9/16~25の「SDGs週間」を前に考える日本と世界の差
さまざまなところで「サステナブル」や「SDGs」というワードが掲げられ、自治体や企業をはじめあらゆる団体で、目下の課題となっていますよね。日々SDGsを耳にしている中でも、より意識を高め、行動を起こすきっかけを作るべく、毎年9月に「SDGs週間」が定められているのを皆さんは知っていますか?
そこで今回は、来るSDGs週間に向けて、改めて日本でのSDGsの浸透具合や、世界に目を向けた達成度をチェック。SDGs週間に考えたい、目標達成のために一人一人ができることを考えていきましょう。
SDGsの注目度はどれくらい上がった?日本の現状は…
大阪大学を拠点とするメディア研究機関「Gloval News View(以下、GNV)」は、SDGsがどれくらい、どのように報じられているのか、朝日新聞の2021年1年間の報道をもとに調査しています。そのデータから、日本でのSDGsの現状を考えていきましょう。
1.SDGs報道は激増している
この調査では、「SDGs」もしくは「持続可能な開発目標」をキーワードに含む報道を調査の対象としていました。検索の結果、321件の記事が表示され、同様の条件でSDGsの開始年であった2015年からの報道数を見ると、2015年には一桁であった記事の件数も2019年になると200件台に増え、そして2021年には初めて300件台に乗ったことが分かります。2015年と比較すると2021年の報道はおよそ46倍もあり、激増していました。
2.今のSDGsの報道には具体性がない!?
SDGsは、分野ごとに17の目標が設定されています。GNVの調査では、SDGsの17の目標のうち、どの目標が報道されているのかも分析されました。その結果、もっとも多かったのは、「特定の目標なし」。321記事中156記事が、特定の目標に触れることなく、SDGsというワードを用いていたのです。
「SDGsが注目されている今……」、「SDGsの理念である『誰一人取り残さない』をテーマに……」など、具体的にSDGsで取り上げられている社会問題については語られず、トレンドのワードや理念として、非常にざっくりとした形でSDGsという言葉が登場しているようでした。
これでは、SDGsという言葉が用いられている報道の数の割には、一般人のSDGsへの理解は深まっていないと想像されます。
3.もっとも報道されているSDGs目標は「つくる責任、つかう責任」
「特定の目標なし」を除いた場合、もっとも報道されているSDGs目標は、目標12「つくる責任 つかう責任」でした。次いで、目標15「陸の豊かさも守ろう」、3番目に目標14「海の豊かさを守ろう」となっています。
これらから、主に環境問題に関わる目標が取り上げられることが多いとわかります。SDGsと聞いたときに、環境問題への対策と捉える人も多いのではないでしょうか。企業の取り組みでも、「まずはゴミの分別の徹底から」、「マイボトルを推奨しよう」などと、環境問題を考えることのみに留まっているところも少なくないと予想されます。
SDGsというワードは報道でも増加しているものの、具体的に解説されているものはまだ少なく、SDGs=環境問題と捉えている人が多いのが日本の現状なのかもしれません。
日本はランクダウン!2022年「世界でSDGsが進んでいる国」はどこ?
実際に、日本でのSDGsは世界基準ではどのように評価されているのでしょうか。国際的な研究組織「持続可能な開発ソリューション・ネットワーク」(SDSN)が発表している、世界各国のSDGsの達成度合いを評価した「Sustainable Development Report」(持続可能な開発報告書)をもとに考察してみましょう。
6月2日に発表された2022年版によると、日本のSDGs達成度は163カ国中19位。前年(2021年)の18位(165カ国中)から、1つランクダウンしています。
日本ではとくに、ジェンダーや環境の分野での課題が深刻とされており、世界で遅れをとっています。では、上位にランクインしているのは、どの国なのでしょうか。
SDGs達成度ランキング
1位・・・フィンランド(2年連続)
2位・・・デンマーク
3位・・・スウェーデン
4位・・・ノルウェー
5位・・・オーストリア
なんと、1~5位まで、北欧の国がほとんどを占めています。6位以下も、ドイツ、フランス、スイスと、ヨーロッパの国が続きます。
SDGs達成度上位の国と日本…何が違う?
SDGs達成度上位の北欧のライフスタイルは、日本でも“ヒュッゲな暮らし”として近年注目されています。“ヒュッゲ”とは、デンマーク語で「幸福な時間」「心地よい場所や雰囲気」の意味です。日照時間が短くて極寒の上、税金や物価が高い北欧。自宅にいる時間が長くなるため、必要最低限のものだけで快適に暮らし、大切な人とゆっくり過ごすライフスタイルが定着しているよう。
キャンドルを灯して読書をするなど、慌ただしく過ごす諸国の人を魅了する暮らしの工夫は、SDGsの目標11「住み続けられるまちづくりを」、目標12「つくる責任 つかう責任」、目標13「気候変動に具体的な対策を」、目標17「パートナーシップで目標を達成しよう」に繋がっているのかもしれません。
また、ドイツをはじめとするヨーロッパの国では、オーガニック(有機農法)の食材や家庭用品などが暮らしに根付いています。
日本では、農林水産省が出した農業の中長期戦略において、2050年までに農林水産分野で二酸化炭素(CO2)の排出量をゼロにし、化学的な農薬や肥料を使わない有機農業を広げることを提唱。通常の農法では農薬や肥料が使われますが、その製造過程ではCO2を出す化石燃料を利用しています。
同戦略では、50年までに化学農薬の使用量を半減させ、化学肥料は3割減らすため、有機農業が農地面積に占める割合を、18年度の0.5%から50年までに25%に高める計画です。
オーガニック製品を取り入れることは、有機農法を支援することに繋がります。本場欧州発のドイツ法人オーガニックビジネス研究所「IOB Journal」の情報によると、2013年にドイツで行われた「オーガニック製品の消費に関する世論調査」では、オーガニック製品の購入頻度について「ときどき」、「ほぼ毎回」または「必ず毎回」と答えた人が全体の約75%にも上ったそう。
一方、グリーンピースジャパンによる日本での調査では、「ときどきまたは、週に1回以上オーガニックを買う」と答えた人は全体のたった16%。「月1回も買うことはない、または全く買わない」と答えた人は、58%と半数以上。ドイツとの意識の差を感じます。
また上記の世論調査によると、オーガニック製品を購入する理由は、日本では「自分と家族の健康のため」、「おいしいから」など、個人の利益のためが大半。ドイツでは、「地元農家の支援のため」、「動物愛護のため」、「環境や人体に害が少ないから」などと、社会的な利益が動機になっており、意識の差を感じずにはいられません。
日本におけるSDGsに関する報道は情報が乏しく、個人が自ら情報を掴みに行かなければ、SDGsの理解は深まらないでしょう。SDGsランキング上位の国と比較して、日本のライフスタイルやSDGsへの意識は遅れていると言えるかもしれません。しかし、考え方を少し変えて見ると、まだまだのびしろがあるとも捉えられます。
まずは一人一人がSDGs週間を機にSDGsの理解を深め、自分にできることを考えることから始めて、目標達成に一歩ずつ近づいていきたいですね!