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【解説】SDGs目標16「平和と公正をすべての人に」とは?解決すべき課題や現状


この記事に該当する目標
16 平和と公正をすべての人に
【解説】SDGs目標16「平和と公正をすべての人に」とは?解決すべき課題や現状

SDGsとは「Sustainable Development Goals」の略で「持続可能な開発目標」を意味します。SDGsには17の大きな目標と169のターゲットがあり、そのうち目標16として掲げられているのが、「平和と公正をすべての人に」です。この目標には、暴力の減少、司法への平等なアクセス、汚職や賄賂の根絶など11のターゲットが設定されています。それぞれを実現するべく世界が動くことで、目標は達成されるでしょう。今回の記事では、目標16の現状と課題、世界で起きている戦争や紛争に関する問題と目標達成のために私達ができることなどを解説します。

SDGs目標16の現状と課題について

目標16は、世界の紛争や戦争をなくし、法のもとで公正な生活ができる平和の実現のために掲げられています。ここでは、世界や日本の現状について、具体的に説明します。

世界の現状

目標16「平和と公正をすべての人に」の現状は、未だに道半ばというのが現実です。例えば、2022年時点で世界を巻き込んで平和を脅かすロシア・ウクライナ危機や1948年の独立時から続くミャンマー内戦などの武力紛争です。武力紛争では、大人から子どもまで多くの人が様々な兵器の犠牲となり命を落とし、命が助かったとしても、家や財産を失い難民として不安定な生活を送ることになります。

国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)によるとロシア・ウクライナ危機では、2022年6月1日時点で700万人近い人が国内避難をしており、460万人が国外に逃れています。ミャンマー紛争でも、2022年4月4日時点で推定90万8000人の避難民が国内にいて、国外に出た難民・庇護希望者の数は推計100万人です。死者も含めれば武力紛争により膨大な数の人々が人生を奪われていることがわかるでしょう。また混乱が支配する状況では、法が無視されることも多々あります。

武力紛争が起きていない地域でも、汚職や賄賂がまかり通っているところはあります。警察や検察が汚職や賄賂を根絶しようと試みても、悪事に手を染める人は後を絶ちません。犯罪についていうならば、犯罪組織の影響力が強い地域も問題です。犯罪組織を取り締まろうにも、報復が予想されるため、警察や検察も迂闊に手を出せません。結果として様々な犯罪が発生し、力のない人々が暴力に脅かされることになります。

目標16のターゲットには、子どもの出生登録に関することもあります。ユニセフが2019年に発行した報告書によると、世界にいる5歳未満の子どものうち4人に1人が出生登録されていないという事実が明らかになっています。出生登録がない子どもは、十分な教育はもちろんのこと、医療や行政サービスも受けられません。大人になるまでに命を落とすことも多く、生きるために犯罪に手を染めたり、人身売買の被害に遭うリスクが高まります。

平和な世界を実現するための課題

目標16が目指す平和な世界を実現するための課題として、相互理解や貧困対策などが挙げられます。相互理解とは、紛争の原因となる国家・民族・宗教などの違いを尊重し、互いに理解し合うることです。相互理解が進めば、無理解が生んだ対立や差別は起きず、自分と異なる者を敵として排除することはなくなります。個々の衝突がなくなれば、大きな武力紛争が起きるきっかけも減り、平和な世界の実現が近づくでしょう。

貧困対策は、暴力や犯罪が起きやすい環境を変えるために必要なことです。貧困でなくなれば、出生登録のない子どもたちもいなくなり、誰もが平等に教育を受けられるようになります。生活が安定し犯罪に手を染める必要がなくなれば、犯罪組織のメンバーになることもなく組織犯罪は減少するでしょう。また貧困を原因とした理不尽な虐待に苦しむ子供がいなくなります。そのようにして、人々の生活を安定させれば、暴力による支配ではなく「法の支配」による社会の実現が可能になります。他にも、貧困を解消することは、利権を求める武力紛争を減らすことにも役立ちます。

日本の現状と課題

日本は世界的に見ても平和な国であり、問題になるようなことはないと思う人もいるでしょう。しかし、現状では解決するべき課題がいくつもあります。まず子どもの虐待というのが大きな課題です。警察庁が発表した2021年の犯罪情勢統計によると、児童相談所に寄せられた児童虐待通告で被害に遭ったとされる18歳未満の子どもは10万8050人です。虐待の内容は直接暴力を振るうこともありますが、多くが家族に暴力をふるう姿を見せる心理的虐待です。その数字からは多くの子どもが、虐待の被害にあっているということがわかります。

