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【解説】SDGs目標8「働きがいも経済成長も」とは?解決すべき課題や現状


この記事に該当する目標
8 働きがいも経済成長も
【解説】SDGs目標8「働きがいも経済成長も」とは?解決すべき課題や現状

SDGsとは「Sustainable Development Goals」の略で「持続可能な開発目標」を意味します。SDGsには17の大きな目標と169のターゲットがあり、掲げる目標の8番目には「働きがいも経済成長も」と記されています。これは何を指しているのでしょうか。この記事では、世界で起きている経済や雇用の問題を通して、8番目の目標について解説します。

SDGs目標1の現状と課題について

SDGsの目標8では、そのゴールとして「包摂的かつ持続可能な経済成長」が示され、その実現のために「すべての人々の完全かつ生産的な雇用と働きがいのある人間らしい雇用促進」が掲げられています。しかし、2022年の時点では、世界がこの目標を達成しているとはいえません。世界はどのような状況にあるのか、現状と課題について以下でみていきましょう。

①21世紀にも引き継がれた児童労働問題

世界には貧困などが理由で強制的に働かされる子どもが多く存在しています。国際労働機関(ILO)と国連児童基金(UNICEF)によって作成された「児童労働:2020年の世界推計、傾向と今後の課題」によれば、世界の児童労働者数は1億6000万人です。世界の子どもの9%~10%が働いているということになります。児童労働者のほとんどは劣悪な環境での長時間労働を強いられており、その半数は心身へのリスクが高い仕事に従事しています。人身売買によって性産業に従事したり、戦場で兵士となる者も少なくありません。児童である時期は教育と職業訓練を受ける時期として非常に大切です。教育や職業訓練の機会が奪われると、貧困の連鎖を生み出します。持続可能な経済成長を考える上で、児童労働の撲滅は大きな課題といえるでしょう。

なお、SDGsでは目標を達成するための具体的なターゲットが169項目設定されています。目標8には12のターゲット項目が設定されており、その7番目には「2025年までに児童兵士の募集と使役を含むあらゆる形の児童労働を撲滅する」と記されています。

②世界の失業率は若者を中心に深刻さを増している

世界には33億人の就業者がいますが、その大半は、権利の保証・十分な収入・適切な社会的保護といった点において、不十分な労働条件で働いています。2016年のデータでは、就業者のうち2,490万人がなんらかの形で強制労働させられた経験があるそうです。しかし、過酷で劣悪な労働環境であっても、働くことを受け入れざるを得ません。なぜなら2020年の時点で世界は、毎年340万人が仕事を失い、およそ2億人もの人が安定した仕事を得られていない状況にあるからです。

国際労働機関(ILO)の報告によれば、2018年における世界の失業者数は1億7,200万人で、その失業率はおよそ5.0%でした。2020年にはコロナウイルスの世界的まん延によって状況は悪化し、失業者数は2億2,000万人となりました。失業率に直すと6.5%です。失業率の悪化は特に若者世代を直撃しており、失業者の3割以上が15歳から24歳の若者です。また、若者に仕事があったとしても安定的なものとは限りません。若者世代の6割ほどが非公式な労働に携わっていると考えられています。

失業による経済悪化は、貧困を引き起こす原因となります。貧困はあらゆる問題の引き金となる問題です。さらに失業による不安感は、幸福感を大きく損なわせ、自殺率や犯罪率を増加させます。失業は単純に所得が低下するという意味以上に、さまざまな痛みや苦しみを人と社会に与えます。そのため失業問題は、喫緊に解決しなければならない課題といえるでしょう。

③働きがいのある人間らしい雇用(ディーセント・ワーク)の実現

SDGsの目標8には「働きがいのある人間らしい雇用(ディーセント・ワーク)」と記されています。ディーセント・ワークとは、人間らしい生活を継続的に営める労働条件の雇用を指します。わかりやすく言うなら、権利の保証・十分な収入・適切な社会的保護といった条件を満たしている雇用のことです。そしてSDGs達成のための鍵は、ディーセント・ワークへの取り組みにあると考えられています。

