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「まちまるごと休み方」で変える働き方 三菱地所がシェア型リカバリールーム『とまり木 新東京ビル店』を開業


この記事に該当する目標
3 すべての人に健康と福祉を 8 働きがいも経済成長も 11 住み続けられるまちづくりを
「まちまるごと休み方」で変える働き方 三菱地所がシェア型リカバリールーム『とまり木 新東京ビル店』を開業

都市部で働く人の6割以上が疲労を感じながら勤務しているにもかかわらず、オフィス街には安心して休める場所がほとんどありません。この課題に都市計画の視点から挑むのが、三菱地所のシェア型リカバリールーム「とまり木」。2026年10月、有楽町にオープンする2号店の事例から、複数企業で休養室を共有する国内初の試みと、持続可能な働き方へのつながりを紹介します。

企業の垣根を越えて「休養室」をシェア

三菱地所が2026年7月に実施したアンケートによると、丸の内エリアで働く就業者の67.6%が「体調がすぐれない、または強い疲労を感じながら勤務を続けることが頻繁にある・時々ある」と回答しています。一方、「会社に短時間の休憩・休息ができる制度や支援はない」と答えた割合は83.4%。

こうした実態が、年間37兆円ともされるプレゼンティーイズム(疲労や体調不良で生産性が低下したまま働いている状態)の損失につながっているのです(出典:一般社団法人日本リカバリー協会)。

リカバリールーム「とまり木」の核心は「休養室の企業間シェアリング」です。複数の企業がひとつの施設を共同利用するこのモデルは、国内初(三菱地所調べ)。丸の内エリアの企業の約75%が休養室を設置しておらず、働く人は業務中の短時間休憩を「必要だが取れていない」と70%答えている現状に、まち全体で応えようとするものです。

先日行われた記者発表で、三菱地所の担当者は「休憩室の環境を企業単独で整えることは、スペースや費用の面で難しい。だからこそ、まちまるごとで支える仕組みが必要だと考えました」と語っています。料金は従業員50人未満で月5万円(税別)から。現契約企業の6割が中小企業・スタートアップというのが、このモデルの意義を示しています。

「整える」15分と「休む」1時間

『とまり木』のコンセプトは「WELL REST, WELL WORK よく休み、よく働こう~」。サービスは「チャージ機能」と「リカバリー機能」のふたつです。チャージ機能はマッサージチェアや常駐トレーナーによるストレッチ指導(原則15分・予約不要・着替え不要)、リカバリー機能は個室で横になれる休養室(1時間まで)です。

利用者は30代・40代が中心で男女ほぼ半々。主な理由は肩こり(約4割)、気分転換、睡眠不足の解消の順です。

記者発表には1号店の利用者も登壇し、男女ともに「トレーナーによる指導が一番良かった」と口をそろえました。印象的だったのは、子育て中の利用者のエピソードです。仕事が終わってもすぐ帰宅せず、『とまり木』でリカバリーをしてから帰宅するという使い方をしている人もいると言います。疲れをそのまま家に持ち帰らないという選択肢も、働く人の暮らし全体を支えています。

新東京ビル店は、国内初の機器を導入

新東京ビル店の施設は明るく、それでいて落ち着いた空間。商業施設とも医療施設とも違う、ほっとひと息できそうな雰囲気が印象的でした。

2号店にあたるこの店舗には、国内初導入の機器が2台加わります。ひとつは、下肢に乗るだけで血行促進にアプローチできる「垂直律動マシーンFit1」。ブルブルと振動する台に乗るだけで、15分後には足や体の重だるさがすっと抜ける感覚がありました。

もうひとつは「再生の間」という光・音・磁場を組み合わせたセラピー機器で、プロスポーツの現場でも使われる技術がベースに。横になりながら光の温もりと振動を受けると、ミトコンドリアが活性化するのだそうです。こちらも15分。短時間ながらリフレッシュもでき、いずれの機器も、疲れきる前に整えることの大切さを実感できました。

大切なのは「活力」

『とまり木』は2023年10月に三菱地所の社内提案制度から生まれ、試験運用で延べ8000人超のニーズを確認。2025年4月に1号店として正式に事業化し、現在は利用者数9000人超、契約企業約20社に成長しています。

大手町ビルに入居する創薬・再生医療分野の研究開発を行うスタートアップの共同創業者は「入社希望者に紹介したところ、うちの会社を選んでもらえたケースがありました。今ではとまり木のない生活が考えられない、という社員の声もあります」と語っています。

記者発表では日本リカバリー協会代表理事・片野秀樹氏も登壇。「2017年から全国10万人規模の調査を続けています。現在、日本人の約8割が疲れを感じながら生活している。1999年は約6割。このトレンドが続けば25年後は100%になる。疲れたから休む、では足りない。疲労の反対は休養ではなく『活力』です。どうやって活力を取り戻すかを意識したサイクルを設計する時代に入っています」と語りました。

さらに、ヨーロッパでは1993年に勤務間の連続休息11時間以上が法制化されているとも述べ、「日本は30年遅れで今この話をしている」と指摘しました。

まちが「プラットフォーム」になる

三菱地所が推進する丸の内”まちまるごとワークプレイス”構想の一環である『とまり木』。これは、エリア全体をひとつのプラットフォームとして機能させるという発想から生まれています。

SDGsの目標3「すべての人に健康と福祉を」の観点では、企業規模を問わず従業員が休める場所をまちで整えることに意義があります。
目標8「働きがいも経済成長も」との接続は直接的で、プレゼンティーイズムの削減と生産性の向上は、健康的に働ける環境の整備と表裏一体です。
そして目標11「住み続けられるまちづくりを」の精神と最も重なるのが、休養環境をオフィスの中だけでなく、まちの機能として支えるというこのモデルの本質でしょう。中小企業の従業員と大手企業のワーカーが同じ施設を使える水平性が、「まちまるごと」という言葉の実質を担っています。

リカバリー市場は2030年に14.3兆円へと拡大が予測されており、社会が「休み方」を問い直し始めていることは数字にも表れています。2号店開業に合わせ、三菱地所はタブロイド紙の配布や、職場のデスクでまわりにお知らせができる「休憩中カード」の普及、他にも他社との協業など、エリア全体での「休む文化」の醸成にも乗り出します。

「休みやすさを街単位で標準化する」という言葉の通り、『とまり木』が都市の新しい標準になる日は、そう遠くないかもしれません。

店舗概要
とまり木 新東京ビル店
  • 所在地東京都千代田区丸の内3-3-1 新東京ビル2階
  • 開業日2026年10月1日(予定)
  • 営業時間平日 10:00〜18:00(土日祝休み)
  • 対 象丸の内エリア等にオフィスを構える企業(部署単位の利用も可)
  • 料 金従業員50人未満 月5万円(税別)予定〜



執筆 / フリーライター 小見山友子