「水」と「空気」のチカラで、「地球の未来を輝かせる」――日本特殊陶業が大阪・関西万博 未来社会ショーケース事業「フューチャーライフ万博・未来の都市」パビリオンに展示

2025年4月から10月にかけて開催されるEXPO2025大阪・関西万博。大阪・此花区の人工島・夢洲で行われ、国内外のパビリオンでは多種多様な展示がなされるほか、数々のイベントや催しが執り行われる予定です。その中のパビリオンのひとつ、未来社会ショーケース事業「フューチャーライフ万博・未来の都市」(以下、「未来の都市」)は、2025年日本国際博覧会協会と12者の企業・団体による共同出展です。そのテーマは「幸せの都市へ」。経済発展と社会課題の解決を両立することを目指した未来の都市の姿を描くパビリオンとなっています。
セラミックス製品の製造や研究開発を手掛けている日本特殊陶業は、「未来の都市」パビリオンに協賛しています。パビリオンでは、『「水」と「空気」のチカラで、「地球の未来を輝かせる」』を展示テーマに、誰にでも必要な時、必要な場所へ持続可能な資源・エネルギーを届けることが可能になる「自律可搬型循環技術」への取り組みについて循環技術を宿した人工生命体「ニテオン」たちとのふれあいの中で学ぶことができる展示を計画しています。どのような展示となるのか、同社の執行役員・北河広視さんにお話を伺いました。
セラミックスを中心とした技術で社会課題に貢献
日本特殊陶業は、1936年にプラグメーカーとして創立、エンジンのスパークプラグの製造・販売を広く手掛けてきました。現在はセラミック素材技術やセラミックスをコアとした多彩な応用技術、グローバルな生産・販売体制を生かし、さまざまな事業活動を展開しています。2023年には、英文社名を「Niterra Co., Ltd.」に変更し「Niterraグループ」へと生まれ変わりました。このグループ名には、持続可能な社会へ貢献し、地球を輝かせる企業になるという想いが込められています。Niterraグループのコアを生かしたビジネス強化と新規事業創出で事業ポートフォリオを適正化し、変化していく社会課題に貢献し続けていくことを目指しています。


「セラミックスはつまり、焼き物。非常に硬く過酷な環境にも耐える耐熱性、耐腐食性があり、金属よりも軽いという特徴や圧力をかけると電気を帯びるという特徴を持つものなどもあり、さまざまな分野に活用できるものとなっています。今後の私たちは、このコア技術を生かしつつ、環境・エネルギーやモビリティ、医療、情報通信などの事業分野での展開を進めていき、内燃機関の事業だけではないポートフォリオへと適正化していこうとしています。Niterraはラテン語で『輝く』の意味を持つ『niteo』と、『地球』を表す『terra』を組み合わせた造語で、地球を輝かせる企業になりたいという想いを込めています」
例えば、環境エネルギー分野ではセラミックスの特殊な性質を使った二酸化炭素(CO2)回収技術や、CO₂から別の物質に変換するセラミック技術などへの転用が検討され、同社のもつ技術を活用してサステナブルな社会の実現へと貢献しています。
日本特殊陶業が描く循環型社会の形とは
万博での展示コンセプトは、「CyclusNiterrium –Niterraの循環型社会実験場–」。水と空気の循環による輝く地球のチカラを紹介します。展示エリアを社会実験場として、何処へでも、誰にでも持続可能な資源・エネルギーを届けることが可能となる「自律可搬型循環技術」などを展示します。「CyclusNiterrium」は、ラテン語の「cyclus(循環)」、当社の英文社名「Niterra」、「ium(場所)」を組み合わせた造語で、循環型社会とはどのようなものか、その一部をお見せしたいと考えています。
「万博が未来社会をデザインしていくテーマで、私たちがNiterraに込めた想いと非常に共感する部分がありました。私たちの技術や事業がどうやって持続可能な社会に貢献して、地球のサステナビリティにつながるのか。そこをしっかりとお伝えできればと思っております」


