『ポケモン GO』がAEDを“見える化”──ゲームで広がる救命意識
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スマートフォンの位置情報を活用し、現実世界を歩きながらプレイするゲームアプリ『ポケモン GO』。配信開始直後から世界的な社会現象を巻き起こし、累計ダウンロード数は10億を突破した本アプリが、2026年7月で10周年を迎えます。これまでも“現実世界を歩き、発見し、コミュニティとつながる体験”を数多く提供してきた『ポケモン GO』ですが、現実世界との接点に社会的意義を感じさせる取り組みを新たにスタートしているそう。今回はSDGsの視点から、公益財団法人 日本AED財団との連携施策を深掘りしていきます。
現実世界のAED設置箇所を「ポケストップ」として見える化
改めて今回ご紹介する話題は、『ポケモン GO』と日本AED財団が締結したパートナーシップについて。一見すると、ゲームと医療・救命は結びつきにくいかもしれません。しかしながら、本取り組みからは、エンターテインメントを通じて社会課題の解決を目指す、新しい公共性の形が見えてくるはずです。


その取り組みというのがこちら。画像をご覧の通り、全国のAED設置箇所がゲーム内の「ポケストップ」として展開されます。5月1日から東京都内約1,000カ所でスタートし、7月中旬までに全国約13,000カ所へ拡大が予定です。AEDをより身近な存在として感じられる工夫として、てあてポケモン「パーモット」がデザインされたフォトディスクを表示している点も、ファンの心をくすぐる細やかなポイントでしょう。
「あるのに使われない」AEDが抱える課題


さて、ここで1つ質問です。皆さんは、日本国内のAED設置台数を知っていますか。なんと厚生労働省推計で約67万台にのぼるとされています。駅や学校、商業施設など、私たちの生活圏にも広く設置されているにもかかわらず、実際には「どこにあるのかわからない」「使い方がわからない」という理由から、十分に活用されているとは言い難い現状が浮かび上がります。
なお、日本AED財団によると、心停止の現場でAEDによる電気ショックが実施されている割合は、目撃例のわずか5%にとどまるとのこと。一方で、心肺蘇生とAEDの使用によって、救命率は4倍に向上するとされています。つまり、AEDは「設置されていること」だけでは不十分なのです。大切なのは、市民一人ひとりがその存在を認識し、いざという時に行動できる環境を作ること。そのような意味で、今回の『ポケモン GO』との連携は、まさにその“認知の壁”を崩そうとする試みと言えるのではないでしょうか。
“街を歩くゲーム”だからこそできる社会貢献
『ポケモン GO』のキースポット「ポケストップ」は、公園や地域のランドマークなど、現実世界のあらゆる場所と紐づいているのが特徴です。本取り組みで、AED設置箇所がそのポケストップとして登録されることで、プレイヤーは日常的なゲーム体験の中でAEDの場所を自然に認識するでしょう。
「防災」や「救命教育」……言葉だけ聞くと、なかなか自分ごと化して考えにくいトピックスかと思います。AEDの重要性は理解していても、自分が使う場面を想像できる人は多くないのかもしれません。
しかし、ゲームという身近な入り口を通じて接触頻度を高めることで、「この場所にAEDがある」という記憶が自然に蓄積されていくのが、この取り組みの強みと言えそうですね。近年「ゲーミフィケーション」という考え方が注目を集めていますが、この話題にも通ずる部分があります。
社会課題への参加が、楽しさや日常体験の延長線上にある──ゲームを通じて地域を歩き、人と交流し、現実世界への関心を高めるという特性は、単なるエンターテインメントの枠を超えた価値を持ち始めているのです。
AEDの見える化が私たちの生活を豊かにする
この施策と結びついているSDGsの目標は様々でしょう。例えば、目標3「すべての人に健康と福祉を」は最も分かりやすいところ。AEDの認知向上と救命率向上は、まさに命を守る取り組みそのものと言えます。市民が救命活動に参加できる社会づくりは、地域医療や予防医療の観点からも重要です。
また、目標11「住み続けられるまちづくりを」にも繋がっています。安全・安心な地域社会を実現するためには、単に設備を整えるだけでは意味がありません。住民が地域インフラを理解し活用できる状態こそ必要なのです。AEDを“見える化”する今回の施策は、地域防災やコミュニティ形成の観点でも、大きな実りがあるでしょう。
さらには、株式会社ポケモンと共同で『ポケモン GO』を運営している株式会社ナイアンティック×日本AED財団が連携していることから、目標17「パートナーシップで目標を達成しよう」にも当てはまりますね。ゲーム会社と公益団体……それぞれの強みを持ち寄ることで新しい社会価値を生み出しているこの例は、民間企業・公益団体・市民コミュニティが横断的につながるモデルケースとも言えそうです。
役割が大きく変化しているデジタルゲーム
ここまで見てきたように、かつては娯楽として消費される存在だったゲームが、近年、幅広い社会領域に活用され始めています。特に位置情報ゲームは、「現実世界を歩く」という特徴から、地域創生との親和性がかなり高いです。お台場海浜公園を中心にゲームを楽しむリアルイベント「Pokémon GO Fest :東京」をはじめ、『ポケモン GO』も、これまで街との関係性を数多く築いてきました。今回のAED連携は、その延長線上にある取り組みと言えますが、従来と異なるのは“命を守るインフラ”に踏み込んでいる点でしょう。避難所、防災備蓄、バリアフリー設備、災害時の支援拠点など……地域に必要な情報をゲームやAR技術を通じて可視化する仕組みは、今後さらに広がっていくのかもしれません。
様々な社会課題を解決するにあたり大切なのは、多くの人が自然に参加できること。今回ご紹介した挑戦は、“遊び”が社会参加の入口になり得ることを示すと同時に、今後のインフラの在り方を考えるきっかけになりそうです。
執筆/フリーライター・黒川すい
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