ファッションサブスク“アナザーアドレス”が語る『サスティナブルファッションの現在と未来』とは
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「NEW ENERGY TOKYO」(2月14日〜16日開催)にブース出展した大丸松坂屋百貨店が運営するファッションサブスクリプションサービス「アナザーアドレス」は、サステナブルをテーマにした9コマのトークショーを実施しました。初日のプレビューデーには、環境省の「デコ活」推進事業に採択された衣類循環アップサイクルプロジェクト「roop」にフォーカスするトークショーが開催されました。
自己実現としてのファッションを楽しめる世界を目指して
『サステナブルファッションの現在と未来』をテーマにクロストークをしたのは、大丸松坂屋百貨店 アナザーアドレス事業責任者の田端竜也氏と、環境省 地球環境局デコ活応援隊(脱炭素ライフスタイル推進室)の金井塚綾乃氏です。
まず最初に田端氏からは、2021年3月にスタートしたファッションサブスクリプションサービス「アナザーアドレス」の概要が説明されました。


「モノがあふれている今、未来のファッションをどう提供すべきか?と考えてできた事業がアナザーアドレスです。2大パーパスとして『持続可能な循環型ビジネスモデル』と『ファッションエンパワーメント』を掲げています。現在ファッションを楽しむには、空間、時間、お金、知識など多くの制約があるのが現状です。そこでアナザーアドレスでは、無限クローゼット、スマート(タイパ・スペパ・コスパ)、買い物の失敗から解放、エコフレンドリーという、今の時代にあった新しい消費スタイルを提案しています」(田端氏)


アナザーアドレスは、国内外の320を超えるデザイナーブランドの中から自由に選んでレンタルでき、送料込みでクリーニング不要、気に入ったら買い取りもオーケーなことが特徴です。登録会員数は約25万人(2024年11月現在)、利用者層の多くは3大都市圏在住アラフォー世代の「共働きで忙しいワーキングマザー」となっています。
ロゴマークはバタフライエフェクトをイメージ、環境省推進「デコ活」
続いて、金井塚氏から、2022年10月に発足した「デコ活」についての説明がありました。


国は地球温暖化対策計画の家庭部門において、温室効果ガスを2030年度までに2013年比で66%削減することを目標としています。この目標に向けて、国民一人ひとりの脱炭素につながる行動変容を後押しするための国民運動の愛称が「デコ活」です。現在2000以上の企業や自治体などと協力して、官民連携で取り組んでいます。
「ロゴマークにある蝶のマークは、一人一人の日常の取り組みが地球を変える大きなうねりになる『バタフライエフェクト』をイメージしています」(金井塚氏)


「デコ活」に採択された衣類循環アップサイクルプロジェクト「roop」とは?


続いて、その環境省の「デコ活」推進事業の公募によって採択された衣類循環プロジェクト「roop(ループ)」の概要を田端氏が説明しました。
roopは、服の「廃棄を減らす・寿命が伸びる・技術を継承する」をテーマに、百貨店での店頭回収にて、 着なくなった思い入れのある洋服を素材として回収し、服飾学生やデザイナーと連携してアップサイクルブランド「reADdress(リアドレス)」を制作、それをサブスクレンタルに展開することで、自分が寄付した服に再度触れる機会を提供するというものです。
金井塚氏は「roop」について、「もともとあるアナザーアドレスというサブスクサービスの中に入れることによって、アップサイクルを気軽に体験できる場が創られていることに事業としての広がりを感じました」と語っていました。
同社ではすでに2023年12月から染色やパターン再構築(リメイク)などを施して「reADdress(リアドレス)」を始動していますが、いよいよ2025年春から順次レンタル予定とのことです。