他にも政治や行政の腐敗という課題もあります。世界の汚職を監視する国際NGOトランスペアレンシー・インターナショナルによる腐敗認識指数のランキング(2021年)で、日本は18位という結果です。ランキングが上位になるほど清廉であるという意味なので、世界的に見て日本は良い状態と言えるでしょう。しかし、政治家・公務員による汚職・賄賂が皆無というわけではなく、たびたび汚職や賄賂が世間を賑わせます。政治家・公務員による汚職・賄賂を根絶するには、国民一人ひとりが国を変えようと意識をしなければいけないでしょう。

SDGs目標16達成に向けて私たちができること

「平和と公正をすべての人に」を達成するためには、国際的な取り組みも必要ですが、個人で取り組めることも少なからずあります。

世界の現状を学ぶ

個人レベルで何ができるのかを考えるならば、まず世界の現状を知ることから始めなければいけません。世界で起きている武力紛争や犯罪などをテレビ・新聞・ネットのニュースで見ることがあるでしょうが、それだけでは不十分です。国連やNGOなどが発表している報告書などもできる限りアクセスしてみると良いでしょう。

日本語で書かれていないものもありますが、今はパソコンやスマホを利用すれば文章の翻訳も簡単にできます。正確に翻訳できるわけではないとしても、ある程度は内容を知ることができるでしょう。また、統計資料などは、数字やグラフから読み解けることがあるので、そこから世界の現状が見えてきます。自分なりの目標16を達成するための課題が明らかになったならば、あとは解決に向けて自分ができることから始めるだけです。

情報収集をする上で、注意点があります。それはフェイクニュースの存在です。武力紛争では、一方が自らの正当性を主張するために相手に問題があったとフェイクニュースを流すことも珍しくありません。IT技術の発展とともに、衝突は現実世界だけでなくネット世界でも行われることが当たり前となり、このことを「情報戦」と呼びます。世界の現状を学ぶ材料にフェイクニュースが含まれており、その内容を信じてしまえば誤った認識に至るかもしれません。アクセスした情報を無条件に信じるのではなく、まず真偽を確認する必要があるでしょう。

選挙に参加することが平和に繋が

誰もが平等に暮らせる未来を実現したいのであれば、選挙に参加するというのも有効な手段です。日本の投票率は令和3年10月の第49回衆議院総選挙で55.93%、令和元年7月の第25回参議院通常選挙で48.80%です。すなわち、国民の半数近くが、国の代表である政治家を選んでいないということになります。そのような状況では、選挙に行く有権者の意見ばかりが尊重されるので、政策などに偏りが生じてしまいます。また、同じ政治家が長期にわたって当選しやすくなり、権力の集中も起きやすくなるでしょう。その結果として、政治が偏り選挙に行かない人たちの生活が苦しくなったり、格差による国民の分裂が起きたりなどの問題が懸念されます。

これまで政治に無関心であった人が、意識を変えて選挙に行くようになれば、政治家は多様な意見を地方や国の政治に届けるようになるでしょう。また、皆が選挙に行くことで権力の集中を防ぎ、汚職や賄賂で問題となった政治家には票を入れないことで意思を示せます。政治が変われば、法律や制度が変わり行政にも変化が訪れます。公務員もまた腐敗を良しとせず、国民のために仕事をするようになり、弱者が切り捨てられることは減るでしょう。このように選挙に参加することが、平等な政治や行政を実現することになり、差別や対立は解消し平和な世の中を実現することになります。

選挙への参加によって、目標16「平和と公正をすべての人に」の実現を図るということで一つ問題になるのは、一人二人が意識を変えても結果が変わらないことです。日本の有権者は、約1億562万人(2021年10月時点)ということですから、国民の意思を完全に反映させた選挙とするためには、半数の5000万人超が参加しなければならない計算になります。一気に残りの半数の人に参加してもらうのは難しいでしょう。しかし、インターネット投票が可能となるように運動をしたり、選挙に行くときには友人や知人に声をかけたりと地道な活動で意識の改革を試みれば、将来的に投票率の改善は可能です。

SDGs目標16達成のためには積極的に動こう

「平和と公正をすべての人に」は、理想ではありますが現実とはギャップがあり、いつ達成できるのかわからない目標です。しかしながら、最初からできないと諦めて何もしなければ、できたはずのこともできなくなります。提示される課題には、個人レベルの働きかけで改善ができることも少なくありません。必要であれば周りの人に相談しつつ、自分でできることを考えて行動すれば平和な世の中へと一歩近づきます。