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経済アナリスト・森永卓郎さんに学ぶ目標8「働きがいも 経済成長も」~前編 重要なのは「社会的意義」よりも「自分が楽しいか」


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8 働きがいも経済成長も
経済アナリスト・森永卓郎さんに学ぶ目標8「働きがいも 経済成長も」~前編 重要なのは「社会的意義」よりも「自分が楽しいか」

ニッポン放送で毎週日曜日午後2時10分からオンエア中のラジオ番組『SDGs MAGAZINE』。パーソナリティを務める新内眞衣さんとともにSDGsを学ぶ同番組4月30日の放送では、経済アナリストの森永卓郎さんをゲストに招き、目標8「働きがいも 経済成長も」につながる日本の現状について、独自の視点や語り口で分かりやすく解説してもらった。

オープニングの雰囲気が一変

新内さんがパーソナリティを務める昨春から、一貫してしっとりとした雰囲気で幕を開けていた同番組だが、この日からBGMが一転。明るく軽やかなムードのオープニングに。

新内 「前回の収録の時に『この番組は“SDGsを一緒に楽しく学んでいく”とキャッチコピーで謳っているのに、何かピアノから入るのは固くない?』というお話になったんです。ちょっとポップにすることで、ふと聞いた人にも『楽しい番組かな、聞いてみようかな』って思っていただけるかなと。そこで交渉したら、快くスタッフさんがすぐ、BGMを替えてくれたんです。ありがとうございます! めちゃめちゃ良いですね。年度も変わったということで、いい感じのBGMを選んでいただき、ありがとうございます!」

“模様替え”した番組と同様、世間も新年度を迎え、フレッシュなスーツ姿の若者も見かける季節。そこで、今回選ばれたテーマは目標8「働きがいも 経済成長も」。新内さんが「難しい経済の話を分かりやすく、楽しく伝えてくれる人の代表格」と紹介し、招いたのがメディアでもおなじみの経済アナリスト、森永卓郎さんだった。

新内 「よろしくお願いします」

森永 「どうも、よろしくお願いします」

【森永卓郎さん プロフィール】
1957年生まれ、東京都出身。東京大学経済学部を卒業したのち、日本専売公社、経済企画庁を経て、91年から三和総合研究所(現:三菱東京UFJリサーチ&コンサルティング)の主席研究員を務める。2006年からは獨協大学教授に就任。専門分野はマクロ経済学、計量経済学、労働経済。メディアにも多数出演しており、鋭いコメントや分かりやすい解説が注目を集め、ニッポン放送では『垣花正 あなたとハッピー』のレギュラーコメンテーターを務める。50年間集めてきたコレクションを展示するB宝館も話題で、ミニカー他、様々なコレクターとしても有名。

新内 「お会いしたことあります・・・よね」

森永 「私は新内さんを見るのは、これで4回目だと思います」

新内 「4回目! 私、『ハッピー』は覚えているんです」

森永 「1回ゲストでいらっしゃいましたよね。あと、ニッポン放送の報道部で働いていらっしゃいましたよね」

新内 「ニッポン放送の7階で働いていたんですけど」

森永 「報道の部屋にいらしたこと、なかったでしたっけ」

新内 「何度かお邪魔させていただいたことはあります」

森永 「その時に『今、報道部にアイドルがいる』と噂が立っていたんです。私、スタジオの隅っこからジーッと見ているというほとんど変質者みたいなことをしていて、それで最初に新内さんを拝見しました、一方的に。その後に『ハッピー』にゲストでいらっしゃった。その時、何にサインしたか覚えていますか」

新内 「何ですか?」

森永 「貝を持っていって、サインしてもらったんです。『何ですか?』と聞かれたので『新内貝です』って言ったら全然ウケなくて、ドン引きされたんです。3回目にお会いしたのはニッポン放送の大きなパーティー。新内さんが歩いていたので『こんにちは~』って友達感覚で挨拶したら、新内さんは私のことを全然認識していなくて、『なんだ、こいつは』という感じでした(笑)」

