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古民家を宿と地域拠点に!神戸・塩屋で進む空き家活用の新たな挑戦


この記事に該当する目標
11 住み続けられるまちづくりを
古民家を宿と地域拠点に!神戸・塩屋で進む空き家活用の新たな挑戦

全国的に空き家が増加し、地域のスポンジ化や景観悪化が全国共通の課題となる中、古い建物を単に解体するだけでなく、地域の価値を高める拠点として再生させる取り組みが注目されています。
兵庫県神戸市垂水区の塩屋地区にある「塩屋的住環境の家 」は、昭和初期に建てられた築90年以上の古民家をリノベーションした、1日1組限定の宿であり地域コミュニティの拠点です。

建築家と行政、そして地域住民が連携して空き家に新たな可能性を見出し、街の魅力を未来へつなぐ取り組みの事例を紐解きます。

課題解決へ向けた「建築家×行政×地域」の協働モデル

全国で空き家数や空き家率の上昇が懸念される中、神戸市では使える空き家を売却・賃貸や地域利用へ促す取り組みを進めています。その施策の一つが、建築家の提案力を活かして空き家を魅力的に再生し、社会貢献のために活用する「建築家との協働による空き家活用促進事業」です。令和4年から7年の累計は、84件にのぼります。

伝統的な手法と現代材料の融合による空間デザイン

築90年以上の建物は柱の基礎や強度の面で課題が多く、限られた予算内で耐震性や快適性を確保する工夫が必要でした。そこで活用されたのが、左官の下地材として古くから使われてきた「木摺(きずり)」です。
近年、構造解析によって木摺が耐震要素として活用できると分かり、安定して入手できる流通品を規則正しく並べることで、強度を保ちつつ木目の美しさを活かした意匠として仕上げられています。

また、既存の床を下げて土間を作り出し、天井裏を撤去して棟を共有する屋根勾配を露出させることで、大勢が集まれる開放的な空間を確保しました。床を下げたことで縁側や廊下がベンチのような高さになり、人々がつかず離れずで心地よく過ごせる工夫が施されています。

二重窓化や断熱性の高い樹脂サッシの導入、柱の色に合わせた塗装や、柿渋染めのカーテンなど、古い良さと現代の暮らしやすさが融合されています。

地域に根ざした「暮らしの体験」と持続可能なエコシステム

この事例で特筆すべき点は、単なる宿泊施設の創出にとどまらず、地域全体とつながる持続可能なエコシステムが構築されている点です。宿にはキッチンやダイニングが備わっており、宿泊客は近くの商店街で買った食材を調理するなど、塩屋の日常的な暮らしを疑似体験できます。また、不定期でお弁当販売や展示・イベントも開催され、地域住民が集う文化拠点としても機能しています。

空き家問題という全国的な課題に対し、建物の記憶を継承しながら地域にひらかれた拠点へと再生させた「塩屋的住環境の家」。建築家の技術や表現力、行政の補助制度、そして地域を愛する人々の思いが重なることで、街に新たな循環と賑わいが生まれています。
壊して新しくするのではなく、すでにある資産を生かし育んでいくこの取り組みは、SDGs目標11「住み続けられるまちづくりを」を具現化する優れたモデルケースと言えます。

「使い捨て」から「生き直す」街へ。身近な建築や空間の再生から始まるこの取り組みから、私たちが暮らす地域の未来について、新しい視点が見えてきそうです。