【SDGs座談会】剛力彩芽とSDGsネイティブなZ世代とで考える未来の形
女優、剛力彩芽さんと持続可能な開発目標「SDGs(エスディージーズ)」を学ぶニッポン放送の特別番組『SDGs MAGAZINE』。2021年8月11日に放送された第17回は夏休みスペシャルとして「学生とSDGs」がテーマとなった。今回は、初めての試みで中学生・高校生・大学生の3世代の学生をゲストに招いた座談会が実現。SDGsネイティブとも呼ばれる若い世代がSDGsをどう捉え、今の時代をどう見ているのか。剛力さんと “ミスターSDGs”こと慶応大学大学院教授で同大学SFC研究所xSDG・ラボ代表を務めるSDGs研究の第一人者、蟹江憲史氏が迫った。
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夏休みならではの企画として、これまでになく若い世代のゲストがスタジオに招かれた。SDGsネイティブといわれるZ世代。現役の中学生・高校生・大学生とのSDGs座談会が実現。剛力さんは「私の学生時代と、どう違うかは気になりますね。私は5歳の時にダンスを始めたんですけど、その当時、ダンスっていいイメージを持たれていなくて、先生からの約束で『挨拶をしっかりする』『ポイ捨ては絶対にしない』というのを教え込まれていました。だから、そういうことは意識していました。ただ、私が中学生や高校生の時はSDGsという言葉はなかったので、皆さんがどういう意識なのか、SDGsをどう捉えて、どのように考え、今の時代をどう見ているのか、あれこれ伺っていきたいと思います」と自身の幼少期を振り返りつつ、鼎談がスタートした。
今回、参加したのは中学3年生の川田愛花さん、東京都内のインターナショナルスクールに通う高校3年生の原田彩花(いろは)さん、そして大学3年生の大貫萌子さんの3人。大貫さんは慶応大学で教鞭をとる蟹江教授の教え子でゼミ長も務めているとあって、まず剛力さんは番組で長く共演している蟹江教授について「普段は、どういう方なんですか?」と興味深そうに質問した。
大貫 「蟹江先生は、すごく生徒とフランクに話してくださる方で、おちゃめな先生です」
蟹江 「良かった。でも、本当に?」
大貫 「みんな、そう言っています(笑)」
剛力 「私も、『ミスターSDGs』なんて言うから、この番組が始まるまでは、どんな固い、真面目な、難しい顔をした方が来られるのだろうと思っていたんです(笑)。一方で、先生について、ここは改善してほしい・・・みたいなところはありますか」
大貫 「研究になると、基本的に生徒に任せっきりなことが多いので、自由にさせてもらっているんだなあと思いつつ、たまにズバッと言われて方向が変わったりもするので、もう少し早めに指摘してもらえると良いなと思っています」
蟹江 「そこはこちらにも意図があって、自由にやってもらうと考えるじゃないですか。考える前に言ってしまうと、こちらが引っ張ってしまう形になる。まず考えてもらって、その結果、違うところがあったら『もうちょっと、ここはこうした方が良いんじゃないの』とアドバイスするようにはしています」
大貫 「それを、もうちょっと早めに言ってもらえると・・・」
蟹江 「そういうフィードバックを聞いたことがなかったので・・・分かりました。もう少し早く言うように心掛けます(笑)」
また、高校3年生の原田さんは、以前番組でも紹介された、高校生の海外留学をを啓発する文部科学省主催のプロジェクト「#せかい部」の部長を務めているという。
剛力 「原田さんは『せかい部』の部長さんとして、どのようなことをされているのですか」
原田 「『せかい部』ではSNSを通じて情報発信をしたりだとか、年に4回ほどオンラインでイベントをして、高校生の関心や世界への関心を高める活動をしています。直近のSDGs関連活動としては、AAAの與真司郎さんをゲストに呼び、海外の方たちと世界の今を話そうということで10カ国の若者との意見交換や交流イベントを行いました」
それぞれがSDGsを知ったきっかけ
剛力 「そんな皆さんに、今日のテーマ『学生とSDGs』について、みんなの学校や家、それ以外のコミュニティも含めたSDGsの取り組みや考え方など聞いていきたいのですが、まず皆さんがSDGsに興味を持ったのはいつ頃からですか」
