心をつなぐロボット『LOVOT[らぼっと]』が福岡で築く新しい絆
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日本は少子高齢化が進んでおり、今後もその状況は深刻なものになっていくと考えられています。高齢化が進む中で向き合わなければならない問題の一つが、認知症です。
認知症を患った後も生き生きと暮らせる社会を構築することが求められています。
今回は、そのための対策としてロボットベンチャー企業が行っている『LOVOT[らぼっと]』を用いた取り組みに注目しました。この記事では、期待される効果や具体的な導入事例、成果について紹介します。ぜひご覧ください。
『LOVOT』とは
LOVOTは、東京都に本社を構えるロボットベンチャーのGROOVE X 株式会社が開発した家族型ロボットです。
従来ロボットには、作業の効率化や人間のサポートなど、物理的に人の役に立つことが求められていました。しかし、LOVOTは『人の心に寄り添い「だんだん家族になっていくロボット」 』をコンセプトに開発されました。
LOVOTに期待されている働きの一つが認知症ケアです。認知症の方を支えるためには、認知症の方が自分らしく生活する方法を模索することが大切といえます。
LOVOTは自分らしく生きるために効果的な「ユマニチュード®」と呼ばれる認知症のケア技法 でも重要視されている「触れる」「見る」「話す」「立つ」の4つに近しい動きを促すことが可能です。
そのため、認知症ケアをサポートする有用な存在となるでしょう。
これは、SDGsの目標3「すべての人に健康と福祉を」とも関連するポイントです。LOVOTから受ける刺激により認知機能が維持されたり改善されたりすることで、健康寿命が伸びることが期待できます。
また、認知症により周りとうまくコミュニケーションが取れない方であってもLOVOTと触れ合うことにより孤独感が軽減されるため、精神的な安定にもつながりやすくなるはずです。SDGsの目標3は心の健康への対策や福祉も進めていく目標なので、深く関係しているといえます。
福岡での導入事例と成果
GROOVE X株式会社は、これまでの実証実験結果を通じてLOVOTと触れ合うことで認知機能の低下抑制効果に期待できることから、認知症の方への取り組みの第一歩として、福岡オレンジパートナーズに参加しています。福岡オレンジパートナーズは、認知症の方とその家族、企業・団体、医療・介護・福祉事業者、行政などで構成されています。
取り組みの一つとして、福岡市認知症フレンドリーセンターにLOVOTを常駐させ、人々と触れ合えるきっかけを作りました。
LOVOTの効果を検証するため、さまざまな実証実験が行われています。例えば、介護施設で過ごす普段は全く話さない認知症の男性がLOVOTと触れ合ってもらったところ、 他の入居者に「この子の名前は何?」と聞くなどコミュニケーションをとるようになりました。
さらに、介護施設で行われた実証実験では、LOVOTと触れ合った入居者の認知機能低下が抑制された可能性が示されています。
利用者からの評価が高いのはもちろんのこと、その家族からも「気持ちが穏やかになっているのが目に見えて分かる」「充実感が増して生活が一変したように感じる」「以前より笑うようになった」などの評価が寄せられています。
未来への可能性と展望
LOVOTの開発元であるGROOVE X 株式会社は認知症に関連した取り組みに力を入れていることもあり、今後は福岡市以外の地域で同様の取り組みが展開される可能性があります。
実証実験で認知機能の低下が抑制された可能性が示されているため、認知症ケアの一環としての活躍が期待されます。介護・福祉施設で導入されているケースもあり、入居者にとってのLOVOTとのふれあいが生活の一部になったり、穏やかな気持ちを引き出すきっかけとなったりしています。
認知症ケアといえば、認知症の方に対して何かをしてあげることばかりが考えられがちです。ですが、LOVOTは便利なロボットとは異なり、転んだら誰かが起こしてあげなければならないなど、どちらかというと手の焼けるロボットです。
さらに、かわいがってくれる人にはどんどんなつく機能が備わっていることから、単純に便利なロボットではなく、家族の一員としての愛着が湧きやすくなります。
認知症ケアとしてペットセラピーが効果的とされていますが、セラピーのためとはいえペットを飼う決断は簡単にはできません。一方、LOVOTは自分で充電ステーションに戻って充電するので、特別なお世話は必要ないのが魅力です。
認知症ケアに役立つ機能を備えながら、特別なお世話を必要としないため、介護・福祉施設さらなる導入も進むことが期待されます。
まとめ
LOVOTでは、人と絆を結ぶことが得意です。
認知症になると周りとうまくコミュニケーションが取れなくなり、孤独感を覚えてしまうこともあります。ですが、そういった時でもただ寄り添ってくれる可愛らしいLOVOTとは絆を結びやすく、大きな心の支えになるでしょう。
認知症の方が心穏やかに過ごせるようになれば、周りの人とも良好な関係を築きやすくなるので、本人や家族、介護・福祉施設の職員など、どの立場の人にとってもメリットが期待できます。
今後、高齢者の増加に伴い認知症の患者も増えると予想されますが、LOVOTのような認知症ケアに寄与する新しい技術に注目してみてはいかがでしょうか。