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ニッポン放送『SDGs MAGAZINE』 新内眞衣と学ぶSDGs 食品ロス問題で考える目標12「つくる責任 つかう責任」

ニッポン放送『SDGs MAGAZINE』 新内眞衣と学ぶSDGs 食品ロス問題で考える目標12「つくる責任 つかう責任」

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  • つくる責任つかう責任

ニッポン放送 のSDGs啓発番組『SDGs MAGAZINE』は、新内眞衣さんをパーソナリティに迎え、6月12日に第3回となる放送を迎えた。目標12「つくる責任 つかう責任」をテーマに食品ロス問題ジャーナリストの井出留美さんをゲストに招き、その現状や課題を聞いた。

食品ロス問題から考えるSDGs

SDGsの目標12「つくる責任 つかう責任」がテーマとなった今回の放送。新内さんは、ファストフード店(fast food)やコンビニエンスストアでアルバイトをしていた経験があり、かなり身近な問題として、この目標12を捉えているのだという。
新内 「私のアルバイト経験の中でも、『食品ロス』は目の当たりにしたテーマでもあるんです。ファストフード店で働いていた時は品質管理という名のもとに、いろいろなものが捨てられていました。私がいたお店は、雨の日にどれだけ商品をさばけるかなどをデータで綿密に計算していたり、アルバイトも真面目で長い期間働いていた人たちばかりだったので『今日はあまり来なそうだな』という時は、ちょっとつくる量を少なめにしたりとか、頑張ってロスを少なくしているほうだったんです。それでもロスを完全になくすには足りなかった。やっぱり、ロスが出ると悲しかったですし、コンビニでもバックヤードに行くと廃棄するお弁当とかが山積みになっていて、それを見ると心が痛いなと思っていました」

目標12で重要な位置を占めるのが、まさにこの食品ロスの問題。ターゲット3には「2030年までに小売・消費レベルにおける世界全体の一人当たりの食料の廃棄を半減させ、収穫後損失などの生産・サプライチェーンにおける食料の損失を減少させる」と記されている。今回は、この食品ロス問題について学ぶべく、専門家のジャーナリスト、井出さんに新内さんが話を聞いた。

新内 「すごく柔らかい雰囲気の方ですね。今日は、よろしくお願いします」

井出 「よろしくお願いします」

井出さんは奈良女子大学食物学科卒の修士、博士で、ライオン株式会社、青年海外協力隊、日本ケロッグ広報室長などを経て、現在はさまざまなメディアや講演を通じて食品ロス問題を広める活動を行っている。東日本大震災での食料支援の廃棄に衝撃を受け、自身の誕生日でもある3月11日を冠した会社「office3.11」を設立。議員立法である「食品ロス削減推進法」成立に協力し、食品ロス削減を目指す政府・企業・国際機関・研究機関のリーダーによる世界的な連合「Champions12.3(SDGsの目標とターゲットを示した数字)」のメンバーでもある人物だ。「食料危機」「あるものでまかなう生活」「賞味期限のウソ」や第68回青少年読書感想文コンクールの課題図書にもなった「捨てないパン屋の挑戦 しあわせのレシピ」など著書も多数。令和2年度の食品ロス削減推進大賞・消費者庁長官賞も受賞している。

新内 「私は、飲食チェーン店でアルバイトをしていて、捨てられていく食べ物とかを見てきたのですが、品質管理と言ってまだ全然食べられるものを捨てていくことには抵抗がありました。だからといって従業員たちで食べるわけにもいかないですし、そこは結構もどかしかったですね。コンビニの弁当とかも、一定の時間から1秒でも過ぎたものは『ピー』っと鳴ってしまってレジを通らないんです。改めて、この現状について伺いたいと思います」

井出 「世界全体では、つくっている食べ物の3分の1、13億トンが捨てられています」

新内 「すごい量ですね」

井出 「世界中で今、問題になっているんです」

新内 「日本には『もったいない』という言葉がありますが、日本の食品廃棄量はどれくらいあるのでしょうか」

井出 「日本の食品ロスは年間570万トンで、これは1400万人くらいいる東京都民が1年間食べていける量だと言われています」(注:放送後の2022年6月9日、政府が2020年度の食品ロスの推計値を年間522万トンと発表)

新内 「それは、もったいない! ちなみに2000年度から2030年度までに半減させるという目標は達成できるのでしょうか、今のその調子で・・・」

井出 「今のところは半減に近づいて来ているんです。ただ、日本って達成できそうな目標しか立てないんですね。だから2000年という、ほぼ1000万トン近く捨てていた頃と比べて半減と言っている」