川田 「授業でも中1の時とかは全然触れなかったものが、去年くらいからだいぶ入って来て、今年は1学期終わったばかりですが、英語とか国語とかSDGsの話題が結構入ってくるようになりました。最近になってテレビの広告などで見るようにもなりましたし、興味を持ち始めたのは去年くらいですね。割と最近です」
蟹江 「国語でSDGsとは、どういうことですか」
川田 「世界の問題について知ろうということで、先生が取り上げたりとかですね」
原田 「私も環境保護団体でイベントをやっていたときに、どこでSDGsを知ったのかということを聞いたら、保健の授業でSDGsの動画を見たとか、国語の小論文とか練習をするところでトピックとしてSDGsが出てきたりとか、そういった話を耳にしました。本当なら社会科とかで出てきそうですけど、意外とそうでもないんですね」
大貫 「私は特殊なのですが、2015年にSDGsが国連で採択された時から知っていて、勉強を始めました。ヨーロッパとアフリカに住んでいて、必然的に環境問題とか貧困問題に小さい時から関心を持っていたんです。ただ、それぞれの問題を見ていても、どうにも解決できないし、よく分からない。一つの問題だけを考えていてもしようがないと思った時に、ちょうどSDGsが採択されて、これを学べば一番社会にインパクトを与えられるんじゃないかなと何となく直感で思い、すぐ勉強を始めました」
剛力 「大ベテランですね!」
蟹江 「本当にSDGネイティブみたいな感じですね」
剛力 「そんなSDGsが、ようやく日本でここにきて浸透し始めている感じですが、この状況をどのように見ていますか」
大貫 「街を歩いている人がSDGsバッジを付けていたりもするんですけど、企業の統計報告書とかリポートを見たりすると、SDGsと言っていながら大して何もやっていないんだなと思うこともあります」
原田 「すごく分かります! ちょっとSDGsと言ってみて、それで関心を集めるためみたいな」
大貫 「やらなきゃいけないからやっているという感じはあります」
蟹江 「大貫さんは、世の中にすごく不満を持っていて、就職活動とかで企業を見ていると、“やっているふり”をしているところばかりじゃないですか、と。だったら、自分たちで評価してみようよと言ったら、すぐ動き始めてくれました」
大貫 「WEBとか会社が出している情報を基に、学生目線でSDGsをやっている企業ってどういうところだろうと検討して、評価基準をつくって分析しちゃえということをしています」
蟹江 「これ、企業はビビりますよ」
大貫 「学生目線でSDGsをやっている企業はここだとか、ここはやっていないとか、明確に出してしまおうということですね」
剛力 「それは、もう企業も本気でやらざるを得なくなりますね。ところで、メディアが扱っているSDGsについては皆さんからどう見えていますか」
大貫 「メディアが扱うことに関しては、すごく賛成です。そのメディアの会社自体がやっているかは分からないけれど、取り上げることによって関心がなかった若者とかが関心を向けたりする。本質的に、詳しい内容に踏み込んでいるかは別として、情報発信、気付くきっかけを与えているという部分には、すごく賛成の立場です」
蟹江 「中学生世代から見ると、どうですか」
川田 「私も、テレビとかがSDGsを取り上げて、そういう言葉があるということを知ることができたし、身近にないと知ろうとも思えない。身近に感じられるから、いいことだと思います」
蟹江 「それをきっかけにして、勉強して、不満なところとかが見えてくるというのが、すごくいいことだと思います」
剛力 「逆に、メディアへの不満などはありますか」
大貫 「メディアの方って、すごく影響力が強いですし、芸能人の方に憧れて真似したいと思う若者はすごく多いと思うので、発信力のある方が、その言葉を使ってくれるのはすごくいいことだと思います」
剛力 「それなら良かったです。では、皆さんが取り組んでいるSDGsは何かありますか」
原田 「すごく初歩的ですが、マイボトルですね。ここ1、2年でマイボトルを使う人が増えたと思うし、学校内でもマイボトルを使おうよという話しが出ることも最近はありますね」
蟹江 「学校には、給水機のようなものがあるんですか」
原田 「ボタンを押すと出てくるみたいなものはありますが・・・」
蟹江 「インフラが整っていないという問題はありますよね。うちのキャンパスもそう」
