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「今日より1,000歩多く歩く」 18万人のデータが示した健康への可能性


この記事に該当する目標
3 すべての人に健康と福祉を 17 パートナーシップで目標を達成しよう
「今日より1,000歩多く歩く」 18万人のデータが示した健康への可能性

「歩くことは健康にいい」。誰もが知るそのあたりまえを、圧倒的な規模のデータで検証した白書が公表されました。
住友生命とJMDCが発表した『プラス1,000歩がもたらす健康増進白書』です。
約59万人の歩数データと約18万人の医療データを紐づけた日本最大級の分析から見えてきたのは、今よりわずか「10分多く歩く」ことが、血圧やBMIといった健診値の改善につながりやすいという傾向でした。
日常の小さな行動変容が健康だけでなく、社会全体にもたらす可能性について考えます。

「プラス1,000歩」という発想の転換

「健診値の全項目で、ここまできれいな結果が出るとは正直想像していなかった」。
住友生命のデータサイエンスオフィサー・藤澤陽介氏がそう振り返ったのは、同社と株式会社JMDCが共同で発表した『プラス1,000歩がもたらす健康増進白書』のプレス発表会でのことでした。

今回の白書がユニークなのは、「1日8,000歩を目指そう」といった一律の目標ではなく、「今の自分からプラス1,000歩増やそう」という個別の視点を打ち出した点です。
発表会に登壇したJMDCの坂井康展氏はこう説明します。

「一律に8,000歩を掲げると、今3,000歩の人は『今日も達成できなかった』という挫折感を積み重ねてしまいます。プラス1,000歩なら3,000歩の人は4,000歩でいい。
その小さなプラスにも、十分な健康効果が期待できることを示したかったのです」

1,000歩は約10分の歩行、距離にして600〜700メートル程度。
ひと駅手前で降りる、少し遠くのコンビニへ行く、ランチのついでに遠回りするなど、そんな日常の些細な選択で十分に到達できる水準です。

健診値の全10項目で確認された「歩いた効果」

白書では、1日の平均歩数が1年間で1,000歩以上増えた層(歩数増加群)と増えなかった層を比較しました。
その結果、BMI、血圧、脂質、肝機能、血糖値など主要な健診値の全10項目において、歩数増加群のほうが「改善した人の割合」が高い傾向が確認されました。

藤澤氏は「歩数というシンプルな指標が、ここまで幅広い健診項目と関連しているとは思っていなかった」と率直な驚きを口にしています。
スマートフォンやウェアラブルデバイスから自動取得した客観的なデータを用いているだけに、この結果の信頼性は高いといえます。

さらに、がん・心筋梗塞・脳卒中の3大疾病に限定した分析では、歩数増加群は歩数非増加群と比べて平均入院回数が43.2%少なく、平均入院医療費も42.6%低い水準でした。

なかでも注目すべきは、1回の入院あたりの医療費には両群で大きな差がなかった点です。
差は治療費そのものではなく「入院するまでに至る頻度」、つまり発症リスクそのものの差として現れていたのです。
毎日少しずつ多く歩くことが、深刻な病気への入口を遠ざける可能性をデータが示しています。

「未病・予防」へのアプローチ

SDGs目標3「すべての人に健康と福祉を」の達成において、生活習慣病の増加と医療費のひっぱくは日本社会が直面する重大な課題です。

白書によると、生活習慣病の予備群は全体の約29%を占め、健康状態が悪化するにつれて平均歩数も減少する傾向があります。
また、国が推奨する1日8,000歩を年間平均で達成している人は全体の約35%にとどまっており、歩行習慣の底上げには大きな余地があります。

今回の白書が社会に提示したのは、「予防」という視点の重要性です。
病気になってから治療するのではなく、日常のなかでケアして悪化を食い止める。
1日プラス10分の歩行は個人にとっての小さな健康管理ですが、社会全体でみれば医療システムの持続可能性を守るための力強いアプローチになり得ます。

健康への一歩が社会貢献へつながるエコシステム

発表会でもう一つ注目されたのが、住友生命の健康増進プログラム「Vitality」を通じた寄付の仕組み。
利用者は日々のウォーキングで獲得した特典チケットを、あしなが育英会やWWFジャパン、日本赤十字社などへの寄付にワンクリックで充てることができるのです。

2021年6月から2026年3月末までの累計寄付額は、10億円を突破。
2024年1月の能登半島地震後には日本赤十字社への寄付件数が約1.7倍に急増するなど、日常的な健康行動が社会課題への即応にもつながっています。

さらに、1日平均8,000歩以上歩く層の寄付率は21%で、6,000歩未満の層の13%を大きく上回っていました。
そこに対して藤澤氏は、「身体を動かす習慣が身についている人ほど、社会課題に対しても前向きで利他的な行動を起こしやすい可能性がある」と分析します。

自分の身体を健康にするための歩行が、環境保護や災害支援といった社会貢献へ直接つながるこのエコシステムは、SDGs目標17「パートナーシップで目標を達成しよう」を体現するモデルといえるでしょう。

健康づくりを「個人の努力」にしないために

発表会で繰り返し語られたキーワードが「健康づくりの社会インフラ化」でした。
住友生命グループの上席執行役員・データマーケティングオフィサーの工藤征夫氏はこう語ります。

「プラス1,000歩の効果を、個人の努力や根性の問題として片付けるべきではありません。
政府・自治体・民間企業が一体となり、人々が自然と身体を動かしたくなる仕組みを社会のインフラとして捉え直していく必要があります」

Vitalityが採用する「歩けば保険料が割引になる」「リワードがもらえる」といった行動経済学に基づくインセンティブ設計は、利用者の歩数を36か月にわたって有意に増加・維持させることが国際学術誌『Preventive Medicine』でも確認されています。
これは意志の強さに頼らず、仕組みの力で習慣をデザインするアプローチです。

プラス1000歩には、特別なウェアもジムも必要ありません。
今日からいつもよりも10分多く歩いてみるだけ。まずは自分自身の身体のために。
その小さな習慣がめぐりめぐって、社会全体の健康へとつながっていくのです。

住友生命Vitality
https://vitality.sumitomolife.co.jp/



執筆 / フリーライター 小見山友子