70年後、食卓から昆布が消える?地球温暖化を救う昆布の知られざるチカラとは
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日本各地の観光名所が賑わうようになり、活気を取り戻しつつある日本。コロナの規制が緩和され、外国人観光客もよく見かけるようになりました。東京の渋谷や新宿を始め、大阪、福岡など日本の文化を、地域によって違う楽しみ方ができるのは、日本のいいところでもあります。
そして、観光の楽しみのひとつでもあるグルメ。特に外国人からすると、「日本食」は日本でしか本格的なものを味わえないからこそ、楽しみにしている方も多いと思います。
その日本食は、2013年に「無形文化遺産」に登録されました。フランスの美食術や地中海料理などに次いで「食」の無形文化遺産として5番目に登録された、世界屈指の文化です。ただ美味しいからというわけではなく、世代を超えて受け継がれてきた食文化自体が評価されました。
その日本食が今、危機にさらされています。
日本食には欠かせない、出汁に使われる「昆布」の生産量が減少しているのです。生産量は30年前から3割減少しており、昆布漁業者は10年で2割減っています。
昆布が70年後に消滅?
昆布の産地は北海道の全域で、生産量の9割が北海道産です。海域によって獲れる昆布の味も違い、食べ方も様々。そんな昆布が、2090年代までに消滅してしまうという研究結果が北海道大学より発表されました。
原因のひとつは地球温暖化です。1970年以降、北太平洋の水温が上昇し続けていることが、昆布の減少に繋がっているとされています。
昔は天然ものが2.7万トン、養殖で1.1万トンと約3万トンが漁獲されていましたが、2022年には天然ものが1.2万トン、2023年は1.1万トンと徐々に減少し続けているのです。
そんな中、昆布を守るプロジェクトが、日本の数々の企業で進行しています。医療品を取り扱うシオノギヘルスケア株式会社は、北海道の函館市と産官で連携をして「昆布の森再生プロジェクト」を2021年に開始しました。
「昆布の森再生プロジェクト」とは、函館近海で獲れるガゴメ昆布を品種改良し、育てる仕組みと利用の向上を目的とした取り組みです。
ガゴメ昆布は凹凸のある形状で、とても粘り気があります。その粘り気の中に健康成分が多く含まれていることが分かっており、浅漬けに和えたり、他のネバネバ食品と合わせたりするレシピが人気です。
そのガゴメ昆布の養殖の研究と普及の推進を行うとともに、成分を抽出した後の昆布の残渣を使った商品の開発も進んでおり、SDGsの観点からも注目度が高まっています。
昆布が地球を救う?!海藻の力はすごい
減少し続けている昆布ですが、実は昆布などの海藻類は地球温暖化を緩和させる力を持っています。
海面下には、沿岸域に昆布以外にも様々な海藻が生えている、まるで海の森のような場所があります。そこを「藻場」と呼び、海の生態系や海水の浄化の役割を担っています。
藻場は、海の生物の産卵や生まれたばかりの魚を生育する場として活躍するほか、水中の有機物を分解して二酸化炭素などを吸収し、水中に酸素を供給しています。二酸化炭素が減れば地球温暖化の進行を防ぐことも可能です。
しかし、地球温暖化や埋め立て、化学物質の流入などが原因で、藻場が減少しています。
この現状を変えられれば、地球温暖化を防止できるかもしれません。
昆布を守ることで地球を守る
島国である日本は、海の状態が著しく日常生活に影響し、わたしたちは日々豊かな海の恩恵を受けて暮らしています。海の恵み、昆布は、私たちの食生活にかかせない存在であり、地球温暖化からわたしたちを救ってくれる存在です。
昆布、そして藻場を守るためにわたしたちができることは、地球温暖化対策を心がけること。
電気をこまめに消したり、エコバッグやマイボトルを持ったり、小さなことを多くの人たちで気を付けることが地球温暖化防止につながります。
食生活に欠かせない昆布を未来に受け継ぐためにも、日常からエコに目を向けてみてはいかがでしょうか。