健康な体づくりは未来への投資!SDGs視点で考える、持続可能なウェルビーイングへのアプローチ
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少し汗ばむくらい暑い日も増えてきたこの時期。薄着になる夏に負けて体を引き締めようと、トレーニングや食事管理に意識を向ける方も多いのではないでしょうか。
しかし、「体を引き締める」という言葉の裏には、単なる「見た目の変化」だけでなく、私たち自身の「健康」そして「持続可能な社会の実現」という重要な側面が隠されています。本来の目的は、生涯にわたって活動的な毎日を支える体を作り、ウェルビーイングを高めること。これは、SDGs(持続可能な開発目標)の目標3「すべての人に健康と福祉を」にも深く通じる考え方です。
効率的な体づくりのためには運動だけでなく、栄養バランスの取れた食事、質の良い睡眠といった「生活習慣」全体に目を向けることが不可欠。これらの要素は、運動のパフォーマンスを最大限に引き出すだけでなく、日々の健康維持、そして将来の医療費抑制といった社会的な側面にも貢献します。本記事では、公認スポーツ栄養士・小嶋理恵子さんの知見をもとに、漠然とした目標から脱却し、「いつまでに」「どのくらい」「どう行動するか」といった明確な目標設定の重要性、そして運動と栄養素の密接な関係性をご紹介します。
自分が最終的にどうなりたいのか、理想を明確にし、具体的な理由や目標もしっかりと定める


「体重を5kg減らしたい」「お腹まわりをスッキリさせたい」といった目標は、一見すると具体的に思えるかもしれません。しかし実際には、その目的や理由が曖昧であることも少なくありません。目標を達成する理由が明確でないと、モチベーションを維持するのが難しく、思うような結果が得にくくなります。また、目的によって効果的なアプローチ方法は異なるため、効率よく目標を達成するには、明確で具体的な目標設定が重要です。そこで、小嶋さんをはじめとする専門家が推奨しているのが「SMARTゴール設定」です。これは、ビジネスの場面でも広く活用されている、目標設定のためのフレームワークです。
今回のテーマである「筋肉量を増やして体を引き締めること」と「体重を落として体を絞ること」では、目指すゴールが異なるため、トレーニング方法やアプローチもそれぞれ変わってきます。目的に応じて、トレーニングや食事内容を適切に調整することで、より効果的に目標を達成することができます。自分が最終的にどうなりたいのか、理想の体型を明確にし、具体的な理由や目標をしっかりと定めることが大切です。その後、実現する為にどのようなアプローチが必要かを整理し、トレーナーや専門家と一緒に目標を設定することもおすすめです。
成果をだすための「SMARTゴール設定」
「SMARTゴール設定」とは、目標を具体的かつ達成可能な形で定めるためのフレームワークです。この方法を使うことで、体を絞るための目標をより明確にし、効果的に取り組むことができます。SMARTは、以下の5つの要素から成り立っています。


5つの要素を組み合わせ、理想的な目標を設定するとこのようになります。
「8/10に水着を着るため、残り3ヶ月間でウエストを3cm絞りたい」
→そのために筋トレを毎日10分行う
目標設定が整ったら、ここからは実際にどのように体を引き締めていくかについて考えていきます。健康的に体を引き締めるためには、筋肉量を維持または増加させながら、体脂肪を適切に減らしていくことが理想です。その過程においては、「運動」と「栄養」の両方からのアプローチが欠かせません。
ここでは、引き締まった体づくりにおいて特に重要となる筋力トレーニングと栄養素の2つの観点からご紹介していきます。
体を絞る為には筋トレが有効、筋トレ後のプロテイン摂取もおすすめ


