SDGsランキング19位。最低評価を受けた「つくる責任、つかう責任」をもう一度考える。
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国際的な研究組織「持続可能な開発ソリューション・ネットワーク(SDSN)」は6月2日に世界163カ国のSDGs達成度ランキングを発表しました。日本は去年から1つランクを下げ19位、3年連続で順位を後退させる結果となりました。
目標別の達成度について最低評価を受けたのは計6つです。昨年も同評価を受けている、目標5:「ジェンダー平等」、目標13:「気候変動対策」、目標14:「海の豊かさ」、目標15:「陸の豊かさ」、目標17:「パートナーシップの実現」の5つに加え、今年は新たに目標12:「つくる責任、つかう責任」が最低評価を受けています。目標12は持続可能な生産・消費の確立をテーマにしています。最低評価に転じた要因は様々ありますが、消費者視点でみるとモノを大事に使うという動きは逆に高まっているようにも感じます。
最近Z世代の間で、「タフティング」と呼ばれるオリジナルのラグ作りが注目されているのをご存じでしょうか。TikTokでは関連動画の再生が1300万回を超え、タフティング教室は予約が取れないほどの人気ぶりです。手作り教室はこれまでも編み物や陶芸、アクセサリーなど色々とありましたが、最近はDIYのブームもあって、より職人感のあるクラフト体験の人気が高まっています。
作る過程を楽しむとともに、その工程を体感することで、モノを大事に使う意識が生まれます。また、その材料や素材を知ることで環境への意識も高まります。大人も子ども楽しみながら「つかう責任」を実感できるクラフト体験は、今後も体験型SDGsとして進化していくことでしょう。
つかう責任から考える、モノづくりに対するSDGs
目標12には、「2030年までに、ごみが出ることを防いだり、減らしたり、リサイクル・リユースをして、ごみの発生する量を大きく減らす。」というターゲットが掲げられています。私たちは日々沢山のモノを消費し、そして沢山のモノを破棄しています。サイズが合わなくなったから、汚れてみっともないから、使わなくなった(と思った)から……経済的にも恵まれている日本では、不要なものは当たり前に破棄されているのが現状です。このままでは日本は20年以内にゴミ処理場のキャパシティが限界を超えることが分かっており、深刻な問題にもなっています。
詳しくはこちらの記事「ゴミの最終処分場の寿命はあと20年」をご覧ください。
最近ではフリマアプリを活用する人も増えましたし、必要としている誰かに使ってもらう取り組みは大変素晴らしいことです。しかしそれと同時に、修理やメンテナンスをして大事に使い続けるという気持ちも大切にしていきたいものです。
自分で靴を組み立てる、ミニチュアシューズ体験
モノづくりを体験することはSDGsへの意識の高まりに繋がる活動ですが、最近では主催側もよりSDGsに配慮した形で体験の提供を行っています。
この先駆けともいえるのが、大手スポーツ用品メーカーのアシックスが10年以上にわたり行っているミニチュアシューズ作りのワークショップです。使用する材料はほぼ全て生産ラインから出た端材が活用されています。神戸市にあるアシックススポーツミュージアムの来館特典として開催されているほか、校外学習などにも採用されるなど、これまで8,000人以上が参加しました。ミニチュアシューズ作りで一体何が学べるのでしょうか。今年の3月からはオンラインでの開催も始まったということで、実際に体験してみました!(現在は校外学習も含め、ミュージアム現地開催のワークショップは中止しています)
送られてきたキットがこちらです。必要な材料と道具は全て入っているのでこちらで準備するものは特にありません。接着剤を使う以外は、パターンも部品も実際のシューズとほとんど同じ組み立てということで、かなり本格的なものができあがりそうです。
こんなに細かいパーツ、本当に組み立てられるだろうかと不安になります。
Zoom を繋ぎ、いざ開始です。レクチャーしてくださるのは実際に靴づくりに携わられていた方です。今回作るのは、オニツカタイガーの「リンバーアップ」というトレーニングシューズをモチーフにしたもの。実際の工程と同じようにミニチュアシューズ作りも行っていきます。デザインは毎月変わり、ウェブサイトでも公開されています。
工程ごとに説明を受けながら作っていきますが、こちら側のペースに合わせて優しく丁寧に説明してくださるので、お子さまと一緒に参加するのも楽しそうです。
また、画面越しにその工程が実際のシューズ工場ではどのように行われているか、動画を交えながら見せていただけ、ちょっとした工場見学も味わえます。
あのパーツから、なんとかここまで出来上がりました。ラバーソールを付けて紐を通したら完成です。ちなみに最後に使う紐は、バスケットボールシューズのソールの縫い付けに使われている糸から出来ているそう。
そして、約8センチの手のひらサイズのミニチュアシューズが完成!ものすごい達成感です!ミニチュアサイズのシューズボックスもついてくるのもかわいいですよね。開始前は本当にできるのか不安でしたが、作り始めると楽しすぎて時間を忘れるほど没頭していました。
自分で作ってみると、なぜこの順番で組み立てるのかといったことや、私たちが普段何の不快感もなく靴を履けている背景にはこんなに細やかな気遣いがあったのかと気づかされます。実際に履いて楽しむことはできませんが、モノづくりの面白さとモノを大切に使う気持ち、そして捨てられるはずだった材料がこのような形で新しい体験に生まれ変わっていることへの素晴らしさを感じることができ、10年以上続いている理由がよく分かりました。
こちらのワークショップは10歳以上であれば申し込みが可能ですし、所要時間も1時間40分ですので、集中力が切れずに楽しむことができます。夏休みの工作にも良さそうですね。
お申込みの詳細はHPをご確認ください。
体験することが一番の近道なのかもしれない
ゴミを減らそう、モノを大切に使おうといったことは色々なところで叫ばれていますし、幼稚園や小学校のころから教わっている当たり前のことです。しかし頭では分かっていてもなかなか実行できないのが現状です。モノづくりを体験することで、楽しさや達成感を味わいながらも、同時に作り手への尊敬の気持ちや大切にしたいという思いが自然と生まれてきます。「つくる責任、つかう責任」は企業側の努力や改善に注目されがちですが、この目標を達成するためにも、私たち一人ひとりがつかう姿勢を見直し、そしてモノづくりを支えていきたいですね。
企画・編集 / 内村
ライター / 黒川