大貫 「全然ないですね。マイボトルを持っていても、飲み干してしまうと補充が出来ない」
蟹江 「そういう声を、ちゃんと上げた方が良いです」
剛力 「行く場所、行く場所に給水機があったら、ペットボトルの使用は減りますよね」
話題のSDGsトピックス
ここからは『SDGSs MAGAZINE』のWEBサイトに掲載されている記事の話題で番組は進行し。まず、取り上げられたのが今、話題になっているという「ペタッとSDGs 新聞学習ふせん(SDGsふせん)」だ。
「SDGsふせん」とは、SDGsの17個の目標が示されたふせんと、白紙のふせんの計18種類が一冊になったキット。日本NIE学会理事の有馬進一さんのアイデアをもとに朝日新聞社が独自開発したもので、SDGsを意識しながら新聞記事を読み、関連すると思った目標のふせんに自分が気づいたこと、考えたことなどを書いて新聞に貼ることで、自らの思考を見える化し、異なる意見や問題や課題が一目に浮かび上がるという効果が期待されている。
剛力 「これ面白いですね。ふせんが18種類あるのは何でなんでしょう」
蟹江 「自分で必要とするものを考えて書き込もうということですかね」
続いて紹介されたのは「マインクラフトでSDGs」。マインクラフト、通称「マイクラ」は世界中で爆発的なヒットを記録しているゲームで、日本でも小中学生を中心に絶大な人気を誇っている。3Dブロックで構成された仮想空間で、ものづくりや冒険が楽しめ、砂場で自由に遊べる感覚と似ていることから「サンドボックス(=砂場)ゲーム」と呼ばれている。
そのマインクラフトをプログラミング教育・情報教育などの教材として使えるようにした教育向けエディション「教育版マインクラフト」を活用した作品コンテスト「Minecraftカップ2021全国大会」が今年も開催されることになり、第3回目となる今回のテーマが「SDGs時代のみんなの家、未来のまち」なのだという。家とまちに関する3つの目標として「すべての人に健康と福祉を」「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」「陸の豊かさも守ろう」がピックアップされ、参加者は1つ以上の目標を取り入れてワールドを制作する。「住宅のあり方や家族とのつながり方は、どのように変わっていくのか」「また自然の豊かさを守るためには、どのような環境が望ましいのか」を個人やチームで考え、マインクラフトで表現。エントリーは9月16日までで、作品応募期間は同1日から30日となっている。
剛力 「マインクラフトって、みんなやりますか」
原田 「個人的にはやっていないですけど、周りの人たちは結構やっていますね」
蟹江 「うちの子供は好きで、プログラミングを覚えられると聞きますね。授業で使っているところもあるようです」
剛力 「『住宅のあり方』というと、理想のみんなの家とかってありますか」
原田 「未来の街というとファンタジー的な、ビルしかないイメージがあると思うんですけど、私は自然が大好きなので、そういう未来の街ではなくて、どちらかというと生き物と共存して人もいるというのが理想ですね」
大貫 「電気とかに頼り過ぎないのが理想だなと。晴れているときに電気をつける必要はないし、エアコンも使い過ぎりと寒暖差で体調を崩したりする。そんなに人がつくり出したものに頼りすぎなくても良いんじゃないかというのはすごく思っていますし、そういう家があったら良いなと思います。例えば、蟹江先生の家はどうなっているのか気になります」
蟹江 「ありがとうございます(笑)。僕の家はSDGsを目指して家になっていて、早くコロナが終わってくれたら、ぜひ来てもらいたいと思っています。窓が大きいと光がたくさん入ってくるし、断熱が良ければエアコンも少しつければ十分になる。その辺の性能は今、すごく良くなっているんですよ」
剛力 「そういうところに技術を取り入れるのは良いことですよね」
蟹江 「そうですね。あとはエネルギーとかも太陽光発電とかがあれば、災害があっても自分の家でエネルギーをつくれる。そうした将来の街づくりを考える必要があるのではないかと思いますね」
■Z世代が考える未来の形
剛力 「まだまだ、皆さんのいろいろな思いが出てきそうなのですが、最後に一人ずつ、2030年に向け『これを実現したい』という思いや提言を聞いていきたいと思います。まずは中学3年生の川田愛花さん、お願いします」
