SHOW CASE

2021流行語大賞「ジェンダー平等」注目集まるスポーツ界


この記事に該当する目標
5 ジェンダー平等を実現しよう
2021流行語大賞「ジェンダー平等」注目集まるスポーツ界

毎年年末に発表される「ユーキャン新語・流行語大賞」。今年は多くのメディアやCMでも取り上げられているSDGsに注目が集まり、数ある沸騰ワードの中から「ジェンダー平等」が受賞しました。
2015年のSDGs採択以降、関連ワードが大賞に選ばれたのは今回が初めてのこと。SDGs5番目のゴールに定められているジェンダー平等について、耳にしたことがある人も多いのではないでしょうか?
近年では、私たちの身近にあるスポーツ業界でも、ジェンダーの枠を取り払う試みが積極的に行われています。今回はジェンダー平等実現に向けた取り組みが話題となった、女子サッカー界にスポットを当ててみましょう。

サッカー界では今年、待望の「WEリーグ」が発足しました。国内初の女子プロサッカーリーグとして9月12日に開幕し、WEリーグ公式Instagramのフォロワーは既に1万千人を超え、若い世代を筆頭に人気を集めています。
WEリーグとはWomen Empowermentの略で女性の社会進出を意味しています。その名の通り女子プロリーグの発足には、女子サッカーの強化だけでなく「多様性」を認める社会の実現がテーマとなっていることで、他の女子スポーツ界からの期待も膨らんでいます。

リーグ本体は「ジェンダー平等の考え方が一般的になるような日本社会にする」という理念を掲げています。また、ジェンダー平等が達成されていない分野にも理解が広まり、男女平等や多様性のきっかけになることを目的に、参入基準として明確な内容が盛り込まれています。

(1)コーチ、監督らに女性を入れる
(2)クラブを経営する役員に女性が1人以上いる
(3)スタッフの50%は女性にする
(4)ホームの試合会場に託児所を設置する
などが盛り込まれています。

このような社会的テーマを掲げ、WEリーグを率いるのは岡島貴久子チェア。海外在住での異例の就任となりました。サッカー日本女子代表選手の経験と、世界の金融業界で築き上げたキャリアを持つ岡島チェアは、実現したいことが2つあると挙げています。

1つ目は、プロのWEリーガーの姿を、サッカーをしている女の子たちの憧れの存在にすること。アメリカでは、女子サッカーの試合にはユニフォームを着た少女プレーヤーや、お子さんがサッカー選手だとひと目で分かるファミリーがたくさんいらっしゃるのだそうです。日本でもサッカーをしている女の子たちをはじめ、さまざまな人々にプレーを見に来てもらうことを大切にしていきたいとのことです。

2つ目は、このリーグのもう一つの役割。リーグ名にも込められている「Women Empowerment」。日本の女子プロスポーツが発展することは、女の子たちの夢の限界をなくす一つの象徴になると考えています。あらゆる業界で頑張っている女性たちが集うコミュニティをつくりながら、サッカーを通じて日本中の女性が元気になるようなメッセージを発信していきたいと残しています。実はWomen Empowermentという言葉はアメリカでは20年も前から掲げられており、日本にはまだ浸透し始めたばかりなのです。

また、今季5月16日に行われた明治安田生命J3リーグの試合では、Jリーグ史上初めて山下良美主審が女性審判員として主審を担当。山下審判員は、「女性審判員が男性の試合をやることが当たり前になることが、私が目標とすべきこと」と語っています。2020東京オリンピックでは主審として参加し、女子サッカー開幕戦で笛を吹き、スポーツ界で活躍する女性に夢と希望を与えてくれました。彼女自身、男子の試合を捌くことが目標だったわけでなく、1人の審判員として上を目指そうと努力を重ね、1級審判員資格を取得。国外では、男子クラブに女性監督が就任する事例もあり、女性の活躍の場は世界中で広がりを見せます。山下審判員の実力と行動は世界にも影響を与え、FIFA女子W杯公式Twitterでは「歴史がつくられた」と発信され、FIFA公式サイトでのインタビューを改めて紹介しました。

日本において「ジェンダー平等」に関するSDGsの目標達成率は、先進国の中でも低く、各国からは改善の余地があると見られている厳しい現状です。 また、オリンピック・パラリンピックの際に話題となった「女性がたくさん入っている会議は時間がかかる」というJOCの評議委員会での発言によって辞任となった、前・東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会会長の森喜朗氏の発言。この発言の影響は大きく、国籍性別問わず世界中の人々から批判が殺到しました。しかし、このような無意識的偏見というものがまだまだ日本には根強く存在しています。その現状を打破していくためにも、WEリーグ発足を機にジェンダーに関する話題だけでなく、多様性が受け入れられるニューノーマルな社会を作り上げていく必要があります。この数年間で大きく変わりつつある、ジェンダー論。当たり前とされてきた古い習慣やシステムの再構築に期待が高まります。性別の違いや「〇〇であるべき」という枠に捉われず、境界を無くしていくことが、多くの人々から求められています。

今では世界各国で女性の行動による変革がもたらされ、国内ではWEリーグを筆頭に、日本の女子スポーツ界が躍進を遂げています。これらの変化は、多くの女性が人生で幾度も壁を乗り越えた経験や声を上げることなどが全て重なり合い、大きな社会改革が起きていると言えます。それぞれの努力を積み重ね、才能を開花させてきたからこその結果であり、その一人ひとりの行動が世界を動かす大切な一歩となっています。スポーツが生み出す強靭なパワーが、これからを生きる人々に、力を与えるのではないでしょうか。