新内 「それは、ちょっとずるくないですか」

井出 「そうなんです」

新内 「でも、逆に言うと2000年には1000万トン近く捨てられていたということ」

井出 「そうですね。確かに、その頃と比べればましになってきたのかなと思います。ただ、まだまだ世界でも食べられない人がいますよね。そういった人に寄付をしている、食料を支援している量が1年間で420万トンと言われているので、それと比べると多いじゃないですか。やはり、それはちょっと状況を変えないといけない」

食品ロスの46%が家庭から

新内 「570万トンの内訳はどうなっているのですか」

井出 「半分近く、46%が家庭から出ています」

新内 「えっ! そんなにですか」

井出 「意外と消費者って『どうせ企業が捨てているんでしょ』と思いがちですが、実は半分近くが消費者から捨てられているんです。お金に換算したほうが分かりやすいかなと思うのですが、京都市だと1年間に1世帯で6万円分くらいを捨てている。でも、京都市って全国的には一番家庭ごみが少ないところなんです。ということは、恐らくほかの自治体では10万円分くらい捨てている可能性は十分にあります」

新内 「そんなに捨てているんですね・・・。ちょっと意識したことがなかったので意識したいなと改めて思いました。でも、なぜこのようなことが起こってしまっているのですか」

井出 「家庭・消費者と企業の2つに分けると、家庭の場合は買いすぎること。あとは品質じゃなく、おいしさの目安である賞味期限を過ぎたら速攻で捨てていたりすることが要因になっています」

新内 「私、納豆とかだったら1週間くらい期限を過ぎていても食べてしまいます・・・」

井出 「でも、気にする人はそれで捨ててしまうことがすごく多いんです。また、企業の場合だと、いろいろなルールがあるんです。先ほどおっしゃったようにコンビニだと、賞味期限、消費期限はまだ先なのに、レジを通らないとかあるじゃないですか。3分の1ルールというのがあって、お弁当だったら消費期限の2、3時間手前、少なくとも1~3時間手前で販売期限、売る期限が過ぎてしまうんです。そうするとレジを通らない。コンビニの本部に理由を聞くと、お客さんが家まで持って帰る時間を見ていると言うんです。『ここに1個しか残っていないカツ丼が欲しいんです』と言っても売れないんですよね、お店は。そういうルールがいっぱいあるんです。あと影響が大きいなと思っているのが、欠品をしてはいけないという考え方。もともと私も食品メーカーにいたのですが、コンビニとかスーパーに100個納品しますよと言っていたんだけど、こっちでいっぱい売れたとか、つくるのが間に合わないとなって、100個納品できませんよとなると、その分、売り上げが落ちてしまう。そこに対してクレームを言う人もいますし、他の店に逃げられてしまうということもある。だから、お店は絶対に欠品をしてはいけないと言われると、メーカーとしてもつくりすぎざるを得ないんですよね」

新内 「でも、無駄なもの、廃棄されるものをつくったら、メーカーや店も損になるんじゃないんですか」

井出 「そうなんです。だから、賞味期限が長いものはメーカーに返品として戻ってくる。そうなると、メーカーがコストをかけて捨てなければいけなくなります」

新内 「すごく駄目なサイクルというか、良くない循環だと思います。恵方巻とかクリスマスケーキとか、季節のイベントごとに食品も、よくニュースとかで扱われますが、こうした状況は解消できないのでしょうか」

井出 「それに関しては、2019年から大学生と一緒に閉店間際の売れ残りがどれくらいあるか数えていて、2019年にはあるデパ地下で閉店5分前に恵方巻が272本残っていたという例がありました」

新内 「その恵方巻は、どうなったんですか」

井出 「それは、もう廃棄です。その後にコロナ禍になって少し減ってはきましたが、今年の節分にも、夜の10時くらいにコンビニに行ったら裏からいっぱい持ってきて棚に詰めている光景を見ました。今から並べても売れないよって思うじゃないですか。公正取引委員会による調査で、コンビニは1店舗1年間で468万円分も捨てているという結果が出ています」

新内 「それは本当にもったいない。逆に、頑張っているところとかはないんですか」

井出 「頑張っているところもあります。コンビニでも売り切るようにやっているところもあるし、スーパーでも、個人商店でも、努力をしているところはあるんです。でも、そうじゃないところがある。コンビニって日本全体で5万5000店舗以上あるので、合計すると本当にもったいないことになっていますよね。やっぱり消費者が気付かないといけないなと思うのは、企業って赤字だとつぶれてしまう。ということは、誰かがその捨てるコストを払っているんです。じゃあ、誰かと言ったらもちろん企業も払っているのだけど、そのお金がどこから来るんだと言ったら、お客さんじゃないですか」

