• トップ
  • 記事一覧
  • 深刻な空き家問題を解消する「AlbaLink」       ──持続可能な社会の鍵を握る再生の力
SHOW CASE

深刻な空き家問題を解消する「AlbaLink」       ──持続可能な社会の鍵を握る再生の力


この記事に該当する目標
11 住み続けられるまちづくりを 12 つくる責任つかう責任
深刻な空き家問題を解消する「AlbaLink」       ──持続可能な社会の鍵を握る再生の力

総務省統計局によると、2023年は空き家数が過去最多を記録しました。総住宅数のうち空き家が占めたのは約900万2千戸、つまりこれは7戸に1戸建が空き家という状況になるのだとか。
推移を見てみると、空き家は一貫して増加傾向にあり、1993年から2023年までの30年間で、約2倍にまで増えていることが分かります。さて、そんな深刻化する空き家問題を解消するために立ち上がったのが、今回ご紹介する空き家買取専門の不動産会社である株式会社「AlbaLink」です。

日本の空き家を取り巻く様々な問題

改めて、いま深刻化している空き家問題に向き合っていきましょう。まず、この背景には、複数の要因が挙げられます。例えば、高齢化や人口減少、都市部への一極集中。特に高齢化が進んでいる地方では、親が高齢となり施設に入居した際、子どもが上京等で不在だと空き家として放置されることになってしまいます。それに加えて、新築信仰による中古住宅市場の停滞も一因に。昔から新築信仰が根強い日本では、新築戸建て住宅や新築マンションを購入する割合が高いのが現状。
中古住宅を購入する人が少ない傾向にあるため、現在も毎年80万戸以上の新築住宅が建築されているそう。新築住宅が建設され続けている結果として、空き家が増えているのです。こうした空き家は、所有者にとっては資産ではなく「負債」や「リスク」となることも多々。また、地域社会にとっても景観・安全・防災・治安面での懸念を生んでいます。

空き家を放置する4つのリスク

続いては、具体的に空き家を放置することで生じるリスクにも焦点を当てていきたいと思います。
1つ目は、相続税や固定資産税、都市計画税といった税金に関するリスク。中でも、固定資産税に関して言及すると、誰も住んでいない空き家に対しても、毎年1月1日時点の所有者に対して課税されてしまいます。これを放置して行政の指示や勧告を無視していると、固定資産税が最大6倍になったり、過料が科されたりする可能性も出てくることも。
そして2つ目は、犯罪。人目に付きにくい空き家は、侵入後も物色しやすい上、被害発覚に時間がかかるため、狙われやすいのだとか。そのほか、自然災害を含む様々な要因で発生し得る倒壊・害虫や害獣なんかもリスクとして認識しておくべきでしょう。

“売れない不動産”に、再生の可能性を見出す

ここまで見てきたように多くのリスクを抱える空き家。実際にこの問題に直面している人は、何とかしたいと思っているのではないでしょうか。しかしながら、こうした様々な訳あり物件は、通常の不動産業者の買取が難しいのが実情です。そこで注目したいのが、冒頭でご紹介したAlbaLink。“売れない不動産”に、再生の可能性を見出している企業なんです。

AlbaLinkが展開するのは、再建築不可物件や事故物件など市場流通しづらい“訳あり物件”を積極的に買い取り、リノベーションや再販によって再び市場に送り出す事業。単なる不動産取引にとどまらず、“地域で必要とされる用途”に空き家を転換する点が特徴で、2025年5月時点で13の自治体と連携協定を締結しています。ちなみに上の表をご覧の通り、AlbaLinkへの年間問い合わせ件数は、2020年から2024年の4年間で約14倍に。これからも更なる増加が見込まれ、空き家問題解決の需要が高まっていることが理解できますね。

ここで一つ、2025年4月に千葉県船橋市小野田町でオープンした空き家をリノベーションした⺠泊第1号物件をピックアップ。上の写真が、空き家の状態です。

そこから生まれ変わったのが、こちら。空き家の有効活用と地域経済の活性化を両立すべく、空き家を “使われる不動産”に戻すことで、住まいとしても観光拠点としても地域資源化を図っています。
なお、この民泊事業以外にも、サテライトオフィス、地域住⺠が利用できるイベントスペースに再利用する試みなどが考えられているそう。住まいの持続可能性や、地域経済の活性化に貢献しているのはもちろん、再活用によって新築を抑制し、建築廃材の削減に寄与することは、環境負荷の軽減に繋がっていると言えそうです。

空き家数が1,000万戸を超える予測の2030年……活かすためにできること

現時点でも深刻に捉えられている空き家問題。近い将来である2030年には、空き家が1,000万戸を超えるという予測も。この数字にどのように立ち向かうのかが、問われるところ。
例えば国や自治体は、空き家バンクや税制優遇など、利活用を促進する政策を強化し始めているとのこと。同時に、空き家を住宅に限らず、福祉施設、観光拠点、アートスペースというように、地域資源として捉える発想も広がり始めているようです。空き家の再生=持続可能な都市づくりや雇用創出、地域内経済循環を生み出す起点となる可能性を大きく秘めている。AlbaLinkの例で見たように、空き家の社会的価値を再定義することが、今求められています。

Albalink HP:https://albalink.co.jp/


執筆/フリーライター・黒川すい