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ニッポン放送『SDGs MAGAZINE』 新内眞衣と学ぶSDGs目標7「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」を政策アナリスト・石川和男さんが解説 #後編

ニッポン放送『SDGs MAGAZINE』 新内眞衣と学ぶSDGs目標7「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」を政策アナリスト・石川和男さんが解説 #後編

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  • エネルギーをみんなにそしてクリーンに

新内眞衣さんがパーソナリティを務めるニッポン放送のSDGs 啓発番組 『SDGs MAGAZINE』。7月17日の放送では、目標7「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」をテーマに、エネルギー問題を深掘りした。番組の後半では、ゲストの政策アナリスト・石川和男氏に「エネルギー自給率」や「ロシアによるウクライナ侵攻の影響」について聞いた。

下位にとどまる日本のエネルギー自給率

エネルギー問題を語る上で避けて通れないのが「エネルギー自給率」。資源エネルギー庁が公開している2020年のデータでは、日本の自給率は11.2%。12.1%だった前年の段階でも、OECD(経済協力開発機構)に加盟する38の先進国のうち35位にとどまっており、そこからさらに数字が低下した。 そこから浮き彫りとなるのは、石油・石炭・天然ガス(LNG)など海外から輸入される化石燃料に大きく依存している現状だ。

新内 「この現状について、石川さんの見解は」

石川 「日本列島には、資源が昔はあったんです。石炭もいっぱい採れましたが、掘りつくしてしまった。正確に言うと、密度が薄いものだから、これ以上掘っても金がかかってしようがない。私が旧通産省に入って担当1年生だった時、日本国内の炭鉱は3つ閉鎖されてしまいました」

新内 「炭鉱閉山というと、映画フラガールが思い浮かびます。あの映画を見ていると、本当に泣いてしまいます」

石川 「実際にそういうことがあって、石炭は掘りつくして今はなくなってしまった。他に日本で採れる資源というと水力は結構あるのですが、これもこれ以上は増やせない。あと、自給率にカウントされるものとしては原子力があります。原子力も燃料は輸入なのですが、いったん輸入すると、少ない堆積で莫大なエネルギーを発生するので世界各国、国産エネルギー扱いにしているんです。ただ、番組の前半でも申し上げたように、2011年の東日本大震災で原子力発電所が止まって、もっと自給率が減ってしまった。なかなか、そこから回復していないというのが現状です」

「サハリン2」をめぐる問題

エネルギー自給率の低さは、ロシアによるウクライナ侵攻で、より深刻な問題点としてクローズアップされる結果にもなっている。中でもニュースなどでよく取り上げられるのが、ロシア極東の石油・天然ガス開発事業「サハリン2」の話題だ。サハリン2の現在の運営会社には、三井物産が12.5%、三菱商事が10%を出資しており、長期契約により比較的安価に調達できているが、今後に関してはロシア側の判断次第でもあり不透明。安定調達の懸念や電気・ガス料金の高騰につながる恐れが出てきている。

新内 「まず、『サハリン2』というのはどういったものなのでしょう」

石川 「サハリンというのは、地図で見ると北海道の北の方。石油や天然ガスが豊富に採れるロシア領です。日本から近いので、日本の大手商社がガス田の権利を持っていたりするのですが、3月にロシアのウクライナ侵攻で日本も西側諸国の一員としてアメリカやヨーロッパと歩調を合わせてロシアに対して経済制裁をすることになりました。経済制裁には、いろいろな手段があるのだけど、簡単に言うとロシアのものを買いませんということ。買うとロシアにお金がわたって武器に替わる。日本も、そういう中に参加しているので、ロシアはそういうところに対して『出て行け』となる」

新内 「排除されてしまうということですね」

石川 「そう。ところが、サハリン2というのは日本の大手商社がいくつか入っていて、そこから輸入しているんですよ。天然ガスはオーストラリアやカタールなど、いろいろなところから輸入をしているのだけど、ロシア、つまりサハリンからも輸入していて、大体日本の輸入天然ガスの1割弱くらいはロシア産なんです。1割というと『なんだ、その程度か』と思うかもしれないけど、これが多い」

新内 「そうなんですね」

石川 「日本って経済大国だからエネルギーの使用量が多くて、そのうちの1割だから。そこで意地悪されてしまうと、代わりを探さなくちゃいけなくなる。でも、ロシアは世界各国にそれをやっているわけだから、他の国も日本と同じように探しに行く。そうすると、産出国は値段を上げる。需要の供給の関係でね。だから、日本は高いガスしか買えなくなってしまうので困る」

