女子中高生が都庁技術職の現場を体感──オフィスツアーで広がる未来の選択肢
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Science(科学)・Technology(技術)・Engineering(工学)・Mathematics(数学)──4つの頭文字を取った「STEM(ステム)」分野において、⼤学卒業⽣の⼥性⽐率が低い傾向にある日本。OECD加盟38か国の中でも、この比率は最下位となっています。しかしながら、女子生徒の理数系能力は世界トップレベルを示している事実も忘れてはいけません。この通り、能力と進路選択の間にギャップが存在していることが、いま大きく指摘されています。こうした状況を受け止め、令和4年度から東京都が取り組んでいる施策こそ、「女子中高生向けオフィスツアー」。令和8年度のキックオフイベントでは、オフィスツアーを初めて東京都庁の技術職員の現場で開催したことで大きな注目を集めました。
STEM分野に触れて将来の選択肢を広げる
改めて、「女子中高生向けオフィスツアー」は、文理選択前の女子中高生をターゲットにした取り組みです。理工系分野で活躍する人々との交流、また、実際の職場に触れる体験を通して、将来の選択肢を広げることを目的としています。5年目となる今年度は、夏休み企画として 80以上の企業等でツアーを実施。それに先立ち、令和8年度のキックオフイベントとして、東京都庁の技術系職員の職場等を巡るオフィスツアーが6月8日に行われました。東京都庁の技術系職場でオフィスツアーを開催するのは初めての試みだったそう。参加した女子中高生たちは、交通局の「馬込車両検修場」と下水道局の「有明水再生センター」を訪れ、東京の都市機能を支える仕事を体感。“誰もが自らの生き方を性別にとらわれず選択できる社会”の実現を目指す東京都の取り組みを体感する機会となりました。
持続可能な都市づくりに欠かせない「女性技術者」の存在
さて、本イベントの冒頭には、松本明子副知事が登壇。松本副知事は、理系分野で活躍する女性が依然として少ない日本の現状に触れながら、「実際の現場体験や女性技術者との交流を通じて、将来のヒントを持ち帰ってほしい」と参加者へ温かいメッセージを送りました。持続可能な社会を実現するためには、多様な人材が社会課題の解決に関わることが必要不可欠です。特に気候変動や防災、インフラの老朽化など、これからの都市が直面する課題は複雑化しています。だからこそ、これまで十分に参画できていなかった層の視点や発想が求められているのです。
東京の“当たり前”を支える都庁技術職の裏側を語る


現場見学に入る前に行われたパネルディスカッションでは、土木・建築・機械・電気といった分野で活躍する女性技術職員4名が、参加した生徒たちの質問に答える場面も。仕事のやりがいをはじめ、都庁で働こうと思った理由、中高生時代の勉強や部活等で今役立っていることなどが投げかけられます。


都営交通の駅施設計画を担当する職員は、「完成した施設でお客様が安全・便利に過ごしている姿を見ると、自分の仕事が社会に役立っていると実感できる」と語りました。さらに「皆さんが当たり前と感じるインフラの日常を裏から維持し続けることに大きなやりがいがある」と続けます。また、別の職員は、都庁を選んだ理由について「地下鉄や港湾、大規模開発など幅広い分野に関われることが魅力だった」と説明。東京という巨大都市そのものを支え、つくり上げていくスケールの大きさに惹かれたと振り返りました。そのほか、育児休業や時短勤務、テレワークといった制度面についても紹介が。性別という枠を超え、男女問わず働きやすい環境が整いつつあることが伝えられ、パネルディスカッションは幕を下ろしました。
鉄道の安全運行を支える「馬込車両検修場」
パネルディスカッションを経て、最初に向かった見学先は、都営浅草線や大江戸線の車両点検・整備を担う馬込車両検修場。参加者たちは広大な工場棟を見学しながら、車両の安全運行を支える仕組みについて学びます。


中でも特に印象的だったのは、参加者が実際にレールを持ち上げてみる体験です。レールの重さに驚きの声が上がりつつ、積極的に職員に質問する姿も見られ、参加者の熱量や関心の高さが伺えました。


また、パンタグラフの作動体験では、自らスイッチを操作しながら設備が動く様子を間近で観察。普段利用している鉄道の裏側にある高度な技術や点検作業に触れました。なお、これらの見学の最中には、今年4月に入庁した女性職員の働いている姿を捉えることもできました。話を聞くだけでなく、実際に女性が働く姿が見られたことで、この分野への女性進出の解像度が、より一層上がったように感じられます。「技術職=男性が多い仕事」というイメージが未だ社会的に強い中、女性職員の姿を目にしたことは、参加者にとって大きな発見だったのではないでしょうか。
「有明水再生センター」で学ぶ都市の水循環


続いて訪れた有明水再生センターでは、下水処理の仕組みについて学びました。施設内では、沈殿池や反応槽の役割を模型実験で確認。目に見えない場所で行われている下水処理の工程について理解を深めました。


さらに水質試験室では、女性職員が実際に検査を行う様子を見学。参加者たちは実験器具や分析作業に釘付けに。馬込車両検修場同様、水質試験室で働く女性職員の姿からも、都市のインフラを支える仕事が決して特定の性別に限られたものではないことが伝わってきました。
自身の可能性を見つめ直すきっかけに
イベント終了後に参加者の声を聞くと、「将来のことを考える参考になった」「技術職という仕事を具体的に知ることができた」といった前向きな感想が数多く寄せられました。今回に限らず、これまでも高い満足度を記録しているのが、女子中高生向けオフィスツアーの大きな魅力です。中には、「車両検修のような現場でも女性職員が活躍していることに驚いた」「自分の中にも無意識の思い込みがあったことに気づいた」という気づきに繋がる参加者もいた模様。
実際に働く人と出会い、話を聞くこと。現場を自分の目で見ること。現場の雰囲気に触れること。……これらは、職業への理解だけでなく、自身の可能性を見つめ直す機会にもなります。今回の経験は、参加者たちが将来の選択肢を考える上での大きなヒントになったでしょう。こうした積み重ねこそ、STEM分野におけるジェンダーギャップの解消、そして誰もが自分らしい進路を選択できる社会の実現へと繋がっていくはずです。
執筆/フリーライター・黒川すい