循環技術にもさまざまなものがありますが、今回私たちが紹介するのは、自然界にある最も身近な物質である「水と空気」の循環技術です。「水と空気」は姿かたちを変えながら、サステナブルな社会に貢献していきます。
展示会場では出発となる水を蓄えたシンボルの水盤から物語がスタートします。そこに私たちの3つの循環技術によって、水は水素となり、水素は空気中のCO2と合わせることでメタンに姿かたちを変え、そしてメタンは電気と水に戻ります。これら一つ一つの資源やエネルギーは、私たちの生活において欠かせないものです。またこれは使い捨てるのではなく、最後は水に戻り、また使用することが可能、まさに循環する社会を描いていきます。そしてその循環技術が「自律可搬型」であることが私たちの提案です。
「装置というと、どこかに設置されていて、その場所に行かないと使えないようなイメージがあるかと思います。私たちは、まるでお掃除ロボットのように資源やエネルギーを必要なところに届けてくれるような未来を描いています。例えば災害があった場合に、被災した場所に資源やエネルギーを届けに来てくれるといいですね」
この技術を展示で伝えていくため、映像とナビゲーターによる演出を用意。
映像と、ダンスなどを含めたナビゲーターのパフォーマンスを融合させて、まるでショーのように水と空気をもとにさまざまな反応が起こっていく様子を紹介していく予定となっています。


会場にはそれぞれの循環技術を宿した人工生命体「ニテオン」も登場。リアル展示のニテオンには空中で”触れる”ことができます。これは無鉛圧電セラミックスを用いた「空中感覚装置」によるもので、超音波技術を応用した空中触覚(触覚)と超音波技術を応用したスピーカー(聴覚)、裸眼3Dディスプレイ(視覚)で構成されています。この技術により、見えているニテオンに素手で触れ、体験者にだけ聞こえる鳴き声を耳にすることができます。
「今回の万博には、リアル会場とバーチャル会場がありますが、ニテオンはそのどちらにも登場します。ニテオンは9体おりまして、それぞれが私たちの循環技術の特徴を持っています。ニテオンが技術の紹介と連動しているような形になっていますので、リアル会場とバーチャル会場の間に立ってもらえたら。映像でお示しする展示だけでは伝わり切らないところを、ニテオンやパフォーマンスでも伝えていきたいですね」
ステークホルダーと協力し循環型社会の到来を加速
水や空気といった身近なものを循環させ、資源やエネルギーを生み出し、さらにそれらは循環させることができる、真にサステナブルな未来。そんな未来を描く展示。
「自然の中にあるものを、姿かたちを変えながら、人の生活の役に立たせる。そしてそれらを循環させ、何度も使用可能とする循環型社会が未来に行くつく姿としてあるんだということを感じ取っていただき、そういう未来に対してワクワクしていただけるとすごく嬉しく思います。そして、そこに自分も携わりたいと思ってもらえたらよりありがたいですね」
同グループでは、循環型社会の実現に向けてさまざまなアプローチを行っており、温室効果ガスで最も多いとされるCO2を回収しエネルギー資源として活用するCCU(Carbon dioxide Capture Utilization)技術の開発などにも取り組んでいます。
「例えば、サーキュラーシティ宣言をされている愛知県蒲郡市の竹本油脂様と連携し、同社のごま油工場から排出されるCO2を回収する実証実験を行いました。回収したCO2はハウスミカン栽培の成長促進ガスとして利用し、ゆくゆくは農家の方にCO2を供給する仕組みをつくっていきたいですね。CO2から他の有価物を創り出すことも調査しています。CO2の吸収だけでなく、循環型社会の中で水素を作り出したり、電気を作り出したりする技術を世の中にたくさん提供していきたいですし、それを活用できる社会が早く訪れるように尽力していきます」
さまざまな技術開発も、ステークホルダーの協力なしには実現できないもの。日本特殊陶業では、スタートアップの方への投資や実証フィールドの提供など新たなパートナーシップも結びながら、循環型社会の到来を加速させていきたいと考えています。
大阪・関西万博 未来社会ショーケース事業「フューチャーライフ万博・未来の都市」詳細はこちら
北河広視さん
日本特殊陶業 執行役員 グローバル戦略本部 サステナビリティ戦略室・コーポレートコミュニケーション室長