AIアバターが見いだす人の可能性 「タレスカ」が変える採用と育成のかたち
この記事に該当する目標




「困難を乗り越えた経験について、1分程度でお答えください」と画面の向こうから、AIアバターの面接官が問いかけてきます。回答を踏まえて次の質問を深り下げていく様子は、人と人との面接とほとんど変わりません。
第18回 HR EXPOのタレスカブースにて体験したAIアバターとの対話から見えてきたのは、業務の効率化だけではなく、採用と育成の現場が抱える「機会の不平等」という課題へのひとつの答えでした。
採用と育成をつなぐ HRサービス「タレスカ」
株式会社Preferred Networks(PFN)は、2026年6月、AI面接サービス「タレントスカウター」を「タレスカ」へとリブランドするとともに、新たに人材育成を支援する「タレスカAIロープレ」の提供を開始しました。
「タレスカAI面接」は、求職者の適性評価を支援し、従来の選考方法では見えにくかった潜在能力やコミュニケーション能力、問題解決能力を多角的に評価するサービスです。
一方、「タレスカAIロープレ」は、AIアバターを相手にした実践的なロールプレイングを通じて、商談や接客、1on1など対話業務のスキル習得を支援します。採用で培った「人を見極める技術」を、育成にも応用した形だといえます。
HR EXPOのブースにてこれらのサービスについて解説してくれた同社ビジネス開発マネージャーの井上さんは、面接とロープレの違いを「面接は選考に関わるため、受 検者本人に詳細な評価結果を見せることは基本的にありません。
一方のロープレは正反対で、受けた本人が何が良かったか・悪かったかを理解できることこそが目的」だといいます。
同じ技術基盤が、異なる目的へとそれぞれ発展を遂げている点が印象的でした。
「タレスカAI面接」の評価で人材を見つける
面接評価は面接官の主観に左右されやすく、評価の属人化が課題とされてきました。
タレスカAI面接では、評価指標ごとにAIがどう判断したかの理由も開示されるため、評価の根拠がブラックボックス化しない設計になっているといいます。事前に用意した回答を読み上げるような対応をしても、回答内容を踏まえた深掘り質問が続くため、想定通りには進められません。時間の制約もある中で、一人ひとりに同じ基準で対話が重ねられる仕組みが、評価の公平性を支えています。
「思い込みで指標を作ってしまうと、本来関係のない要素で点数が変わってしまう」という井上さん。タレスカAI面接では、評価すべきポイントを慎重に見極められていることがうかがえました。


驚きだったのは、ある企業の導入事例として紹介された数字です。書類選考では見送りとなっていた候補者のうち、タレスカAI面接で高評価だった層が、実際の内定者の5分の1を占めたといいます。背景には、従来は見ていなかった観点を評価できるようになったことや、就活初期で自己PRに慣れていない学生のポテンシャルを発掘できた可能性があるとのこと。
限られた文字数のエントリーシートでは伝えきれない個性を、対話を通じて可視化する。そうした仕組みが、見過ごされてきたかもしれない人材との接点を広げていくのでしょう。
選考の「地理的ハンデ」をなくす
タレスカAI面接の活用が、選考の地理的な課題の解消につながった事例もあります。KDDI株式会社の連結子会社である沖縄セルラー電話株式会社は、離島在住の学生や県外大学に通う学生にとって対面選考が大きな負担になっていたことを課題としていました。
そこで導入されたのが、タレスカAI面接。24時間365日オンラインで受検できる環境を整えることで、地理的なハンデなくすべての学生が挑戦できる仕組みになりました。最終的な合否判断は採用担当者が行うことを前提に、AIはその判断を支援する補助ツールとして活用されています。
この導入では、候補者が「きちんと話を聞いてもらえた」と感じられる点が高く評価されたそうです。AIによる選考が効率化だけでなく、対話の質を高める手段にもなり得ることがうかがえます。


育成にも広がるAIアバター「タレスカAIロープレ」
ブースでは、タレスカAIロープレの接客シミュレーションも体験させていただきました。
お題は、「高級時計店の店員になったつもりで、父の日のプレゼントを探しに来た男性客に接客する」というもの。予算や好みを尋ねながら会話を進めていくと、お客さま役のAIアバターから「薄型の方が好みのようです」と返されました。何を聞けばよいのか分からず、言葉に詰まってしまい、台本のない実践練習の難しさを身をもって実感しました。
こうしたロールプレイングは、すでに住宅販売企業などで本格運用が始まっているそうです。新入社員の対応力向上だけでなく、新製品の説明練習や商談前の最終確認など、経験を積んだ社員の活用も想定されています。


評価レポートには、「回答が事実説明にやや終始しており、他社と比べてどう優れているかという魅力づけが弱い」「共感を得られる伝え方を意識する」といった具体的な指摘とアドバイスも出てきます。
さらに論理的思考力はA評価、関係構築力はB、課題解決力はCと指標ごとに分かれて表示され、関係構築力の項目では「相手がどのような情報を求めているかをていねいに確認する姿勢が見られない」といった具体的なコメントも示されていました。
業種や場面に応じてシナリオや評価軸を変えられる柔軟性が、こうした細やかなフィードバックを支えているようです。
ロープレならではの利点として挙げられたのは、業務指導が「誰が教えるか」によってばらつきが生じやすいという課題への対応です。しかし、AIアバター相手であれば、実際の顧客に対するリスクなく何度でも練習でき、フィードバックの質も一定に保たれます。
井上さんの「人手不足の今、ロープレの相手役をしているマネージャーも、本来はセールスに集中したいはず」という言葉も、現場の負担を軽くする視点として印象に残りました。
採用と育成の現場から不平等をなくす
就活を始めたばかりでうまく自己アピールできない学生のポテンシャル、地理的なハンデ、面接官の主観によって変わる評価、そして指導する相手によって差が出てしまう育成の機会。こうした選考や育成の課題は、これまで仕方のないこととして受け入れられてきました。
タレスカが示すのは、AIアバターとの対話という新しい技術が、構造的な不平等を一つひとつ解消していく可能性です。SDGsの目標10「人や国の不平等をなくそう」、そして目標8「働きがいも経済成長も」は、こうした現場の積み重ねから実現していくのでしょう。
AIは人を選別するための技術ではなく、見過ごされてきた人に機会を届けるための技術でもある。その可能性をタレスカは示していました。
タレスカ
https://talentscouter.preferredai.jp/
執筆 / フリーライター 小見山友子





