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誹謗中傷対策の強化へ。ヤフコメ投稿の電話番号登録義務化やプロバイダー法改正で開示請求の簡易化。

誹謗中傷対策の強化へ。ヤフコメ投稿の電話番号登録義務化やプロバイダー法改正で開示請求の簡易化。

#TREND

11月中旬以降、「Yahoo!ニュース」のコメント投稿に携帯電話番号の登録が必要になることはご存じでしょうか?通称、ヤフコメと言われる、当該コメント欄は不適切な投稿が多い傾向にあると知られており、今回の電話番号登録義務化は誹謗中傷などを防ぐ狙いがあります。
悲しいことに、ヤフコメに限らず、SNSなどオンライン上での誹謗中傷は絶えません。「ひどいな」と第三者として見ている人が多いかもしれませんが、何が誹謗中傷に当たるのか、はっきりとは分かっていない人もいるのではないでしょうか?3月に公表された弁護士ドットコムの調査によると、誹謗中傷投稿の動機の約半数が「正当な批判・論評だと思った」とある通り、一定数の人が誹謗中傷だと思わずに投稿しているのが現実です。また、投稿だけではなく他人の投稿を拡散する「リツイート」や「いいね」についても「名誉毀損に当たる」という判例が出されたことも記憶に新しいのではないでしょうか。
この誹謗中傷に関して、悪質な投稿を受けた個人が、誹謗中傷を行った発信者の情報開示請求を行い、投稿主の特定を行った上で、訴えを起こすケースもよく見られるようになりました。実はこの開示請求に関わるプロバイダー責任制限法が10月1日に改正され、これまで以上に開示請求がしやすく、開示範囲が広がる形へと変わっています。今回は、このプロバイダー責任制限法の改正内容と、何が誹謗中傷に当たるのかを見ていきたいと思います。

改正プロバイダー責任制限法の内容

誹謗中傷を受けた人をより救済しやすくするべく、改正されたのがプロバイダー責任制限法です。旧プロバイダー責任制限法とは、2001年に執行された法律。インターネットの普及によって、90年代後半からオンラインで匿名による誹謗中傷が絶えないことが社会問題となり、この法律によって情報発信者の情報開示請求ができるようになりました。しかしSNSが誕生し、ますますオンライン上の治安は深刻な状況に…。旧プロバイダー責任制限法の問題点が指摘され、2020年に改正されました。では、今回の改正のポイントを押さえていきましょう。

1回の裁判で情報開示できるように

誹謗中傷の被害者が加害者に損害賠償請求するには、投稿した人を特定する必要があります。これまでの法律では投稿者の情報を開示するには2回の裁判が必要で、さらに裁判をして損害賠償請求をしなければなりませんでした。今回の法改正によって、情報開示は1回の裁判手続きで求められるように。裁判にかかる時間と費用を抑えらえるようになっただけでなく、情報開示までのあいだにログを消去されたり、IPアドレスの保存期間が過ぎたりして投稿者の特定が難しくなるリスクを回避しやすくなりました。

情報開示できる範囲が広がる

SNSの中にはログイン型サービスという、投稿時のIPアドレスやタイムスタンプのログを記録しないものがあります。旧プロバイダー責任制限法では、ログイン時の情報開示を開示できるかどうかは個別の事情によって左右されていました。今回の改正によって、ログイン時の情報も開示対象となり、投稿者の特定がよりしやすくなると期待されています。しかし個人情報保護の観点から、情報開示するには要件を満たしていなければなりません。その要件とは、情報請求者の権利が侵害されたことが明らかであること、情報開示を受けるべき正当な理由があることなどがあります。
「匿名だからバレないだろう」と安易に投稿をしている人に、ハッとさせる法改正ではないでしょうか。

著名人も訴える。誹謗中傷被害

SNSでの誹謗中傷による悲しい事件といえば、「テラスハウス」(フジテレビ)出演で知られる女子プロレスラーの木村花さんが亡くなったことが記憶に新しいのではないでしょうか。多くの人に、オンライン上での誹謗中傷が犯罪であることを知らしめた出来事でしたが、未だに匿名による誹謗中傷のコメントが後を絶ちません。
直近では、バスケットボール女子日本代表のオコエ桃仁花選手が、SNSでの人種差別被害を告白しています。ナイジェリア出身の父と日本人の母をもつオコエ選手。SNSでの誹謗中傷について「もう心が麻痺するくらい、慣れたよ」と、Twitterに投稿。「黒人の癖にまじできもいね」など、信じられないメッセージのスクリーンショットとともにツイートされました。
オコエ選手はそのあと、「お母さんとお父さんが出会い、今私はここにいる。誰に何を言われようとも、どんな肌の色をしていても、私は愛される価値がある。目の前のあなたも、横のあなたも、誰かの大切な人。言葉を大切に。心を大切に。皆様からの温かいメッセージに、日本人であることに誇りをかんじます。ありがとう」と綴っています。
繰り返されるSNSでの誹謗中傷。とくに著名人に対しては、SNSで“アンチコメント”が多く見られます。画面の向こう側にいる遠い存在であるため、一人の人間である相手をひどく傷つけることを想像できなくなっていないでしょうか。友人や家族には決して向けない言葉をコメントしていないでしょうか。

考えよう。何が誹謗中傷にあたるのか

SNSでは誹謗中傷も散見されますが、攻撃的な投稿の中には議論のつもりである場合もあるかもしれません。具体的に、どのようなコメントやメッセージ、投稿が誹謗中傷にあたるのでしょうか。
誹謗中傷は、批判とは全くことなります。批判は事実に基づき評価・判定を行うものであり、相手に対する侮辱や人格攻撃などは含まれません。
もちろん、一般の人への同様のコメントやメッセージも誹謗中傷です。自分では議論やアドバイスのつもり、ちょっとイライラしていただけ…であっても、事実に基づかないことで評価・判定し、相手を侮辱したり攻撃したりすることは誹謗中傷にあたり、名誉棄損罪、侮辱罪などに問われることもあります。
SNSで発信する前に一度立ち止まって「相手を傷つけないか」「誹謗中傷にあたらないか」、よく考えてから投稿する癖をつけたいものです。
改正プロバイダー責任制限法によって、より被害者が加害者を特定しやすく、損害賠償請求までステップが短くなりました。事件として取り上げられていなくても、あなたのこれまでの発信が、誹謗中傷に値することもあるかもしれません。“アンチコメント”などと呼ぶと非常に軽く感じられますが、誹謗中傷であり犯罪になる場合もあります。この機会に、SNSの使い方を見直してみてくださいね。

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