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広島県が誇る幻のブランド和牛「比婆牛(ひばぎゅう)」とは


この記事に該当する目標
12 つくる責任つかう責任 15 陸の豊かさも守ろう
広島県が誇る幻のブランド和牛「比婆牛(ひばぎゅう)」とは

松坂牛、神戸牛、米沢牛、近江牛…と日本各地にはブランド牛(銘柄牛)がたくさんありますが、2023年に開催されたG7広島サミットの夕食で提供されたという広島県の「比婆牛(ひばぎゅう)」をご存知でしょうか。
今回は、瀬戸内海と中国山地が育む広島県の豊かな食材のなかから、180年の歴史を持つといわれる幻の高級和牛「比婆牛」にスポットを当ててみます。

めったに県外に出回らない広島和牛「比婆牛」とは

広島サミットで各国首脳の舌をうならせた「比婆牛」とは一体どんなブランド牛なのでしょうか。
優れた和牛の系統群を「蔓牛(つるうし)」と呼び、「竹の谷蔓」「周助蔓」「岩倉蔓」「ト蔵蔓」が日本4大蔓牛といわれているのですが、比婆牛は最古の蔓牛とされる「岩倉蔓」をルーツに持つブランド和牛です。

画像出典:広島県「ひろしまラボ

比婆牛の定義
1.その牛の父、母の父、母の母の父、のいずれかが広島県種雄牛であること
2.庄原市内で生まれ、広島県内で最終最長期間肥育されたこと
3.肉質等級が3等級以上であること
4.市が指定した県内のと畜場でと畜された黒毛和種の去勢牛または未経産牛であること
5.庄原市長が発行した「比婆牛素牛認定書」を有していること

生産頭数が少ないため、県外に出回る前にほとんどが地元で消費されてしまうことから、“幻の和牛”とも言われています。その味わいは、しっかりした赤身の味と旨味がありながらもあっさりした脂が特徴で、とろけるほどの口どけの良さは冷製料理に向いているそうです。

広島県では、G7広島サミット開催をきっかけに、生産者や料理人と協働しながら広島の多彩な美味しさを磨き、その魅力を発信する「おいしい!広島プロジェクト」を推進しています。そのプロジェクトの一環として進められているのが、今回の「比婆牛」をはじめとする広島和牛を、県ならではの食資産としてブランド化していこうという施策です。

その中でも重点的な取り組みとして2024年9月から始動したのが、比婆牛の“商品価値向上”と“流通コストの最適化”という2つの柱を中心に、3つの小プロジェクトを推進する「比婆牛流通強化プロジェクト」です。

流通価格の向上を目指す「究極の比婆牛プロジェクト」

比婆牛流通強化プロジェクトのひとつである「究極の比婆牛プロジェクト」は、腕利きの比婆牛生産者による比婆牛を活用し、販売から繁殖に至るまで、流通価格の向上を目指す取り組みです。

これは、庄原市で生まれ育ち、庄原の飼料をたくさん使用し、熟練の生産者によって丹精込めて生産された個体のみを“究極の比婆牛”と名付けることで、流通価値の向上を目指そうというものです。
そのこだわり訴求にプラスして、広島県の食を代表する料理人の技術を融合させた「究極の比婆牛料理」を推しながら、ブランド価値を高めようとしています。

昨年開催されたプロジェクト発表会では、 広島を代表する老舗フレンチレストラン「ル・トリスケル」のオーナーシェフ 勇崎元浩さんが腕をふるった一品が披露されました。余すことなく牛の全てを使い切るイメージで作られたお料理は、生産者に対する最大限のリスペクトを表現して「感謝」と名づけられました。

加工食品を開発する「比婆牛共創プロジェクト」

もう一つの柱である「比婆牛共創プロジェクト(HIBAGYU Co-Branding Project)」は、さまざまななアイデアを持つ料理人を広く募って、比婆牛の魅力を活かした差別化要素のある加工商品を開発してもらおうという公募型のプロジェクトです。

ヒレやサーロインなどの高級部位を使った加工品を開発する「贈答品開発枠」と、ウデやバラなど高級飲食店ではあまり活用されていない部位を使った加工品を開発する「お土産品開発枠」の2カテゴリーを設け、2024年9月に募集を開始しました。
書類選考と実食審査を経て、2024年11月に採択者を発表、今年3月中旬に完成品のお披露目会を予定しています。見た目や味はもちろん、独創性や食材の活かし方が審査観点となっています。

「贈答品開発枠」のグランプリには、リュニベルオーナーシェフの今井良さんが考案した「広島の幻の黒毛和牛 比婆牛プレミアムローストビーフ」が選ばれました。脂肪分が少なく、赤身の旨味がしっかりと感じられるヒレやモモを使用したローストビーフです。

「お土産品開発枠」のグランプリに選ばれたのは、avenir town MIRAINO-MACHIオーナーシェフ水橋聴さん考案の「比婆牛たっぷりビーフカレー&ビーフシチューセット」で、流通課題部位のスネなどを使った一品です。

また審査員特別賞となる庄原DMO賞には、㈱リファイン ひんな 河野吉彦料理長が開発した「比婆牛ハンバーグ」が選ばれました。こちらもスネやウデなどの流通課題部位を活用しています。なお、今回採択されたアイデアをもとに、贈答品として百貨店やECサイト、道の駅などで販売が予定されています。

日本で古来から受け継がれてきた伝統的製鉄法「たたら製鉄」に欠かせない存在だったという比婆牛。製鉄のための木材運搬によって発達した赤身には、良質なオレイン酸がたくさん含まれる網目状の脂肪「サシ」が細かく入っています。

比婆牛のふるさと庄原市内をはじめ広島県内には、比婆牛を使ったお料理を楽しめる飲食店があるようです。“幻の和牛”比婆牛グルメを楽しむために、広島県を訪れてみてはいかがでしょうか。

アイキャッチ画像 画像出典:広島県「ひろしまラボ


執筆/フリーライター こだまゆき