新内 「つまり、商品の値上げにつながるということですよね」

井出 「そうです。食料品価格に転嫁される。だから、本当は捨てないところこそ応援して、そういうところで買うということが、消費者のできることかなと思います」

SDGsの根底「環境問題」にもつながる食品ロス ~影響力は第3位

新内 「この食品ロスがどういう問題につながるのか、皆さんに分かりやすくお伝えいただいても良いですか」

井出 「3つの軸があるんです。一つは経済的なもの。コンビニで468万円だとか、世界中だと食品ロスが2.6兆ドル(約330兆円※収録時の為替レートによる換算額)あるといわれています。そうした、お金の問題がまずあります。2番目には環境問題。日本の場合は食べ物を燃やしているのですが、焼却処分をすると二酸化炭素が出ます。それが温暖化、気候変動につながる。他の国だと埋め立てているところもあって、埋め立てると今度は二酸化炭素より25倍以上地球の温暖化を進めると言われるメタンガスが出る。食品ロスが、気候変動や毎年のように起こる自然災害の原因になっているということです。3つ目は社会的な問題。世界にも、日本にも食べられない人がたくさんいる中で、捨てられているといわれる330兆円のお金があれば、雇用を創出したり、学校を建てたり、病院を建てたりできる。家族で食べられない人がいたら分けるじゃないですか。それが自然だと思うのですが、そういう人が何億人もいるのに、その一方で食品が捨てられている。この状態は、心情的にも、倫理的にも、どうなのかなと思います」

SDGsの概念を示す構造モデルとして「SDGsウエディングケーキ」というものがあり、全ての目標を根底、最下層には「生物圏」の問題があるとされている。SDGsを実現するに当たって、土台となるのが自然環境であり、自然あってこそ社会が成り立ち、経済を回すことができるというのが、SDGsの概念の根底にある。食品ロスは、そうした環境問題にも直結する重要な問題であるということは、2021年のCOP26(第26回気候変動枠組条約締約国会議)でも報告されている。

同会議では、世界の専門家 200 人による、地球温暖化の進行を「逆転」させる 100 の方法「プロジェクト・ドローダウン」が発表され、「食品ロス削減」が、その3位に入った。これは、米環境研究家ポール・ホーケン氏を中心に具体的な解決策として 100 の方法を提案し、ランク付けしたもので、英国の環境団体も「企業は、食品ロス削減に 1 ドル投資すれば、さまざまな面で14 ドルのリターン(利益)が得られる」というコメントを出している。

井出 「食品ロス削減は、やっぱりすごい影響があると思うんです。今、進んでいる地球温暖化を逆戻しすることは、実際にはすごく難しいことですが、そのためにどんな方法を取ればいいのかということで、200人近くの専門家が具体的に1位から100位までランク付けをして、その3位に食品ロス削減が入っている。意外と食べ物の問題って軽く見られてしまう傾向にあるのですが、めちゃくちゃ上位に入っているんです」

新内 「食べることって、生活の中では重要なことですよね」

井出 「そうなんです。誰でも生きている以上、食べる。だけど、COP26という去年の環境の会議でメインの議題に上がったのは電気自動車や飛行機でした。『ドローダウン』で電気自動車は何位だったかというと26位なんです。飛行機の燃費を上げるというのが43位。食品ロスのほうが全然上位にあるということを、私もいろいろなところで書いたり、言ったりしているんです。これは、ぜひ広めてほしいところです」

新内 「日常に紛れているだけに、一人一人がやればすぐに削減できそうな気がします」

井出 「そうですね。そこは知ってほしいなと思いますね」

新内 「100個のうちトップ3に入っているというのは、なかなかの問題ですよね」

井出 「しかも1位は冷蔵庫とかエアコンとかに使われる冷媒。消費者が何かするといってもなかなか難しい問題です。2番目に来るのが風力発電。これも、一消費者としてできることは限られていますよね」。

新内 「身近ではない・・・」

井出 「その次の3位が食品ロス削減ということは、本当に世界中の誰もが今この瞬間から関われるわけです」

食品ロス解決の糸口は「食品は命」の考え方

また、食品ロス削減の問題を語る上で避けて通れないのが「フードマイレージ」の概念だ。食料の輸送量に輸送距離を掛け合わせた指標で、英国ではこのフードマイルを意識し、なるべく地域内で生産された食料を消費することにより 環境負荷を低減させていこうという市民運動も起こっている。

井出 「重い食べ物を遠くまで運べば、それだけフードマイレージが大きくなる。日本は料自給率が37%なので、60%以上をよそから運んでいます。ということは、フードマイレージも他の国より2倍も3倍も大きいということになる。一方で、570万トンの食品を捨てているんです」