体を引き締めるためには、筋力トレーニングによって筋肉に適切な刺激を与えることが非常に効果的です。筋肉量を増やすことで、体のラインが整い、メリハリのある引き締まった見た目に近づきます。
また、筋肉はエネルギーを多く消費する組織のため、筋肉量が増えることで基礎代謝が向上し、日常生活の中でも脂肪が燃焼しやすい体を作ることができます。
さらに、筋トレによって筋肉が損傷・修復される過程では、トレーニング後もエネルギー消費が続く「アフターバーン効果」が働き、脂肪燃焼を効率的にサポートしてくれます。効率的に見た目を引き締めたい方には、筋トレを中心としたアプローチがおすすめです。
また運動後には、筋肉が微細なダメージを受けることがあります。こうしたダメージの修復には、たんぱく質を効率よく補給することが大切です。運動後のタイミングでプロテインを活用すると、手軽に良質なたんぱく質を摂取でき、筋肉の回復をサポートしてくれます。
体作りに必要なおすすめの栄養素
プロテインは単体で摂取するだけでなく、糖質やビタミンB6と一緒に摂取することもおすすめです。これらの栄養素を一緒に摂取することで、筋肉の合成やエネルギー代謝をより効率的にサポートできます。さらに糖質は、インスリンの分泌が促進する働きをします。インスリンは筋肉へのアミノ酸の取り込みや、たんぱく質の合成をサポートするため、プロテインと糖質を一緒に摂ることは、筋肉の成長や回復に効果的です。糖質は白米やパンなど普段試食として摂取している食材にも多く含まれていますが、摂りすぎると血糖値の急上昇や肥満の原因になることもあるので、バランスよく摂取することが大切です。
また、ビタミンB6はたんぱく質の代謝に深く関与しており、摂取したプロテインを効率的にアミノ酸に分解し、筋肉やその他の組織の合成に利用するために必要不可欠です。水溶性のビタミンなので水に溶けやすく、水に長時間さらしたり、長く茹でたりすると流出してしまいます。 ビタミンB6をできるだけ壊さない調理法として、「蒸す」・「レンジ加熱」などをおすすめします。
プロテイン摂取の有無に関わらず、効率的な体づくりを実現するためには、体が必要とする栄養素を適切に補うことも重要です。特に運動中や運動後に摂取することで筋肉やエネルギー補給をサポートしてくれる栄養素があります。それが運動のエネルギー源となる「炭水化物」、筋肉の材料、トレーニング後の疲労をサポートする「たんぱく質」、糖質をエネルギーに変換するときに欠かせない「ビタミンB1」です。
理想の体型へ近づくためには、こうした栄養素をうまく組み合わせて取り入れることが大切です。
筋肉の成長をサポートするためには「睡眠」も不可欠


睡眠中には、成長ホルモンが分泌されます。成長ホルモンは、筋肉や骨の修復・再生を促進し、トレーニングで受けたダメージを回復させる役割を担っています。特に、眠り始めの深いノンレム睡眠のタイミングでこのホルモンの分泌がピークを迎えるため、質の高い睡眠が筋肉合成の鍵となります。また、睡眠不足が続くと、筋肉を分解するコルチゾールというストレスホルモンが増加し、せっかく積み上げた筋肉量が低下する可能性があります。ハードなトレーニングをする方ほど、睡眠の質と量を意識した生活習慣が、成果を左右する大きなポイントとなります。
体を引き締める為には睡眠量だけでなく、睡眠の質が重要です。
❶寝る2~3時間前までに夕食を済ませる
❷寝る直前のスマホや強い光は避ける
❸朝同じ時間に起きて体内時計を整える
この3つのポイントを意識して、質の高い睡眠をとるようにしましょう。
質の高い睡眠を確保するためには、日常生活における基本的な習慣が重要です。夕食のタイミングについては、消化活動が活発な状態での就寝がノンレム睡眠を妨げるため、就寝の2~3時間前までに食事を済ませることが望ましいです。特に、消化に時間がかかる油っこい食事は避けるのが賢明です。
また、スマートフォンなどから発せられるブルーライトは体内時計を狂わせ、睡眠ホルモンであるメラトニンの分泌を抑制します。そのため、就寝前には強い光を避け、穏やかな照明のもとで心身を落ち着かせることが大切です。
さらに、毎朝一定の時間に起床することも体内リズムを整え、睡眠の質を向上させるためにおすすめです。
質の高い睡眠、バランスの取れた食事、そして適切なトレーニングを組み合わせることで、理想の体を手に入れるための最短ルートが見えてきます。体づくりは一朝一夕に結果が出るものではありませんが、日々の積み重ねが大きな成果を生みます。焦らず、着実に取り組んでいきましょう。


・監修者
plus N代表/公認スポーツ栄養士
小嶋理恵子 (こじま りえこ)氏
約10年以上の病院での臨床経験を経て、2020年1月アスリート栄養サポート事業団体plus Nを創設。
大学スキー部、野球、サッカーなど、幅広い競技の栄養サポートを担当。
子育ての経験よりジュニア期の食事の大切さを伝えるべく、ジュニア競技者育成活動を積極的に実施。
Netflix作品「サンクチュアリ」「極悪女王」の栄養監修、出演する役者への栄養管理、企業向け健康経営コンサル事業も展開。
・日本のこれからの健康と栄養素についての正しい知識づくりをサポートするWEBサイト
『大塚製薬 栄養素カレッジ』
フリーライター Yuki Katagiri