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化粧品会社が建材製作!?日本ロレアルが取り組むアップサイクルとは。

化粧品会社が建材製作!?日本ロレアルが取り組むアップサイクルとは。

#SHOW CASE
  • つくる責任つかう責任

世界最大の化粧品会社「ロレアルグループ」は、2030年に向けたサステナビリティプログラム“ロレアル・フォー・ザ・フューチャー”を掲げ、地球環境の保護と資源の持続的な利用を目指し、様々な活動を推進しています。
ロレアルグループのパーパス(存在意義)は「世界をつき動かす美の創造」。サステナビリティプログラムにおけるロレアルの “美” とはどのようなカタチなのでしょうか。

循環経済社会の形成に貢献した日本ロレアルの事例とは?

世界150カ国以上で事業を推進するロレアルグループにとって、気候変動による生活の変化や資源の枯渇は“世界のどこかで起きている現象”ではありません。同社では気候変動などの社会問題を、パートナーやサプライヤー、消費者、従業員の誰かが直面している事実として真摯に受け止め、より良い未来の実現に向けた対策を全ステークホルダーと共に取り組むべき重要課題として位置付けています。その一つとして、事業所から出る廃棄物の100%リサイクルとゴミの総量削減を実現するため、先駆的な企業・団体とパートナーシップを結び、業界の枠を超えたサステナビリティプログラムに注力しています。

ロレアルグループの日本法人「日本ロレアル」においても、化粧品業界で初めて美容部員の制服のリサイクルを開始するなど、業界の枠を超えさまざま企業と提携しながら独自の施策を進めています。

《ロレアルグループの取り組み》
・2019年末、工場や流通センターからのCO2排出量を2005年比で78%削減
・2019年、新製品またはリニューアル製品の85%が環境に配慮
・2021年度、店頭什器と新規路面店を100%エコデザイン化
・2025年までにプラスチック製パッケージの100%を詰め替え可能、再利用可能、リサイクル可能、あるいは堆肥化可能なものに切り替え
《日本ロレアルの取り組み》
・テラサイクル社とのパートナーシップによる化粧品空き容器の回収およびリサイクル(業界初)
・チクマ社との連携による約9トンの美容部員の制服のリサイクル。年間約2.2トンのCO2排出削減(業界初)

2022年に日本ロレアルの本社オフィスをリニューアル時には、東京ガス不動産とのパートナーシップのもと、アイシャドウやファンデーション、リップなど約60種類、約4400個の廃棄前のロレアル製品を建材や壁紙、照明などにアップサイクルしました。このような取り組みにより、日本ロレアルは2022年末時点で、2019年比50%の自社化粧品廃棄削減を達成しています。

リップグロスが再利用された壁紙
アイシャドウが再利用された照明

廃棄される化粧品が建材として蘇り人々の“くらし”を美しく彩る

廃棄予定化粧品のアップサイクル建材を採用する取り組みは、自社オフィスの外にも広がっています。昨年11月から今年1月にかけ、廃棄予定のパウダーファンデーションから作られたタイル建材を活用した2つの学生寮(国分寺と三鷹)が竣工しました。

日本ロレアルと東京ガス不動産の出合いは、2006年、東京ガス不動産所有の「新宿パークタワー」に日本ロレアルが本社を移転したときに始まります。東京ガス不動産が所有する建設中の2つの学生寮に「アップサイクルの建材を使えないだろうか」という話が持ち上がったのは、2023年。すでに着工していることから、現場の工期や扱いやすさからタイルが選ばれ、急ピッチで開発が進められました。

土の微粒子からできているパウダーファンデーションは、タイルとの相性は申し分ありません。廃棄される予定の822個のパウダー部分を約2週間かけて取り出し、鉄板の上で熱して油分を取り除いてから、タイル基材粘土と混ぜ合わせて焼き上げます。こうした工程約2か月を経て、美しいタイルが誕生しました。

学生寮「ラティエラアカデミコ三鷹」の1階にはカフェテリアがあります。日光が降り注ぐ高さ約5メートルの階段の踊り場には、アップサイクルの美しい青いタイルが彩られています。学生が食事に降りてくるたびに、このタイルを目にすることになります。

ラティエラアカデミコ三鷹の階段踊り場に使用されているタイル

約10センチ四方の可愛らしいアップサイクルのタイルは、水をテーマにデザインされています。雨が大地に降りそそぎ、それが川となり、海にそそいで雲となり、そして再び大地に雨となって返ってくるーー。その循環がみごとに表現されたデザインです。

日本ロレアル本社内で使用されているタイル

ラティエラの語源は、「地球」「土」「大地」の意味を持つスペイン語。廃棄されるはずだった化粧品が建物に生まれ変わることで、40年50年と人々のくらしを美しく彩ります。
日本ロレアルの山本也寸志本部長は、「この取り組みがインスピレーションとなり、日本社会の循環経済への移行の一助になれば嬉しい」と話し、東京ガス不動産の相原隆士営業本部長は、「安心・快適・環境との調和を提供するESG型不動産開発のさらなる推進に向けて、日本ロレアルと連携を強めていきたい」と話します。

1社ではかなわなかった課題も、2社3社と集まることで実現するSDGsならでは試みです。タイルはきっと学生たちに、循環型社会を身近に感じるきっかけや、人と人とが協働することで開かれる新たな可能性への気づきを与えてくれることでしょう。

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