【サステイナブル・ツーリズム】持続可能なホテル経営を目指して
この記事に該当する目標
2015年9月の国連サミットで地球上の「誰一人取り残さない」ことを誓った「持続可能な開発のための2030アジェンダ」では2030年までに持続可能でよりよい世界を目指す国際目標として、17のゴール・169のターゲットが掲げられました。そんな中、外務省の地球規模課題総括課が今年の5月に発表した日本における持続可能開発目標の一つに「地球規模課題への取組強化」を示しました。これは気候変動、生物多様性の損失及び汚染への取り組み、グローバル・ヘルスの推進を図ることです。各地域が自然景観などの地域資源を活用して、自立した社会を築きながら、地域の特性に応じて互いに支え合うことで、地域の活力を最大限に引き出すことを目指す考え方です。
これらの概念を取り入れて精力的に活動をしているのが、現在世界65カ国580のホテルやレストランが加盟するルレ・エ・シャトーです。
世界の一流ホテル、旅館やレストランが加盟する非営利会員組織「ルレ・エ・シャトー」では、自然の恩恵のもとにその活動があることを鑑みて、15年近くにわたり、責任ある観光と料理に取り組んでいます。580という数のレストラン、ホテルの79%の施設でペットボトルを廃止、66%が生ゴミを堆肥化し、調達する野菜の30%がオーガニックな旬の地元産を行っています。そのほかにもエネルギーの再利用や文化遺産保護など様々な項目で持続可能な活動を行っています。
ルレ・エ・シャトーのシェフ代表兼副会長 マウロ・コラグレコ氏は持続可能な活動を行うことに「シェフとして、私たちはエネルギーと水の消費を減らし、廃棄物サイクル全体を見直さなければなりません。これは待ったなしの課題です」と語っています。
日本では群馬県の「別邸 仙寿庵」、沖縄県の「ジ・ウザテラス ビーチクラブヴィラズ」 、石川県の「べにや無何有」でも持続可能な活動を行なっています。
別邸 仙寿庵では、全客室源泉掛け流しの露天風呂を備えており、豊かな水・温泉資源を活用した廃熱・未利用熱の活用に取り組んでいます。
豪雪地帯のため1年の半分は暖房を使用することから、温泉の熱を利用した熱交換システムを導入し、館内の暖房は循環水による全館空調の為、循環水、給湯、温泉水加温、融雪などを温泉を利用したエネルギーからまかなうことで、灯油の使用量とコストを削減し、1年間で約68トンのCO2削減に成功しています。そのほかにも全館照明のLED化を推進することで、さらなるエネルギー使用量とCO2削減に努めています。
沖縄県読谷村にある「ジ・ウザテラス ビーチクラブヴィラズ」では、開業時より沖縄の美しい海と生物多様性を守るべく、ビーチクリーン活動や、地元琉球大学の学生らと連携したウミガメの放流イベントなど多岐にわたる取り組みを実施しています。そのほかにもホテルに隣接する自家農園「OUR FARM」で育てた無農薬の野菜やハーブなどを使用するなど地産地消にも取り組み、輸送の手間を省くことでCO2の削減にも貢献しています。2024年6月には世界海洋デーに合わせた生物多様性保護のキャンペーンとして、グリーンリストの食材のみを使用した特別メニュー「ラ・メール」を期間限定で提供しました。
石川県にある「べにや無何有」では、日本のおもてなしを探求し、学び、その未来を考える新たな取り組みとして、日本の「おもてなし」の未来を考える「Mukayu Omotenashi Institute」を立ち上げました。地方の温泉地が、食事や入浴、宿泊だけの場所ではなく、自然と調和した日本の生活様式や文化を体験できる特別な場所であるということを世界に発信すること。そして温泉地文化の価値を向上させ、同時に国内外の若い世代におもてなしに対する新鮮な視点を提供することで、温泉地の次世代継承、温泉地文化の持続に寄与することを目指しています。今年の9月26~28日にはデモンストレーションイベントとして、2泊3日でおもてなしを知っていただく「MUKAYU DAYS」を開催予定。デザイナーや建築家による特別講演をはじめ、加賀宝生能のパフォーマンス、べにや無何有主人によるお茶席など、各分野の専門家とともに日本のおもてなしを探求するプログラムとなっています。
現在、オーバーツーリズムが問題視されている中、サステナブル・ツーリズムの定義でもある「訪問客、産業、環境、受け入れ地域の需要に適合しつつ、現在と未来の環境、社会文化、経済への影響に十分配慮した観光」が今後より重要となります。
観光立国である日本において、サステナブルな取り組みを行うホテルやレストランについて知ることは大切です。知識だけでなく、持続可能な旅を提供する施設を利用するなど、自身の旅行にもサステイナブルを取り入れる意識をするだけでも持続可能な社会の実現に向けて大きな力になるのではないでしょうか。
アイキャッチ画像 ©️Sarah Rau