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剛力彩芽と学ぶSDG「ごみ問題」前編。 ごみ問題がSDGsの目標にない理由、その関係性

剛力彩芽と学ぶSDG「ごみ問題」前編。 ごみ問題がSDGsの目標にない理由、その関係性

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女優、剛力彩芽さんと持続可能な開発目標「SDGs(エスディージーズ)」を学ぶニッポン放送の特別番組『SDGs MAGAZINE』。2021年6月12日に放送された第15回は「ごみ問題」がテーマとなった。
前回に続き“ミスターSDGs”こと慶応大学大学院教授で同大学SFC研究所xSDG・ラボ代表を務める蟹江憲史氏をゲストに迎え、SDGsのさまざまな目標に関わってくる身近な問題に迫った。

最近、引っ越しをしたという剛力さん。

「片付けていると、まあごみが出る。これって、もっとどうにかならないのかなとか、いざ捨てるときにどうやって出したらいいんだろうとか、頭の中でSDGsのワードを意識する機会が多くありました」

まさに「ごみ問題」を肌で感じていたところに、今回のタイムリーな話題。「本当に、特にこの話があるから引っ越したわけではないのですが(笑)、環境問題につながる、身近でとても大きな問題を考えていきたいと思います」と切り出し、お馴染み“ミスターSDGs”ことSDGs研究の第一人者、蟹江教授に早速話を聞いた。

SDGsにおいて、まず「ごみ問題」はどのように扱われているのか。剛力さんは「今回の放送まで正直意識することはなかったのですが、SDGsの17の目標そのものに『ごみ』や『廃棄物』というワードがないですよね」と意外な点に着目した。

蟹江 「目標にはないですね。だけど、ターゲット(17の目標を達成するため、その下に設定された169ある考え方や対策)の中にはちょくちょく出てきます」

剛力 「むしろ、何で『ごみ』そのものの目標がないんだろうという感じもします。ターゲットを見ると確かにそれぞれにより特化したものが出てきますが」

蟹江 「逆に、さまざまなところに関わりすぎているということでもあります。海のごみもあるし、日常生活で出すごみもある。本当に横断的な問題なんですね。なので、一つにまとめられなかったというところだと思います」

剛力 「ただ、『ごみ』というワードがないと、やはり意識が下がってしまう、意識しづらくなってしまうのかなとも思うのですが・・・」

蟹江 「それは、貴重な意見ですね。SDGsについては2030年に全て達成できれば一番いいのですが、達成できない場合にそれ以降どうしようかという話にもなっています。そうしたことを考える上では今のご意見とかも、すごく大事なことですね」

剛力 「目標18というものがあってもいいのかなというか。当たり前に、ごみって出していて、そこに意識が向いていないわけではないのですが、もっと明確に分かりやすいものがあると、より良いようにも思います」

蟹江 「目標として明記されていると『意識しなきゃ』となりますし、華やかなアイコンで表されていると(多くの人の心に)、ダイレクトにアピールしてきますからね」

このようにSDGsに定められている17の目標には、単体で「ごみ問題」を扱うものはないのが現状だが、よく見てみると、各目標の中にはしばしば「ごみ」「廃棄物」という言葉や、それに関連する考え方が随所に登場する。例えば、目標12「つくる責任 つかう責任」には以下のようなターゲットがある。

蟹江 「あと、健康の話にもつながりますね。ごみを集める人の健康被害とか。ごみの回収って自治体がやっているので、まちづくり(目標11『住み続けられるまちづくりを』)にも関係してくる」

剛力 「確かに! さらに、海の豊かさ(目標14『海の豊かさを守ろう』)にもつながりますね」

蟹江 「そうですね。海の豊かさは、特に海洋プラスチックごみの問題がありますからね」

剛力 「知らなかったのは5月30日が『ごみゼロの日』とされていることです。SNSなどで、知っている人たちが『ごみを拾ってきました』など、取り組みをアップしていて『ああ、そういう日だったんだ』と知ることができました」

「ごみゼロの日」とは「ご(5)み(3)ゼロ(0)」の語呂合わせで定められた記念日。1993年に厚生省(現・厚生労働省)が5月30日を初日とする「ごみ減量化推進週間」を制定し、最近は5月30日から6月5日(環境の日)を経て6月8日(世界海洋デー)までの期間を「海ごみゼロウィーク」としている。

