“SDGs”と“企業”をもっと近づける!SDGs MAGAGINE

中高年の捨てられないもの第3位「着物」、タンス在庫は約20兆円に。

中高年の捨てられないもの第3位「着物」、タンス在庫は約20兆円に。

#SHOW CASE
  • つくる責任つかう責任

夏のイベントをさらに盛り上げるアイテムと言えば浴衣。浴衣は着物の一種で、昔は家でのくつろぎ着として重宝されていましたが近年レア度が増しているのを知っていますか。なんと、かの有名なテレビ東京「なんでも鑑定団」では1着200万円の高値が付くことも。

すでに仕立てられた新品のプレタ浴衣は量産されていますが、昔ながらの浴衣は反物生地から各家庭で仕立てられています。この反物生地は、各地方独自の伝統的な技法でつくられたもの。浴衣をはじめとする着物は日本が誇る伝統的工芸品の一つなのです。

「きものと宝飾社」の調査によると、2021年の着物市場規模は2,446億円で、ピーク時と比べ約7分の1にまで縮小しています。また、定期誌「毎日が発見」の調査では、「中高年が捨てたいけど捨てられないものランキング」3位が「着物」という結果に。着用年数の長い着物はとても希少価値が高く、お宝価格で取引されることもあるようです。そんなレアモノになった着物をサステナブルに活用する用途も増えています。

持続可能な消費を実現することができる伝統的工芸品

一般社団法人日本工芸産地協会の発表によると、伝統的工芸品の生産額は、1990年の5080億円を記録した以降は減少が続き、2015年には生産数が1020億円にまで落ち込みました。なんと、最盛期であった1980~1990年の生産額から1/5の水準にまで落ち込んでいると報告されています。

趨勢の背景には、流通構造や消費・商業環境の変化に対応ができなかったことなどが指摘されています。そうしたなか、問屋を介さずに消費者へ販売する取り組みや下請けからメーカーへの転換に踏み切ったり、効率的な生産体制の立て直し、消費者の多様化するニーズに対する新しい提案、インテリアなどの異業種展開など、伝統的工芸品は生き残りをかけて新しい取り組みを展開しています。

このように衰退傾向にある伝統的工芸品ですが、天然の素材や地域の資源を使いながら、職人さんが一つ一つ丁寧に作るため、一度購入すると長く使い続けることができるといった持続可能な消費を実現することができる、サステナブルな商品です。

また矢野経済研究所「きもの産業白書(現・きもの産業年鑑)」によると、家庭で眠っているとされる着物のタンス在庫は約20兆円(取得価格ベース)もあるといわれ、タンス在庫を流通させることで、今後さらに着物のリサイクル市場は大きくなることが推測されます。着物だけではなく、日本の伝統的工芸品をいかに長く愛用できるか、持続可能性がカギになっていきます。

ファッション業界でもサステナブルといわれる着物、なぜ?

着物はファッション業界でも、サステナブルな衣類として注目されています。ファッション業界は、原材料の調達、生地・衣類の製造、輸送から廃棄までの過程、さらにライフサイクルの短さなどから、環境への負荷がとても大きい産業であると指摘されています。そのため、環境負荷を考慮したサステナブルなファッションへの取り組みが喫緊の課題となっています。

このファッション業界の問題を背景に、環境省からは、サステナブルなファッションへの取り組みとして以下の5つの基準が提案されています。
・今持っている服を長く着よう
・再利用でファッションを楽しむ
・先のことを考えて買おう
・作られ方をしっかり見よう
・服を資源として再利用しよう

着物は、腰の部分で長さを調節することができるので、体型を問わず着ることができます。また、寸法が合わなくなったら、糸を解いて仕立て直すこともできます。目立つ汚れが付着してしまったら、生地を別の色に染め直すこともできますし、なにより保存状態が良ければ、何世代にも渡って着ることができます。
環境省が提唱している上記の5つの基準を網羅した着物は、ファッション業界においても、まさにサステナブルな衣類だといえるのではないでしょうか。

着物の糸を解いてリユース!活用幅がすごいことを知っていますか?

着物は何世代にも渡って着ることができるサステナブルな衣類として注目されていますが、それ以外にも、着物の糸を解いて、リユースして再生させる活用幅にも注目されています。

例えば、着なくなった着物は、ワンピースやバッグ、小物入れ、インテリア雑貨にスマホケースなど、アイデア次第でさまざまなものにリメイクすることができます。

世界の流れは、「大量生産・大量消費・大量廃棄」から、「適量生産・適量購入・循環利用」という、廃棄される衣類を少なくする循環型への取り組みが始まっています。循環型モデルを実現するためには、生産工程で廃棄される繊維を少なくすること、長く着てもらえるための技術開発、リサイクルを想定した素材やデザインなどといった取り組みが要求されますが、さまざまなものにリメイクすることができる着物は、まさにこの循環型モデルにも当てはまります。

着物は、環境にもやさしい伝統的工芸品であること、生産工程で端切れがほとんどでないこと、何世代にも渡って着ることができること、リサイクル、リユースも可能と、あらゆる面において、持続可能な衣類として位置づけされています。

いかがでしたでしょうか。この夏、浴衣を着るときには豆知識になりましたか? これから着物を先長く楽しめるように、日本古来の文化を大切に継承していきたいですね。

カテゴリーの新着記事

新着記事

Page Top