新内 「(笑)そんなことはないんですけど・・・友達と思っていただけたならすごくうれしいです。ところで、経済アナリストということですが、普段はどのようなお仕事をされているんですか」

森永 「経済アナリストというのは意味のない符号なんですね。三和総合研究所にいたときに、バラエティ番組に出ることになったんですよ。そしたら会社が駄目だと。どうして駄目なんですかと聞いたら、会社の品格が落ちるから会社の名前を使うなと言われて。『じゃあ、使わなければいいんですね』と言ったら『まあ、そうだな』と。テレビ神奈川のバラエティ番組だったんですけど、『そういうことなので、肩書無しで出ます』と言ったら、ディレクターさんに『日本は肩書社会なので、何もない人はテレビに出られないんですよ。僕に一日ください』と言われて、そのディレクターさんが一晩悩んでひねり出してきたのが“経済アナリスト”。当時は誰もいない、意味のない符号だったんですよ」

新内 「今となっては浸透していますけど」

森永 「今は、その肩書で活動している人は100人くらいいるようです。何をしているんだろうと逆に私は思っているんですけどね」

新内 「じゃあ、経済アナリストのパイオニアということですよね」

森永 「そうです。そうです」

大学のゼミは吉本NSC?! 

新内 「大学でも先生をされているんですよね」

そんな森永さんは、獨協大学経済学部で教授も務めており、そのゼミからは多くの上場企業に卒業生を送り出しているという。

森永 「一応、それ(大学の仕事)が本業という建前です。普通の大教室の講義もやっているんですけど、ゼミがメイン。ゼミでは、どんな状況でも頭が真っ白にならない強い鉄の心、心臓に毛が生えている状態に変えるというのをテーマにやっています。吉本のNSC(吉本総合芸能学院=芸人として活躍するためのノウハウなどを学べる養成所)と似たり寄ったりのことをやらせていて、ものすごく批判を浴びたんです。一発ギャグをやらせたり、即興の川柳をやらせたり、学生が一番嫌がるのが物ボケ100分連続ですね」

新内 「ゼミ生をバラエティ番組に出させようとしています?」

森永 「いや、出たこともあるんですよ。とにかく皆さん、最初の1年間はいつ辞めようかと思っていたと言いますね。でも、1年間くらいたつと慣れてく。4年生になると、たとえばゼミ生の任意の2人を選んで30秒ネタ合わせの時間をあげるからというと30秒後には漫才ができる」

新内 「えーっ、そんな(笑)」

森永 「だから1期生の頃はそんなにすごい企業には就職できていないんですけど、みんな鍛えられているからどんどん一流企業に転職していく。この間、1期生と会ったら上場企業ばっかりでしたよ」

新内 「ゼミで鍛え上げられた心で就職を勝ち取っていく」

森永 「面接はめちゃくちゃうまい」

新内 「うまそう(笑)。そこで、今回は目標8の『働きがいも 経済成長も』について、お伺いしていきたいんですけど、まさに働きがいって結構難しいものではないですか」

楽しい仕事ほどお金にならない?!

森永 「『働きがい』と『経済成長』、これ二律背反、トレードオフなんですよ。ざっくり言うと、一般的には『楽しい仕事ほど金にならない』という世の中の大原則があるんです。私、実はいろいろな仕事をしていて、童話作家もやっているんですけど、これが全然出版までいけない。あんまり悔しいから自分の本の巻末を全部童話に変えて、これで誰か気付いてくれるんじゃないかとやっていたんですけど、全然気付いてもらえないんです。神戸新聞の連載の一回分を童話に変えて出したら、連載が打ち切りになるなんてこともありました。うまくいかないんです」