蟹江 「アンテナを張っていくことが大事ですよね。私は誕生日が5月3日で昔、友達に『ごみの日』とか言われて嫌だなと思っていたんですけど、いろいろご縁があってこういう仕事をやるようになって、『ごみの日』に“0”が付くと『ごみゼロの日』になるということを知り、それで覚えました。そういう巡り合わせもありますし、やはりごみの問題は一番身近なことですから意識することが大事ですね」

剛力 「番組をやり始めて、より意識するようになりましたけど、まだまだできることがあるんじゃないかと思います」

蟹江 「それが大事なことだと思います。入り口から割と簡単に入っていっても、もうちょっとできるかなとか、壁にぶつかったら考えるじゃないですか。それが、すごく大事なことです。考えて、調べて、次のステップに行く。それが一番大事であるということは、学校でもよく言っています。まさに、お手本のような生徒になっていただいて、ありがとうございます(笑)」

剛力 「そう言っていただけて、うれしいです(笑)」

続いて、番組で取り上げられたのは西アフリカのガーナにある電子廃棄物の墓場に関する記事。ガーナには「アグボグブロシー」と呼ばれる世界最大の電子廃棄物捨て場が存在し、ここに世界中から電子廃棄物が集められ、違法投棄され、燃やされている。
15年の国連環境計画(UNEP)の報告によると、14年に世界で出た電子廃棄物は4200万トン。そのうち6〜9割が違法投棄されており、そこから出る有毒ガスがガンや肺疾患のリスクを高めるなど、社会問題化している。

一方で、都市部の平均月収が5~6000円のガーナでは、電子廃棄物を燃やした後に残る希少な金属を売ると平均以上の収入を得ることができ、リスクを承知で「アグボグブロシー」で働く人が多くいるのも現実だ。
これもまた「ごみ問題」がSDGsの目標(1「貧困をなくそう」、3「すべての人に健康と福祉を」など)に関わる一つの例と言える。

そうした現状を変えるべく活動している人もいる。日本人アーティスト・長坂真護(ながさか まご)さんは、これらのごみを使ってアートをつくり、数十万円から1000万円以上で販売。それを先進国の人が購入することで、ガーナのゴミ問題が解決されるという循環の仕組みをつくり出し、現地に住んでいる人々の生活の質を向上させたり、現地の子供たちのために無料の学校を設立したりする取り組みを進めている。

蟹江 「われわれは、スマホを何年かに一回買い替えるじゃないですか。それによっても、どんどん電子廃棄物って増えているんです。スマホの中にはレアメタルという本当に貴重な資源があるんです。それを知らないと、どんどん捨てることにもなりますし、こういう活動をきっかけにして、みんなの意識をどんどん変えていってもらいたいなと思います」

剛力 「有害な煙が出ているということは、健康問題にもなっているということですよね。お金は稼がないといけないし、それがお金になるというのもあるし・・・」

蟹江 「ガーナというと、チョコレートとかカカオのイメージがあると思いますが、それについてもいろいろと問題があって、不当な賃金で働いている人とかがたくさんいます。貧困の問題は深刻なんですね。そういった人たちが、このごみを集めて売っている現状がある。そういった人たちに、ちゃんとした仕事を提供していくことも、すごく大事なことですよね。長坂さんの活動は、そこに手を差し伸べる貴重な機会になります」

剛力 「そのアートを見ることによって、この現状も知るきっかけになる」

蟹江 「そうですね。ごみで出来たアートってきれいだけど、本当にそれで良いの?と思ったりもしますよね。最近、僕は東京芸術大学の人たちといろいろやり取りしていて、アートとSDGsの親和性に皆さん、関心を持ち始めているんです。アートを見ることによって、言っても伝わらないけど、これを見て本当に良いのかと問題意識を持ったり、そういう人の心を動かす、人の心に刺さってきたりするのが アートや文学だと思うんです」

剛力 「本当に、まだまだ知らないところで、いろいろな活動をされている方がいるんだなと思います」

蟹江 「電子廃棄物もそうですし、他の廃棄物も同じだと思うんですけど、本来は資源と見られているものがどんどん捨てられていって、そのことでまた資源がなくなっていく」

剛力 「結局、自分たちで自分たちの首を絞めているということですね」

蟹江 「もともとSDGsは、このまま続けていると、あと10年くらいで世界は破滅の危機を迎えるということでできたものですが、その原点に返らせてくれるのがごみの問題ともいえますね」

剛力 「見つめ直すことが大事ですね」

番組の後半では、この問題をさらに深掘り。お笑い芸人で、ごみ清掃員でもあるお笑いコンビ、マシンガンズの滝沢秀一さんを迎え、より身近な「ごみ問題」の現実に踏み込んだ。

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