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【解説】SDGs目標15「陸の豊かさも守ろう」とは?解決すべき課題や現状


この記事に該当する目標
15 陸の豊かさも守ろう
【解説】SDGs目標15「陸の豊かさも守ろう」とは?解決すべき課題や現状

SDGsとは「Sustainable Development Goals」の略で「持続可能な開発目標」を意味します。SDGsには17の大きな目標と169のターゲットがあり、。その15番目の目標に「陸の豊かさも守ろう」が掲げられています。陸の豊かさを守ることで砂漠化を防ぎ、多様な生き物が生きられる環境を維持していく、そんな意味が込められているのです。本記事ではその具体的な内容や、現在世界で起きている陸上の自然環境や生態系の変化に関する問題について解説していきます。

SDGs目標15の現状と課題について

SDGsの目標15では、陸の豊かさを守ることが掲げられています。陸の豊かさを守ることは、同時に森林や陸の動植物の多様性を守ることにもなり、人間の豊かな生活にも繋がっていくからです。この内容を詳しく知るためには、現在の地球の状況と課題について詳しく知っていく必要があります。

世界の森林の現状

地球の森林面積は減少を続けています。世界の森林面積は約39.9億ヘクタール。これは陸地の約30パーセントを占める割合です。しかしこの森林面積は減少を続けており、2010年から2015年の間で、毎年330万ヘクタールが減少しています。森林の減少が特に多いのが南アメリカやアフリカといった熱帯の森林です。砂漠化や酸性雨など気候変動の影響もその一因ですが、森林を農地や牧場に転用するため、あるいは安価な木材やパルプ材を入手するために森の生態系を無視した森林伐採も大きな理由の一つです。

無計画な伐採、過度な放牧、都市化などによる化学物資汚染などが進むと、土壌が劣化します。劣化した土壌は生態系を保つことができず、結果、農業なども行うことができなくなります。現在、世界の土壌の約18パーセントが、草木が生えず岩や土が剥き出しの「裸地」状態になっています。何も手を講じなければ、こうした劣化した土地がどんどん広がっていくことになります。これを防ぎ豊かな自然と共に暮らしていくためには、森を守り再生していく行動が必要不可欠なのです。

生態系への影響

世界の陸地の30パーセントを占める森林。そしてその森林には、陸に住む生物の約8割が暮らしていると言われています。森林内部では様々な樹木や草が高さを変えながら重ならないように生えているため、階層的な空間構造になっており、それ故に様々な生物が生活することができます。森林が失われれば当然多様な生物たちも住処を追われることになり、地球の生態系に大きな影響を与えることになります。現在、地球には175万種の生き物がいますが、そのうち約3万7,400種が絶滅危惧種に指定されています。

生態系を脅かす要因は他にもあります。例えば密漁です。人間が金銭を得るために乱獲し違法取引を行ったことで、個体数が大きく減ってしまった動植物が存在します。密漁をきっかけに周囲に影響が及び、連鎖的に他の動植物まで失われるといった例も報告されています。また、外来種も大きな課題です。本来そこにいなかったはずの種族が入り込むことで生態系が壊れ、他の種を絶滅させてしまうことがあります。特に大きな影響を及ぼすものを「侵略的外来種」と呼び、世界中で大きな問題になっているのです。外来種の侵入には意図的導入と非意図的導入があります。意図的導入は人間が意図して持ち込んだ外来種が放逐された、あるいは逃げ出したケースのことです。非意図的導入は、人や物の移動に伴い意図せず運び込まれたものを指します。

人の生活への影響

人間も当然生態系の一部であり、生きていくために必要な仕事や食料、燃料や医薬品などさまざまなものを得ています。森林が減少し生態系が崩れれば、当然人間の生活にも大きな影響が及びます。また、森林には生態系を維持する以外にも、地球温暖化の緩和、土砂災害の防止、水質や大気の浄化など様々な機能があります。人が生活していくためには、森林は必要不可欠な存在なのです。

SDGs目標15達成に向けて私たちができること

現在、世界中で森林生態系を守るための活動が行われています。もちろん、森林を保全するためには国際的な取り組みが必要不可欠ですが、個人でも森林を守るためにできることはたくさんあります。

植林活動

森林保全のための活動の代表例が、植林です。森林は伐採すれば当然なくなってしまい、また木が成長するまでには長い年月がかかります。そこで、木の過剰伐採を防ぐために、最初から木材やパルプ原料に使用することを目的として木を植えるのが「産業植林」です。その樹林を伐採することで、現存する森林を守ることに繋がります。特に豊富な天然林が残っている地域では、固有の動植物がいることもあり、今ある木を生かすことが非常に重要です。こうした場所では生態系が科学的に解明されていない部分もあるため、保護は不可避の課題となっています。

NPOやNGOも、熱帯雨林や砂漠の緑化を目的として植林を行っていますが、これは「環境植林」に分類されます。また、企業が慈善活動の一環として行っていることも多いです。環境植林は、木材生産を目的としない森林保全のための植林です。環境植林は生物多様性を保全する目的もあることから、その地域の種を、複数種植えることが多いのが特徴です。そのため、実は無計画な植林はかえってその地域の自然を阻害することが指摘されており、植えた木が土壌に合わずに全滅してしまったり、植林した外来種が猛烈な勢いで繁殖してしまうという例もあります。

日本では、森林の活力を蘇らせる取り組みが各地で行われています。日本は国土の7割が森林であり、人々は古くから木に親しみを持って暮らしてきました。特に戦後は、資源となる木材を育てるべく多くの人工林を作りました。しかし、海外からの輸入木材により出荷が減ったり、林業に携わる働き手が減った結果、多くの人工林は放置され荒れてしまっています。荒れた森林は太陽の光が地面に届かないため薄暗く、その結果草がほとんど生えていません。肝心の木そのものも栄養が行き届かずひょろひょろで、木材にすることができません。当然そんな森林は生き物も暮らしにくく、ますます荒れてしまう悪循環になってしまうのです。

人の手によって作り出された人工林は、適切な手入れをしなければ荒れる一方です。そこで伐採期まで成長した木は切り出して適切に使い、使った分の木を新しく植えて育て、育った木をまた切り出して使う。そうした循環を作り出すことで、森林に活力を生み出す取り組みが行われています。戦後、60~70年前に作り出された人工林はその多くが今まさに伐採期を迎えています。「森林保全はとにかく木を伐らないことが大切」と思いがちですが、特に人工林の場合は適切に木を使うことが、森林を守ることに繋がっていくのです。

②FSC認証制度

消費者の立場であってもできることはあります。その一つがFSCマークのついた製品を選択することです。FSCは森林認証制度の一つです。森林認証制度とは、環境保全や社会的観点から見て、適切で持続可能な経営を行っている森林であることを、行政や企業以外の独立した第三者機関が証明する制度のことを言います。FSCは1993年に設立された協議会で、世界各地で森林認証業務を行う機関を評価、認定、監視しています。消費者はこのマークが付けられた製品を購入することで、適切に管理された森林をサポートすることができるのです。

SDGsの目標15を達成するため自分たちにできることをしよう

「陸の豊かさも守ろう」を実現するためには、森林を保護し、生態系を守ることが重要になります。世界的な取り組みが必要なのはもちろんですが、個人が日常生活のなかで気を付けることでできる取り組みもいくつかあります。今一度、森林の大切さや生態系維持の意味を考え、一人ひとりが考えて行動するようにしましょう。