「ほしいも」の全国シェア9割以上、産出額全国第1位を誇る茨城県。“ほしいも王国”と言ってもいいほどのこの県で、今年度から新たに始まった取り組みがあります。それが、「ほしいも」の広く奥深い魅力を消費者に伝え、さらなる消費拡大を図ることを目的としている「全国ほしいもグランプリ2025」。この記事では、1月10日に開催された本イベントを通じて、SDGsの目標達成に向けた取り組みと、地域産業の活性化について、一緒に探っていきましょう。
全国から51点の応募!“日本一の美味しさ” の称号はどの「ほしいも」に?
茨城県産の「ほしいも」はもちろんのこと、北海道から九州・鹿児島まで全国各地のエントリーがあったという「全国ほしいもグランプリ2025」。応募数は、合計51点にも昇ったのだとか。その中で書類審査、品質分析審査を通過した上位15点が、最終審査に進出しました。ちなみに審査基準は、「糖度」「食感」「外観」「総合評価」の4項目です。

さつまいもシェフとして知られる岡部勝義氏をはじめとした食の専門家や有識者、さらには、芸能界の中でも指折りのお芋好きと知られているタレントの橋本マナミさんが審査員として参加。

食味官能評価を行う過程では、それぞれ味も個性も全く異なっていることを再認識した様子。生産者間の競争や協力により、一言で「ほしいも」と括っても、多種多様な広がりがあるようです。このようなところから、品質の向上、市場拡大のフックが垣間見えるのではないでしょうか。

そうして「日本一美味しいほしいも」に輝いたのは、茨城県東海村の「株式会社 干し芋農園川上」でした。続く第2位は「株式会社 幸田商店」、第3位は「干しいも工房しんあい農園」となっています。両者はいずれも、ひたちなか市で生産しているとのこと。この結果から、ベスト3を茨城県が総なめしていることが分かりますね。“ほしいも大国” としての凄まじい実力を感じるはず……!
人も、「ほしいも」も、活き活きと
先ほども触れた通り、「全国ほしいもグランプリ2025」のような取り組みが、生産者間の競争や協力をより一層強くすると言えるでしょう。「ほしいも」の品質向上と市場拡大が進んでいくことで、地域の雇用創出と経済活性化にも良い影響を与えます。

また、第3位から第1位までそれぞれの受賞者コメントでは、「社員やパートさんの力があってこそ。」という旨の内容が語られていたのが印象的でした。賞を獲得したことで、農園の認知度が上がり、販売数増加(=経済成長)に繋がると同時に、働く人々の満足感・誇り(=働きがい)もアップしますね。これら一連の効果は、SDGsの8つ目の目標「働きがいも経済成長も」に結び付けられそうです。
そしてもう一つ、 SDGs目標12で掲げられている「つくる責任 つかう責任」にも言及していきたいと思います。この「全国ほしいもグランプリ2025」から見えてくるのは、さつまいもの栽培から加工まで、一貫した生産体制で食品ロスの削減に取り組む姿勢です。さらに、環境に配慮した農業技術の導入や、持続可能な生産方法の推進にも力を入れているとのこと。農地の適切な管理と土壌保全により、生態系の維持と地域の自然環境を守る責任を徹底しています。

最終審査に参加された感想を聞かれ、「表彰を見ていて、生産者さんの思いが伝わってきて、泣きそうになった。」と話した橋本さん。つくる側の努力・責任・想いを真っすぐ受け止めたからこその言葉に感じました。

ちなみに、“ほしいも大国”ならではのスポットとして、茨城県ひたちなか市には「ほしいも神社」が存在するのをご存知でしょうか。金色(ほしいも色)の鳥居が象徴的ですよね。思わず足を運びたくなるような面白さを含んでいます。地元の名産物と観光を組み合わせることによって、農業以外のフィールドでも、持続可能な街づくりが広がっていくのです。
ほしいも大国・茨城県の挑戦はこれからも続く
今回は、「全国ほしいもグランプリ2025」の話題をお伝えしました。今年度から新たにスタートした挑戦ということで、まずはこの取り組みを定着させることが、“ほしいも王国”としてのブランド力を向上させるでしょう。国内外への販路拡大のきっかけにもなりそうです。そしてこれは、茨城県以外での持続可能性とも密接に関わるのではないでしょうか。例えば、来年以降の応募数が増えていけば、注目もきっと集まります。その流れで、全国各地で若手生産者の育成や、新技術の導入による産業の革新を確保することができるはずです。「全国ほしいもグランプリ2025」の例のように、環境保全と経済成長両方の面からアプローチできる取り組みが増えていけば、SDGs目標の達成にまた一歩近づきそう。その土地が誇る豊かな特色、名産品を活かした挑戦から目が離せません。
執筆/フリーライター 黒川すい