世界が抱えている課題の多くは、労働と密接な関わりがあります。劣悪な労働こそが世界の成長を妨げていると言っても過言ではありません。安定した労働は、貧困の連鎖から抜け出すきっかけとなり、将来への希望が持てる生活を実現します。ディーセント・ワークの推進は安定した雇用を生み出します。権利が尊重され、安定した収入が得られ、さまざまな不条理な扱いから労働者が守られたなら、世界は希望の持てる社会へと変わっていくでしょう。

しかし、過酷な環境に苦しみながら働く労働者が世界中に存在しているのが21世紀の現状です。わずかばかりの賃金のために、不平等や不条理の中で働いています。このような現状を改革するためにも、ディーセント・ワークの実現は最優先課題の1つといえます。

SDGs目標8達成に向けて私たちができること

SDGsの目標8を実現させるには、地域や団体あるいは国際的な取り組みが欠かせません。例えば国際労働機関(ILO)は、ディーセント・ワークを重視するために、社会経済政策へのアプローチを積極的に行っています。各国の実情に応じた計画作りや支援、目標推進のための事業活動といったものです。ですが、このような大がかりなアプローチ以外にも、SDGs目標8を達成するためにできることはあります。私たちができる身近な取り組みについて以下に紹介します。

①自分の働き方を見直そう!ワークライフバランスを考える

SDGsの目標8の実現にむけて、まずは「働くこと」そのものについて考えてみてはいかがでしょうか。いまの労働環境は仕事と生活のバランスがとれているものでしょうか。労働時間・休暇制度・社内環境などさまざまな面から考えてみましょう。

例えば、日本は長時間労働が社会問題となってきました。ブラック企業や過労死の問題も取りざたされてきました。もし、自分の労働環境がワークライフバランスを蔑ろにしているのなら、その改善に取り組むことで目標8の達成を後押しできます。取り組みは難しいものでなくてかまいません。時短勤務の申し出をしてみたり、有給休暇を積極的に取得してみるのもよいでしょう。また、リモートワークのような新しい働き方を提案するのもよい方法です。

なかには、ワークライフバランスを考えようにも「社内風土がそれを許さない」という方もいるでしょう。そのような方は、スケジュール管理や無駄な仕事の洗い出しから始めてみることをおすすめします。なお、ワークライフバランスの取れた働き方は、日本政府も働き方改革を通して推奨しているところです。

②投資で応援!ESG投資で間接的に目標8の達成を後押し

ESG投資とは「環境(environment)」「社会(social)」「ガバナンス(governance)」の3つの評価軸を考慮した投資のことです。財務諸表だけでは、企業が担うべき社会的責任、あるいは環境問題への取り組みが見えてきませんでした。しかし、ESG評価という新しい評価軸を用いれば、環境や社会へ配慮しながら成長を長期的に持続している、企業統治に優れた企業が見えてきます。また、ESG評価の高い企業は、ディーセント・ワークを重視したものが多いです。法律に基づいて労働者の権利を守り、安定的な労働環境への配慮がなされています。そのため、ESG投資をすれば、間接的に目標8の達成の手助けができるといえます。

③日々の買い物でも協力できる!フェアトレード商品を選ぼう

私たちの生活により身近なところでSDGsの目標8達成のための協力がしたいのであれば、フェアトレード商品の購入をおすすめします。フェアトレードとは、搾取されやすい立場にある労働者に、対等で適正な対価を継続的に支払うことで、生産者や労働者の自立と生活改善を促す社会運動です。日本では公平取引とも呼ばれています。原料や製品の生産地となることの多い発展途上国では、不当な低賃金で長時間労働をせざるを得ない人々が少なくありません。フェアトレード商品を購入すれば、そのような生産者や労働者に、正当な報酬が支払われます。この方法なら、少額の出費ですぐにSDGs達成のための手助けが可能です。
近頃ではフェアトレード商品の種類が増えています。そのほとんどに「フェアトレードマーク」が付いているので、興味のある方は近所のスーパーなどで探してみるとよいでしょう。

日々の生活にもその答えはある

SDGsが掲げる目標の8番目「働きがいも経済成長も」は、2022年時点では達成できていません。それどころか、今すぐに解決しなければならない課題が、世界には残されています。気にはなっていても自らの無力さを感じている人もいるでしょう。ですが、実際には日々の生活のなかにも、世界を変える答えは存在しています。目標を達成するために、一人ひとりが考え行動することが必要であるといえます。