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木を切ることも森林保全に!?“未来杜市”岡山県真庭市の森林資源を生かしたまちづくりとは

木を切ることも森林保全に!?“未来杜市”岡山県真庭市の森林資源を生かしたまちづくりとは

#SHOW CASE
  • 陸の豊かさも守ろう

近年、自治体の間でもSDGsに対する関心の高まりや取り組みの拡大が生じ、全国の自治体がSDGs目標達成を組み込んだ地域づくりに力を入れています。そんな中で瀬戸内海に面し、“フルーツ”や“桃太郎”のイメージが強い岡山県で、2018年に「SDGs未来都市」ならびに「自治体 SDGs モデル事業」に選定された“未来杜市”「真庭(まにわ)市」をご存知でしょうか?

岡山県の北中部に位置し、鳥取県と境を接する真庭市は、県下自治体の中で最大の面積を誇り、その8割ほどを山林が占める自然が豊かな地です。近年、輸入材に押され林業が衰退するなかで“森林資源を生かした持続可能なまちづくり”を見出し、これまで価値の無かった資源を生かした「回る経済」の実現に取り組むことで、全国的にも注目を集めています。今回はそんな「真庭市」の森林資源を生かした持続可能なまちづくりをご紹介します!

木の量が増えるのは良いことなの?

世界有数の森林国である日本では、国土に占める森の面積は約70%と先進国(OECD諸国)の中では世界第2位を誇ります。また日本では過去40年にわたり、この森の面積は変わっていませんが、木は毎年成長をするため、森林の体積は増えているんです。それって本当に良いことなのでしょうか?

植林された森のスギやヒノキが伐採されずに成長した人工林には、太陽の光が届かず、下草が生えません。それによって、地表の水を含める量も少なくなり、日光のあたらない木は太く成長せず、根も浅く地面にしっかりと生えることができないのです。そのため、木は適切な時期に適切な量を伐採しなければ、健全な森にはならず、倒木などの災害にもつながることになります。しかし近年、外国材の価格が国産材より安くなってしまったことで、国産材が使われず、すでに伐採に適した時期をむかえている木材も伐採されないという問題が起こっているんです。

森林資源を生かして電力の地産地消を実現

古くから林業や製材業が盛んな真庭市でも、近年では育てた木が木材として十分に出荷できず、枝葉や樹皮などは産業廃棄物として処分をされていました。そんな中、真庭市では2005年に「真庭市バイオマス利活用計画」、翌2006年に「真庭市バイオマスタウン構想」を打ち出し、間伐材などを含む木質バイオマスのほか、生ごみやし尿、浄化槽汚泥といった総合的なバイオマスの利活用システムを備えたバイオマスタウン発展による地域の活性化を目指しました。

そんな真庭市の木質バイオマス活用の一翼を担うのが「真庭バイオマス集積基地」です。未利用木材や製材所で発生する樹皮を利活用することを目的として建設され、木材の買取価格を高くすることで、山林の維持管理に対するモチベーションアップを図っています。真庭中から集まった未利用材や端材、樹皮などのほぼ100%を燃料用や製紙用のチップなどに加工し、出荷をすることで“木を使い切ること”を実現しています。

さらに「真庭バイオマス集積基地」などから搬入されるチップやペレットを燃やして温め、発した蒸気で発電機を動かすのが、「木質バイオマス発電所」です。2015年の運転開始以降、全国でもトップクラスの稼働率を誇るこの発電所が供給する電力は、真庭市の総世帯数が年間で使用する電力を上回り、バイオマス発電だけで電力の自給率が100%を超える状態を実現しました。また、この発電所の24時間連続運転を支えるスタッフは全員地元からの雇用ということで、環境が守られるシステムを作り、さらには雇用も生み出す、まさにSDGsを体現するような施設として全国的にも高く評価をされています。

真庭市のサステナブルを体感できるランドマークが新たに誕生

そんな真庭市に2021年7月、人と自然環境における持続可能な開発の探求、持続可能な循環型社会などを世界に発信する拠点施設として「GREENable HIRUZEN(グリーナブル ヒルゼン)」がオープンしました。この施設の象徴的建築物となるCLTパビリオン「風の葉」は、東京・晴海に建設された隈研吾氏設計監修の『CLT PARK HARUMI』がその役目を終えて蒜山高原に移築されたものです。解体しても再生できる木造建築の特性を生かした移築可能な素材・構造システムを実現することで、木材の新たな活用方法、さらには建築物のアップサイクル例として、“持続可能性”を体現する建物になっているんです。他にも隈研吾氏の建築模型などの資料と現代アートを展示する蒜山ミュージアムや、国立公園蒜山の観光情報とサステナブルな暮らし(商品)を提案するビジターセンター・ショップ、蒜山高原の自然や文化資源を生かした体験メニューを提供するサイクリングセンターなど、楽しみながら真庭市が発信するサステナブルの様々な体験をすることができる施設として今後注目ですね!

世界的に大きな問題となっている森林破壊。過度な森林の伐採が問題となる世界各国と日本を比べても異なる状況にあることが分かりました。適切な時期に適切な量を伐採すること。その木を使い切り新たなものを生み出すこと。豊富な森林を保全する真庭市の取り組みを始め、自治体の取り組みから学ぶことは多いのかもしれませんね!


岡山県真庭市 観光局公式HPはこちら

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