大阪・関西万博が開幕!「未来を育む」欧州連合(EU)パビリオンが描くサステナブルな世界
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4月13日、遂に2025年⽇本国際博覧会(以下、⼤阪・関⻄万博)が幕を開けました。日本での開催は、名古屋で行われた「愛・地球博」以来、実に20年ぶりとなります。そんな⼤阪・関⻄万博のテーマは、「いのち輝く未来社会のデザイン」。
SDGs達成の目標年である2030年まで残り5年という今年は、実現に向けた取り組みを加速するにあたり、極めて重要な時期とも捉えられるはず。万博のテーマでも未来について触れられていますが、実現するために今何ができるのか?各パビリオンが「SDGs達成への貢献」を目指していく点にも注目したいところです。そこでこの記事では、日本ともつながりが深いEUパビリオンを紹介していきます。
EUと日本の関係とは?
まずは改めて、EUと日本のつながりについてチェックしておきましょう。両者の関係は、1959年に始まりました。それ以降、平和と民主主義の推進、人権の尊重、公正な貿易の促進など、様々な分野で緊密に連携してきたそう。近年では、気候変動対策やデジタルトランスフォーメーションの推進にも取り組んでおり、これらは大阪・関西万博のテーマである「未来社会のデザイン」とも深く結びついていると言えるのではないでしょうか。
60年以上、世界万博に参加しているEU
そんなEUですが、これまで60年以上にわたり世界万博に参加してきたそう。この機会を活用して革新、持続可能性、文化交流への取り組みを展示してきました。1958年のブリュッセルに始まり2025年の大阪まで……各万博は、EUが世界舞台で進歩、協力、そして国際的な関与の独自のビジョンを共有するためのプラットフォームとして機能してきたようです。参加を重ねるにつれて進化しつつ、EUはその都度直面する課題の変化に対応しています。


さて、今回の万博でEUパビリオンが掲げているのは、「未来を育む」というテーマ。来場者は、EUパビリオン内を巡りながら、EUが描く未来のビジョンを体感することができるのだとか。没⼊型のインスタレーションやデジタルアクティビティをはじめ、著名な講演者によるトークや多彩な文化イベントなどを通じて、EUが日本など世界のパートナーと協力して、現在および将来の世代のためにより良い世界を創り出す方策を示します。
文化や価値を超えた対話や交流の場を提供
それではここからは、さらに詳しく⼤阪・関⻄万博におけるEUパビリオンを深堀りしていきます。


今回のEUパビリオンは、「新欧州バウハウス」の3つのコンセプトである「持続可能性」、「美しさ」、「包摂性」にインスピレーションを受けたデザインに仕上がっているとのこと。「新欧州バウハウス」とは、持続可能な社会を目指すための取り組みで、EUが主導する環境や経済、文化に関するプロジェクトを指しています。


例えば外観は、日本の絵馬や折り紙の精密さから着想を得ており、回転する花びらのようなモジュールで構成。素材には、持続可能な竹を採用しているそう。耐久性、軽さ、環境性能に優れた素材は、自然な風の動きに合わせて、花びらの優雅な動きを模倣します。昼間はその軽量な構造が自然光と影を巧みに操り、夜間は動的なLED照明がその鮮やかさを一層引き立てるのだとか。


内観のポイントも押さえていきましょう。こちらは、来館者が展示の植物に触れると、その後ろのバーチャル植物が成長し、持続可能な農業、食の安全と品質および「グリーンアライアンス」に関するEUの取り組みを紹介してくれる「しゃべる」植物。この植物との遊び心のある対話を通じて、EUのプロジェクトについての知識を深めることができます。


「人々に力を与える(Empowering People)」エリアでは、EUのエネルギー、農業、グリーンシティについて学ぶことが可能です。


まだまだ見どころはたっぷり。この「禅庭園」では、インタラクティブなロボットが禅庭園を手入れしている様子が見られるそう。砂の中に模様を描きながら、来場者を⽇本と英語で迎えます。


ヨーロッパの象徴的な場所で拡張現実を使った写真を撮影し、ヨーロッパへの旅行について学ぶことができる「双方向型フォトスポット」。


外観でもインスパイアを受けていた日本の折り紙文化はここにも登場。デジタルの鳩を折り、そのインスタレーションに放つことで、希望と協力を象徴する「デジタル折り紙」が楽しめるのだとか。


様々な展示や体験でEUへの理解を深めつつ、このクイズで知識をアウトプットしてみてください。日本とのパートナーシップについての設問もあるそうなので、EUを身近に感じる経験ができそうです。


なお、外観や内観のみならず、EUパビリオン公式ユニフォームにも持続可能かつ機能性が反映されている模様。このユニフォームは、コンペティションを経て決まったのだとか。EUでファッションを学ぶ学生の応募作品から、選ばれたのはスロヴァキア出身のトマーシュ・マリニャーク氏の作品。同氏は数カ月間かけて、日本を代表するファッションブランド「ANREALAGE」の創設者でデザイナーの森永邦彦氏の指導のもと、改良を重ね、完成へと取り組んだそうです。 このエピソードも、EUと日本の結びつきの強さを感じさせますね。性別や体型、肌の色を問わず誰もが快適に着用できるよう設計されたユニフォームからは、多様性が伝わってきます。
大阪・関西万博開催中に迎える「ヨーロッパ・デー」
たくさんのポイントがある中、今後行われるというイベントも魅力に溢れていました。その一つが、EUの創設記念日に相当する5月9日=「ヨーロッパ・デー」に行われる⾳楽、デジタルアート、ダンスが融合した最先端のパフォーマンスショー。加盟国間の絆の強さや、域外のパートナーとの関係の深化が、端々から感じられそうです。


万博といえば、官民連携・国際連携の象徴的なイベント。各国の共同パビリオンやグローバル企業の協業なども見られ、多国間協力のモデルの例として非常に分かりやすいです。今回ご紹介したEUパビリオンに限らず、大阪・関西万博のいたるところで、SDGs17個目の目標である「パートナーシップで目標を達成しよう」を体現していると言えるでしょう。今回の万博もまだ始まったばかり。ぜひ色々なパビリオンに目を向けて、持続可能性について考えてみてはいかがでしょうか。
執筆/フリーライター 黒川すい