川田 「SDGsは17個あるじゃないですか。でも、私がよく知っているのは環境問題、貧困とか、そういうことで、働く人とかそっち側のこととかは全然知らない。なので、まずそうした身近にあることを知るところから始めて、機会があったら発信したり、友達とかとの会話でSDGsの話をしたり、少しずつ輪を広げられたらいいかなと思います」
剛力 「続いて、高校3年生の原田彩花さん」
原田 「私は2つあって、一つは個人レベルのもの。SDGsとか、評語のようなものを使わなくても17個の問題一つ一つをみんなが自分ごととして日頃から考えられる社会になったらいいなと思っています。もう一つは人間だけじゃなくて、生物、地球に住んでいる全部が幸せに暮らせるような社会になったらいいなと思っています」
剛力 「そして、大学3年生の大貫萌子さん」
大貫 「ちょっと大きい目標になってしまうのですが、私はSDGsビジネスが当たり前の未来をつくりたいなと思っています。来年から社会人になる身なので、やはりビジネスとか、そういうものがいかに社会に影響を与えるかを実感していて、一般消費者の意識はなかなか変わらないというのが現実の話だと感じるんです。だとすると、一般消費者の手にするものがサスティナブルであれば、必然的に社会がサスティナブルになっていく。企業の事業戦略とか、そういうところからサスティナブルにしていって、サスティナブルなことと企業として利益を上げることが両立できる社会を実現していきたいなと思っています。そのためにはイノベーションが必要ですし、そのイノベーションには世代の垣根を越えて、若い方も、大人の方も、一緒に取り組んでいく必要があると思うので、いろいろなステークホルダーと連携しながら、そういう未来の実現に向けて頑張っていきたいなと思っています」
剛力 「すごいですね、意識が。私も去年、このラジオをやらせてもらうことで興味を持つきっかけを持ったくらいなので、やはりずっと学んでいる人は、やっぱり“自分のこと”という感覚があるのだなと感じています」
蟹江 「川田愛花さんは、まず知ると最初に言っていたけれど、知る前に理想の世界を描いてしまうのも大事なことだと思うんです。遠慮せずに」
大貫 「それは、私もすごく思います。知り過ぎてしまうと既存のものにとらわれてしまう。だったら、私たちが求めるものとか、こういう世界になってほしいというところから、何をしたらいいか考えるのは大事なことなのかなと思います」
蟹江 「そういう意味では、この中で一番バイアスがかかっていないのは愛花さんなのかなと思うので、それは大事にしてもらいたいなと思いますね」
剛力 「ということで、中学3年生の川田愛花さん、高校3年生の原田彩花さん、そして大学3年生の大貫萌子さんでした。ありがとうございました」
3人 「ありがとうございました!」
蟹江 「やっぱり若い人の力というのを、今回はすごく感じましたね。企業もそこに押されて変わっていく時代になっていくんじゃないかなと思いました。普段、大学生と接しているのですが、高校生も、中学生も、本当にエネルギーがみなぎっている。企業も含めて、そうしたものを力にして、吸収して、応えていかなければいけないなと思いました。本当に楽しかったですね。剛力さんは、こういうコミュニティを芸能界にも広げていってください」
剛力 「私も本当に、楽しかったです! この地球の環境問題に直面している、環境問題を考えることが当たり前になっている世代だからこそ、お三方は初対面にも関わらず、そういう話をするとすごく盛り上がる。こういう風に友達同士、家族と当たり前に話せるようになったらいいなと思います。いい未来になるかも、という希望を見た気がして、すごくうれしい回になりました。こうした座談会を定期的にできたらいいなと思います。これが男の子だったら、また違うのかなと思うし、私も当たり前に友達とこういう話しができるようになりたいなと思いました」
3世代の学生をゲストに招いた今回、剛力さんも、専門家である蟹江教授も、若い世代の持つエネルギー、パワーに大きな刺激を受けた様子だった。SDGsが特別なものではなく、当たり前に、自分ごととしてある世代。そうした若い人たちの思いこそが、“常識”を超える力になるのかもしれない。