新内 「すごく不思議に思うのが、お肉とか見ていても、国産より海外のものが安かったりするじゃないですか。運搬費とかもあるのに何でだろうと思うんです」

井出 「それは、例えばアメリカだったら国が負担しているんです。そうした仕組みのもとで、ずっと何十年も前から余剰の農産物を他の国に売っている。日本の学校給食でも、自給率が90%以上ある米を食べた方が食料自給率は上がるのに、海外の小麦を使ったパンを食べているという現状があります」

新内 「私の地域は1週間で、お米が2日間、パンが2日間、麺が1日と決まっていました。私はご飯が好きだったんで、何でなんだろうと思っていました・・・」

井出 「しかも、日本で売られている97%以上のパンが海外産の小麦を使ったものなんです。日本で売られているパンのうちの3%しか国産小麦を使っていない。ロシアによるウクライナ侵攻の問題で小麦が値上がりしてきていますが、今年の10月くらいから本格的に影響が出てくると専門家の方々が言っているように、まだまだ値上げされる可能性がありまし」

自分の国にあるもので賄わず、わざわざ海外から材料を輸入して、それを使って食べずに捨てる。そうした悪循環を脱却する上でのヒントが、井出さんが著書「捨てないパン屋の挑戦 しあわせのレシピ」で取り上げた広島市内のパン店「ドリアン」にあるのだという。

井出 「広島の実在のパン屋の話なのですが、そこでは国産小麦を使っているんです。しかも、2015年からパンを一個も捨てていないという店なんです」

新内 「えっ! すごい。ただ、パン屋さんって売り切れのイメージがありますが、そんなに捨てているんですか」

井出 「それが意外と捨てています。コンビニ、スーパー、メーカーでも、パン屋さんでも。『捨てないパン屋の挑戦』で取り上げたパン屋さん、田村陽至さんの店でも、以前はゴミ袋2杯分を毎日捨てていたんです」

新内 「それが今、ゼロになった」

井出 「2015年秋頃からゼロになりました。その理由として、2つの海外での経験があるんです。一つはモンゴルでの羊の解体。モンゴルでは羊を食べるときは血を一滴も残さず、全部食べ尽くす。食べるって命をいただくということなんだと実感した、と田村さんはおっしゃられていました。もう一つはヨーロッパでのパン作りの修業。田村さんが日本にいたときは1日に15時間から20時間働いていて、毎日ゴミ袋2杯分を捨てていた。それが本当にやるせなかったらしいんです。でも、ヨーロッパでは朝にお店に行って、昼にはお疲れさま。しかも、パンは一個も捨てていない。売り切りなんです。日本だと、いろいろな具やクリームが入っていて日持ちしないというのもある。ヨーロッパは素朴なものをつくっているから冷凍しておけば1カ月でも持つ。『これだ』と感じて、帰国してからやり方を変えたんです」

新内 「素敵な取り組みですが、それを実現するのは難しいんじゃないですか」

井出 「そうですね。いろいろな葛藤、紆余曲折があったとのことです。それを『捨てないパン屋の挑戦』で物語風に書いて本にしました」

最後に、新内さんからSDGsの目標年である2030年に向けた「提言」を求められた井出さんは、食品ロス問題の解決に向けた糸口として、ある考え方の重要性を口にした。

井出 「食べ物は命ということですね。何となく工業製品として、無限に出てくるように思ってしまうけれど、実は東日本大震災の時にも棚から食べ物がなくなってしまったように、元は命なんだと分かれば捨てなくなるかなと思います。学校給食で牛乳を飲み残していた子供たちが、牛乳1リットルは牛の血液400リットルくらいから成り立っているということを知ったら、もう飲み残さなくなったという事例があります。“物”だと思っていたものが“命”だと知ったら捨てなくなったんです」

新内 「食品は命ですね」

井出 「命です」

井出さんから食品ロス問題を学んだ新内さんは「私は生活が不規則というのもありますし、結構自炊するタイプなので、基本的に冷凍できる前提でしか食品を買わないんです。買ってきたその日のうちに作り置きレシピでバーっと作って、余ったものを冷凍するみたいな感じでやっているので、あまり食品ロスが家庭で出ていると思っていませんでした。今回、改めてしっかり考えていきたいなと思いました」と、この問題が身近なものであることを再認識した様子。「私のレシピとかを載せたら、みんなやってくれるかな。それくらい環境のことを考えつつ、食品ロスのことを考えていかないといけないなと思った1時間でした」と、メディアなどで発信できる立場として、問題解決に向けた取り組みにも意欲を示した。

【次回放送は7月17日午後7時】

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