新内 「自分の本当にやりたいことは、うまくいかない」

森永 「そして、お金にならない。ただ、一発当たれば大きい。だって、新内さんだって歌って踊ってお金を稼げていたわけじゃないですか」

新内 「そうですね。お給料はいただいていましたね」

森永 「楽しかったでしょ」

新内 「楽しかったです」

森永 「病みつきになるでしょ」

新内 「そうですね。でも、期限があるから頑張れたというのもありました。すごく楽しかったですけど、期限があるからこそ儚さがあるというところが私はすごく好きで」

森永 「へえ。私なんか65になっても、いまだにやるぞというのがあって、今度6月24日に『あなたとハッピー』の東京国際フォーラムでのイベントがあるんですけど、今まも中野サンプラザだとか、よみうりホールだとかで何回もやってきています。一回ステージに立つと病みつきになりませんか」

新内 「でも、スベッてシンとなるのが無茶苦茶怖いです」

森永 「私はスベり芸なので全然怖くないですよ」

新内 「ゼミに入会しようかなあ・・・モリタクさんの」

森永さんの軽妙なトークに、すっかり打ち解けた様子の新内さん。そこで切り出したのが、コロナ禍における就活事情。大学生たちと普段から接している森永さんに、現在の状況をたずねた。

新内 「私自身も2014年卒の就活をやっていたんですけど、この辺りの変化を感じたりしますか」

森永 「今、就職すること自体はまだ楽だと思います。特にコロナ禍で採用を抑えていた業界が採用をものすごい勢いで復活させているんです」

新内 「求人倍率も割と上がっている」

森永 「この2、3年よりはずっと高くなっていると思います」

新内 「それこそコロナ禍になってからリモートで仕事をすることも増えたじゃないですか。そういう企業に人気が集中したりはしないんですか」

森永 「仕事がリモートでずっと続いていたという新卒生は多かったですけど、今でもリモートが続いている企業は3割くらいですかね」

新内 「そんなものなんですね。私は東京国際フォーラムとかでの説明会に行っていました。スーツを着て。そういうものも、だんだんと戻ってきたという感じですよね」

森永  「就職活動において、選びたい放題まではいかないですけど、選べるようになってきたからこそ、どこに行くかというのは、すごく重要なんですね。企業文化って会社によって結構違うんですよ。すごくまじめで石橋を叩いても渡らないような会社が好きな人と、その正反対の企業が好きな人がいる。私は、会社に行って最初に雑誌の棚を見るんです。雑誌の棚に週刊ダイヤモンドとか東洋経済とか日経ビジネスとか、真面目なビジネス誌が並んでいるところは私には会わない。私はリクルート系の企業って大好きで、週間SPA!だとかの週刊誌がダーッと並んでいるような会社は楽しい」

新内 「(笑)私は、めちゃくちゃ硬い仕事をしようとしていました。インフラ系の仕事をしたかったんです。絶対なくならない仕事だと思ったのと、人々の生活を支えるということに魅力を感じていて、インフラ系の会社ばかり受けていました」

森永 「よく人々の暮らしを支えるとかいいますが、私は犯罪組織だとか一部を除いて、経済社会に必要じゃない会社ってほぼないと思っているんです。だから、社会的な意義よりも、自分が楽しいかどうかというのを私は優先させた方が良いと思いますね。楽しくて、お金になる仕事って 本当に少ないんです」

就職や仕事への向き合い方について、“森永流”の一端が見えてきたところで、今回の放送はタイプアップ。「今回はモリタクさんのゼミについて、たくさんお話を聞けましたが、とことん心を強くするという取り組みは本当に素晴らしいと思いました。だからこそ目標に向かって頑張る人が増えていって、モリタクさんのゼミ生、卒業生はいろいろな仕事をされている。そのきっかけをつくっているって本当にすごいことだと思いますし、学生時代に出会いたかった! 物ボケはできないですけど」と新内さんは、社会に出る“準備”を新しい形で実現している森永さんの指導法に目からうろこが落ちた様子。次回放送の後編では、そうしたことを踏まえ、森永さんに「これからの働き方に」ついて深掘りしてもらった。

(後編に続く)