女性科学者を支える。ロレアル-ユネスコ日本奨励賞とジェンダー平等
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科学の未来を切り拓く。若手女性科学者をたたえる支援の形
日本の科学技術分野におけるジェンダーギャップの解消に向け、長年にわたり若手女性研究者を支援し続けている取り組みがあります。
日本ロレアルが主催する「ロレアル-ユネスコ女性科学者 日本奨励賞」は、物質科学や生命科学の分野で未来を切り拓く若手女性科学者を表彰・支援する制度です。博士後期課程に在籍または進学予定の若手研究者の育成を通じ、SDGs目標5「ジェンダー平等を実現しよう」や目標9「産業と技術革新の基盤をつくろう」の推進に貢献しています。
女性研究者への支援はなぜ必要なのか
本賞は2005年の創設以来、若手女性科学者の発掘と奨励を使命とし、21年の歴史の中で、これまでに85名の優秀な受賞者を輩出してきました。日本ロレアルが本プログラムを継続してきた背景の一つには、日本の科学界における深刻な女性研究者不足と、研究現場が抱える構造的な課題があります。


総務省の最新の科学技術研究調査によると、日本の女性研究者数は過去最多の19万400人、研究者全体に占める割合も19%と過去最高を記録しました。
しかし、国際的に見ると欧米諸国の30%超という水準には依然として遠く及ばず、科学技術分野におけるジェンダーギャップは根強く残されています。特に若手研究者がキャリアを形成する時期は、出産や育児といったライフイベントと重なりやすく、周囲のサポート体制の不足や時間的制約によって研究の継続を断念せざるを得ないケースが少なくありません。
さらに、「女性は理系に向かない」といった無意識の偏見(アンコンシャス・バイアス)や、ロールモデルの少なさによる孤独感も課題とされています。
本賞はこうした環境下でも強い探求心を持ち、独創的な挑戦を続ける若い研究者を後押しするために継続されてきました。この約20年の間に応募される研究の質は年々高まっており、毎年非常にハイレベルな選考が行われています。
今年度は、物質科学と生命科学の2分野から将来の科学界を牽引する4名が選出されました。


物質科学分野では、レーザー光を利用して微小粒子を高速射出することで金属などの材料表面を改質・高機能化する技術を開発した梶原美紀氏(中央大学大学院)と、電子吸引基の導入により世界初となる「反芳香族イソフロリン」の合成・単離に成功し、近赤外発光などの新機能を開拓した杉村晴菜氏(奈良先端科学技術大学院大学)が受賞。
生命科学分野では、アホロートル(ウーパールーパー)の透明な皮膚からコラーゲン構造形成の新メカニズムを発見し再生医療や化粧品への応用が期待される大蘆彩夏氏(岡山大学助教)と、消化管の再生力を支える「幹細胞」の正体と腸疾患との関連を突き止めた桐野桜氏(東京科学大学大学院)が受賞しました。
いずれの研究も独創性と社会的な波及効果が高く評価されています。
多角化する女性科学者を支える環境づくり
本賞の授賞式と併せて開催されたパネルディスカッションでは、「多様性から紐解く科学の可能性」をテーマに、若手女性研究者が抱える切実な課題と今後の展望について議論が交わされました。
登壇者からは、研究生活における時間的制約やキャリアパスへの不安とともに、幼少期や進路選択時における周囲の固定観念が将来像に大きな影響を与えることが指摘されました。性別にとらわれず個人の興味や関心をフラットに尊重する環境づくりや、早期の段階でロールモデルに接する機会の重要性が強調されています。
一方で、近年は行政側も女性科学者を支援する新制度の導入に動き出しています。文部科学省が理系人材の育成拠点を全国に整備し、1拠点あたり年間5,000万円規模の補助を行う方針を示すなど、公的な枠組みでの支援体制の強化も進められています。
民間企業の取り組みに加えて、行政による新たな支援策が導入されることで、女性研究者を支える環境づくりは多様な側面から進められつつあります。
持続可能なイノベーションへ。民間と行政とが継続的な取り組みを
女性科学者を取り巻く環境を改善し、多様な人材が活躍できる社会を実現するためには、民間と行政の双方が一過性ではない継続的な取り組みを行い、社会全体へと働きかけていくことが欠かせません。
性別に関わらず、誰もが純粋な探求心に基づいて挑戦できる環境を整えることは、日本全体の科学技術力を高めるだけでなく、多様な視点から革新的なイノベーションを生み出す土壌となります。長年の支援が結実しつつある今、持続可能な未来に向けた更なる推進が期待されます。





