょう。

そもそもフリーランスとは?

フリーランスとは、特定の企業や組織に属さずに、自身の経験や知識・スキルを活用して収入を得ている人や働き方の総称です。「フリーランス」が法令上の用語ではない日本では、フリーランサーや個人事業主、自由業などと呼ばれることもあります。

会社員との大きな違いは、公的年金や保険などのほかに、会社と結ぶ契約形態があります。会社員は雇用主と従業員という関係なので「雇用契約」が結ばれていますが、フリーランスの場合は、企業や法人と「業務委託契約」を結んで仕事をします。

フリーランスは時間や場所に縛られずに自由に働けるというメリットがある一方で、収入はその人の営業力や業務遂行能力によって決定されるため、仕事が全くなくなってしまう状況もあり得るというデメリットもあります。

フリーランス業の例としては、カメラマンやライター、イラストレーター、作家、ミュージシャン、写真家、大工、プロ野球選手など多種多様です。こう書いている私もフリーランスのライターなので、今回の新法は他人事ではありません。

「取引の適正化」と「就業環境の整備」が大きな柱!新法の内容とは?

新法施行の背景には、働き方の多様化や副業者の増加などでフリーランスという働き方が普及してきたことが考えられます。そんななか「一方的に報酬を減額された」「報酬をなかなか払ってもらえない」など、フリーランスが取引先との取引でさまざまな問題やトラブルを経験していることが明らかになっています。

新法では、発注事業者がフリーランスに業務委託をした際に、直ちに取引内容を明示する義務が定められました。納期や業務内容、報酬額や支払期日などを書面又は電子的方法(電子メールやSNSでのメッセージ、チャットツール等)で明示しなくてはいけません。電話など口頭はNGです。そして報酬の支払期日も、成果物受領日から数えて60日以内のできる限り短い期間内で定め、期日までに支払う必要があります。

また、フリーランスに1ヶ月以上の業務委託をしている場合は、
①受領拒否 ②報酬の減額 ③返品 ④買いたたき ⑤購入・利用強制 ⑥不当な経済上の利益の提供要請 ⑦不当な給付内容の変更・やり直しという7つの禁止行為も定められています。

さらにフリーランスに6ヶ月以上の業務委託をしている場合には、就業環境の整備として「育児介護等の配慮」もプラスされます。例えばフリーランス側から「介護のため水曜日はオンラインの業務に切り替えたい」などの申し出があった場合は、業務をスムーズに両立するための配慮をしなくてはいけないというものです。

その他には、セクハラ、マタハラ、パワハラなどハラスメントによりフリーランスの就業環境が害されることを防ぐための義務も盛り込まれました。立場が弱いフリーランスの場合、継続して仕事を得るためには泣く泣く取引先の無理な要求に応じざるを得ないという現状が問題視されているからです。

ちなみに違反と思われる行為があった場合、フリーランスは行政機関の窓口に申し出ることが可能です。法違反なのかよくわからない場合は、弁護士に無料で相談できる窓口「フリーランス・トラブル110番」に相談することもできます。

「フリーランス・事業者間取引適正化等法」の詳しい内容については、厚生労働省のパンプレットを一読してみてはいかがでしょうか。

海外の取り組みとは?

フリーランスという働き方や法の整備は、海外ではどうなのでしょうか? ニューヨーク市では今から8年前の2016年にフリーランスで働く労働者の賃金を守るための条例「フリーランス賃金条例」が可決されています。報酬額が800ドル以上の場合、支払期日や金額を明記した書面による契約を義務付けるという条例です。

アメリカは日本よりフリーランスで働く人の比率が高い国です。理由のひとつには、日本のように終身雇用が一般的ではない社会背景があります。さらに、アメリカの企業はポジションごとに人材募集をして専門性を重視する傾向が強いことから、若いうちから専門的なスキルを身につけている人が多く、フリーランスとして活躍しやすい国であるからでしょう。

働き方の多様化に伴って、今後フリーランスは増加していくとみられています。副業OKという会社が増えたことやフリーランス向けの設備やサービスが充実したこと、またコロナ禍を経てリモートワークが普及するなど環境が整ってきたことも増加を後押ししているようです。フリーランスという働き方を確固たるものにしていくことを目的に制定された新法に期待が高まりますね。


執筆/フリーライター こだまゆき