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70歳就業時代を支える「きこえ」のケア。若手とベテランの対話を阻む物理的な壁とは?


この記事に該当する目標
8 働きがいも経済成長も
70歳就業時代を支える「きこえ」のケア。若手とベテランの対話を阻む物理的な壁とは?

生涯現役社会の鍵を握る「世代間コミュニケーション」の重要性

少子高齢化が進む日本において、働く現場の風景は大きく変わりつつあります。厚生労働省の報告によれば、70歳までの就業確保措置を実施している企業は34.8%に達し、シニア層が長く活躍する「生涯現役社会」が現実のものとなってきました。こうした中で重要視されているのが、世代を超えたコミュニケーションです。しかし、若手とベテランの間にある溝は、単なる価値観の違いだけではないようです。SDGs目標8「働きがいも経済成長も」を実現するためには、誰もが能力を発揮できる環境づくりが欠かせません。最新の調査から、世代間の対話を阻む意外な「物理的要因」が見えてきました。

調査で判明した「物理的なすれ違い」と“分かったふり”の背景

世界トップクラスのシェアを誇る補聴器メーカーの日本法人、GNヒアリングジャパン株式会社が実施した調査により、職場の世代間コミュニケーションにおける切実な実態が明らかになりました。
調査結果でまず目を引くのは、若手社員(20~35歳)のポジティブな姿勢です。約6割もの若手が「上司や先輩と話したい」と考えており、ベテランが培ってきた仕事の進め方や経験談を吸収したいという意欲を持っています。一方で、その熱意とは裏腹に、実際の会話では深刻な「物理的なすれ違い」が生じていました。

特に深刻なのが、ベテラン社員(60~75歳)が抱える「きこえ」の悩みです。調査によると、若手社員の言葉がうまく聞き取れなかった経験を持つベテランのうち、実に約54%が聞き返さずに「分かったふり」をしたことがあると回答しています。その理由の多くは「何となく分かった気がした」という油断や、「聞き返すのは相手に申し訳ない」という過度な配慮によるものでした。

興味深いのは、互いが感じるストレスの質が異なる点です。若手社員は「会話のテンポが合わない」ことに違和感を抱きやすく、一方でベテラン社員は若手の「声が小さくて聞き取りにくい」ことに課題を感じています。 つまり、世代間のズレは精神的な理由だけでなく、声量やスピードといった物理的な要因によって無意識に加速しているのです。ベテラン社員が聞き取れない不安から会話そのものを避けるようになってしまえば、貴重な知見やノウハウの継承が途絶えてしまう恐れもあります。

「きこえ」の課題を、個人の問題から組織のインフラとして捉え直す

今回の調査から浮き彫りになったのは、「きこえ」の課題が個人の健康問題にとどまらず、企業の持続的な成長を左右する「インフラ」としての側面を持っているということです。
上智大学の荒井隆行教授は、加齢による難聴は高い周波数の音が聞き取りづらくなることから始まると指摘しています。例えば「7時(しちじ)」と「1時(いちじ)」の聞き間違いは、子音に含まれる高い音が聞き取れないことに起因します。こうした特性を理解しないまま「話が通じない」と互いに諦めてしまうことは、組織にとって大きな損失です。
注目すべきは、ベテラン社員の3割以上が「きこえが改善すれば、より職場の人とコミュニケーションが取れる」と期待を寄せている点です。これは、適切なケアや配慮があれば、シニア層の働く意欲や職場での関係性が劇的に向上する可能性を示唆しています。

「きこえ」を改善するためのアプローチとして、若手側は相手の顔を見て、ゆっくり、はっきりと発声することを意識し、ベテラン側は騒がしい場所を避け必要に応じてテクノロジーの力を借りるといった双方向の歩み寄り。そして、物理的な障壁があることを組織全体で正しく理解し、互いにリスペクトを持って配慮し合える文化を醸成することが、重要です。
近年では補聴器も大きく進化し、GNヒアリングが提唱する「オーガニックヒアリング」のように、個人が持つ本来のきこえに近い「自然な聞き心地」を追求しています。騒がしい環境下でも聞きたい音に集中できる機能や、装用を忘れるほどのフィット感、さらにはスマートなデザインの耳あな型など、職種や好みに合わせた多様な選択肢が広がっています。
このように、双方向の歩み寄りとデバイスの活用、環境整備をセットで行うことが、多様な世代が共生する職場のスタンダードになっていくはずです。

誰もが「伝わる喜び」を感じながら輝き続けられる職場環境へ

世代を超えて互いの声が届き、多様な視点が交わされる環境は、ベテランの知見をビジネスに生かし、それを次世代が受け継いでいく好循環を生み出します。GNヒアリングジャパンが提唱するように、きこえを改善しコミュニケーションの質を高めることは、いきいきと働き続けるための前提条件といえるでしょう。
「生涯現役社会」の実現には、制度の充実と同じくらい、日々の業務における「伝わる喜び」を担保することが重要です。「きこえ」のケアを企業の持続可能な成長戦略の一つとして捉え直すことで、年齢にかかわらず誰もが輝ける社会への扉が開かれるのではないでしょうか。