このroopの取り組みを盛り上げるために並行して実施していたのがデザインコンテスト「roop Award 2024-2025」です。昨年8〜9月に行われた衣類回収では約2000着を回収し、最終95名による450着超のアップサイクル作品が集まりました。WEB投票による一次審査を経て、プロ、学生、アマチュア計20名が最終審査へと進み、今回のNEW ENERGY TOKYOでは、会場内の至るところで「reADdress」のタグが付いた洋服が展示されました。


アナザーアドレスの環境貢献価値を発表、アップサイクルの環境負荷は25分の1
田端氏は最後に、今回正式に算定したというアナザーアドレスの環境貢献価値を発表しました。一年間アナザーアドレスを利用した場合、一人あたり250kgのCO2削減につながるといいます。これは杉の木18本が吸収する二酸化炭素量と同等レベルです。さらにroopで洋服をアップサイクルで作る場合に排出する二酸化炭素量は、新しく洋服を生産する場合の25分の1で済むこともわかりました。


大切な服が循環し続ける未来にむけて
トークショーの後には、田端氏にファッションについての想いをお伺いしてきました。
ーー今の子どもたちがファッションに対して「サステナブルな気持ち」を持たないとダメなんじゃないかなと思いましたが、田端さんはどのようにお考えですか?
そういう気持ちをぜひ子どもたちにも持ってほしいなと思います。
ファッションって本能的にあると思うんです。僕はもともと専攻が細胞生物学や動物学なんですよ。動物ってグッピーやクジャクって異性を引き付けるために婚姻色で色や模様を変えるじゃないですか。
あれって人間でいえばファッションだと思うんです。3歳くらいの姪っ子とかを見ていると「この服しかイヤ!この服しか着たくない!」って言うんです。きれいに着飾りたいという気持ちを本能的に持っているんですよね。そこをせっかくだから体験させて伸ばしてあげれば、もっと皆ファッションが楽しくなると思います。
そこにアップサイクルをつなげて、「実はこういう布で出来ているんだよ」と教育で入れることって大事だと思いますし。
作っている人がいて、デザイナーがいて、服作りってほどいてパターンひいて切って、縫って、何時間もかけてやっているので、そういうのを見せるべきかなというのはすごく思いますね。
ーートークショーの中で「ファッションは自己実現」と表現されていましたが、この言葉が意味するのは、“自分らしく”ということでしょうか?
一言で表すのは難しいです。自分らしさや自分の人生を変えるきっかけになるなど、自分がやりたいことに繋げる、ということですね。
アナザーアドレスのサービスを開始した頃、トークショーをした時に「あなたのおかげで人生が変わりました」とわざわざ来て言ってくださる人がいたんですね。刺繍が好きでやってはいましたが普通に事務職をしていた人で、アナザーアドレスをやって服を借りたら皆に褒められるようになって、そしたら自信が沸いてきて、結果好きな刺繍をやるためにフリーランスになったそうなんです。
なので「お洋服が自信をくれて、フリーランスになる決断をさせてくれました」という話を聞いて、本当にそういうところがあるんだな、ということを感じました。
あとは、最終日となる明日のトークショーに婚活の伝道師といわれる吉沢さんが来てくださるんですが、「本当に洋服を変えればパートナーとの出会いも変わって、人生も変わる」っていうのがあると思うんですね。
そのような力がお洋服にはあって、それが自己実現。自分がやりたい仕事や、自分がやりたい生活を迎えるためのツールだと思ってほしいです。
ファッションについての思いを熱く語ってくれた田端氏。
ちなみにこの日、着用していたスーツはアップサイクルブランド「reADdress」のものなのだとか。
もう着ないけれどどうしても捨てられないという洋服ってありますよね。
“誰かにつなげてもらえたらーーー”という思いで寄付したものが、新たな命を吹き込まれたアイテムとなって再びアナザーアドレスでレンタルできる、しかも自分だけでなく知らない誰かにも喜んでもらえて、その人の人生が変わる一着になるかもしれない循環=roopって、よく考えたらとっても素敵なことだと思いませんか。
執筆/ フリーライター こだまゆき