世界各地で増える、環境に配慮した音楽フェス
この記事に該当する目標
海や山でのレジャーと共に、夏の風物詩となった野外音楽フェス。みなさんも一度は聞いたことがあるであろう「フジロック」も音楽フェスの一つです。実は今、音楽を楽しむだけではなく、環境にも優しいサステナブルな音楽フェスを開催する取り組みが日本を始め世界中で行われています。
今回は、海外からもクリーンなフェスとして名高いフジロックや、地球に優しい海外のフェスが、どんな取り組みをしているのかをみていきます。
音楽フェスの環境負荷とは
音楽は、聞く人に癒しや活力を与えてくれるものとして、多くの人に楽しまれています。音楽フェスは、そんな音楽好きの夏の醍醐味とも言えます。一方で、環境への配慮はどうでしょうか。実は、自然の中へのゴミの置き去りや、二酸化炭素排出量の増加などが問題となっています。
2019年には、イギリスの人気ロックバンド「コールドプレイ」が、スタッフの長距離移動や演出によるエネルギー消費などの環境負荷を懸念し、ツアーを実施しないと発表しているほど。
Green touring networkによると、1回のコンサートツアーで排出される二酸化炭素のうち、34%が会場から排出されています。その他、宿泊施設から10%、グッズ販売で12%、アーティストの移動で9%、販促活動で2%。また、観客の移動による排出は33%となっています。
国内外の「サステナブルな音楽フェス」
人や物が一挙に集まる場所は良くも悪くも経済や環境に多大な影響を与えます。そして、来場客のマナーや、主催サイドの動線作りで、イベントのあり方が大きく変わります。世界では、環境に配慮した音楽フェスを開催する国や団体が増えています。フェスによっては、家で寝て過ごすよりも、フェスに参加した方が環境の負担が少ないと言われており「そんなことあるの?」と、驚いてしまいますが、統計データを分析すると、実際にエコな循環が見られ、更なるサステナブルな仕組みの導入が進められています。
その事例や取り組みの内容は、どんな物なのでしょうか。
・クリーンなフェスとして評価の高い「フジロックフェスティバル」
世界の重要音楽フェスを格付けする「Festival250」ではフジロックが3位に選出されました。特に、環境への取り組みが高く評価されたとのこと。
その一つとしてあげられるのがOSAHO-(お作法)と呼ばれるマナー向上を目的とした動画です。また、毎年来場者に渡されるゴミ袋は、前年のフジロックで回収された、ペットボトルから作られたもの。そして、複数箇所に設置されたゴミスーテーションでは、ボランティアがサポートするという徹底ぶり。
・ノルウェー「Øyafestivalen(オイヤ)」
アーティストには、電気自動車EVを使って移動することを推奨し、来場者には、自転車や徒歩でくるよう呼びかけています。また、拾ったゴミをお金に変えることのできる「パント」というシステムもあり、子供たちにとっては、大人の捨てたカップなどを拾い換金する、小遣い稼ぎとなっています。
・アイスランド「Secret Solstice(シークレット・ソルスティス)」
世界で最もユニークでサステナブルなフェスとも呼ばれている、シークレットソルスティス。その土地ならではの、マグマなどの地熱発電や水力発電を利用し、ステージ上のギターアンプやターンテーブル、サウンドシステムの電力を補っています。そして、フェス期間中の白夜となっている72時間は、照明もほとんど必要ないほどに明るいと、言われています。
・オランダ「DGTL(デジタル)」
1日ベジタリアン体験ができるフェス、デジタル。音楽フェスが、環境に負荷をかけているポイントを見つけ出し、フードはメニューや容器を改善。2016年からはベジタリアンメニューのみの提供を行っています。現在は、資源や廃棄物、エネルギーや食料など、エネルギーシステムからサステナブルな運営の仕組みを確立する、注目の音楽フェスです。
直近では、2021年にスコットランドにある「SWG3」というイベント会場が、観客の熱気をエネルギーに変換する最先端システム「ボディーヒート」を発表するなど、テクノロジーを活用した面白い取り組みも。今後も音楽業界でのサステナブルな環境対策に注目したい。
企画・編集 / 佐藤
ライター / Saico