新内 「他の国というと、どこから輸入しているんですか」

石川 「天然ガスを主に輸入しているのはオーストラリアとカタール。あとは中東諸国。世界中がそっちに殺到しているので、値段が高いならまだ良くて、そもそも物を買えるかどうかというところまで来ているんです」

新内 「物自体がない」

石川 「ロシアは、あれだけ国土が広いので、資源を持っている蓋然性が高い。ロシアはデータを見ると、天然ガスが世界で1位か2位。石油は2位か3位。天然ガスはアメリカと1位を争っていて、石油はサウジアラビアとか中東諸国と争っている。石油と天然ガスの大産出国が『あんたにはやらないよ』と言っているわけだから・・・」

新内 「それは大変ですね」

石川 「だから石油の値段、ガソリン代が上がっているでしょ」

新内 「上がっていますね」

石川 「ガソリンは、その前から上がっているんだけど、今はより一層上がってしまっている」

新内 「円安の影響もあるんですよね」

石川 「円安も、もちろんあります。でも、やっぱりもとをただせば現状はロシア問題が大きいね」

エネルギー問題に果たすSDGsの役割

また、世界全体で見ると、中国やインドなどアジア地域を中心に、経済発展や人口増加に伴い、エネルギー消費量が増加しているという問題もある。エネルギー資源別では、化石燃料(石油・石炭・天然ガス)の消費量が拡大しており、それに伴いCO2排出量も増加している。

新内 「こうした中でSDGsが持つ役割というのはありますか」

石川 「SDGsの一つの理念としてクリーンなエネルギーの使用がある。その根拠の一つとしてCO2をなるべく出さないようにしようという温暖化対策があるので、これを言うと反対する人もいるんだけど、原子力と再生可能エネルギーをもっと導入していくということ。原子力をさらに導入することは難しいので、今止まっている発電所をちゃんと動かす、再生エネルギーはもっと入れていく。そういうことですね」

新内 「でも、原発ってどうしても心情的な問題があると思うんです。そこを、どう皆さんに訴えていけばいいんでしょう」

石川 「日本は、東日本大震災でのあの事故の直後に全ての原発を調べています。全部が安全基準をクリアして安全ではある。ただ、問題は安心かどうか。安全と安心は全然違うんです」

新内 「安全と安心・・・そうか!」

石川 「安全というのは科学的に基準があって、これより上なら安全。安心は心の問題だから、もう政治家が、総理大臣が『大丈夫』と言ってくれないと無理」

新内 「なかなか一回事故が起こっている分、GOを出しにくいんじゃないですか」

石川 「世界的に見ると人類はアメリカと旧ソビエト、土地的には今のウクライナですけど、3つの大きな原発事故を経験して、それを全部クリアして今は世界各国どこも原子力事故は起きていない。だからといって、今後も事故が起きないなんて一言も言いません。起きないように頑張らないといけない。ただ、原子力事故が起こるのと同じように、いろいろな事故が起こるわけです。火力発電所にもトラブルがあるし、太陽光パネルだって火事になればなかなか鎮火しにくいという問題がある。電気以外のことでも、われわれはリスクの中で生きているので、そのリスクを全部が全部危ないと言って委縮してしまったら、何の社会活動も経済活動もできない。そこは、やはり安全基準を定めて・・・」

新内 「技術者の方とかに、しっかり基準をつくっていただいて、次は安心の分野をどうにかしていただきたいということですね」

石川 「これは、もう政治家が言わないと駄目。私はそう思います」

2030年への石川氏の提言~リスクを取るということ

最後に、新内さんからSDGsの目標年である2030年に向けた「提言」を求められた石川氏は、一つの事例を挙げてとくにはリスクを取ることの必要性を口にした。

石川 「2030年というと今から8年後。そこで、どういう世の中になっているか。そういうことを想像して、結構楽しいことを考えたりします。例えば、ドローンってあるじゃないですか。あれが、もっともっと流行って、技術が進んで、ドローンタクシー、空飛ぶタクシーができていると便利になるかな、とか。日本って人流とか物流の陸路はすごく発達していて、海路もそれなりに発達しているんだけど、空路はほとんどない。大きな飛行機はあるんだけど、ちょっとそこまで行こうかというときに、タクシーだと渋滞しているじゃないですか。これを、もしドローンタクシーでいったらヒュッと行けちゃうよ、と」

新内 「渋滞を減らせれば、石油を使う場面も減ってくる」

石川 「その手段が空輸なんです。でも、電気は使うので電気の安定供給はいずれにしても大事」

新内 「なるほど。ちなみに今、ドバイや中国ではドローンタクシーの研究開発が進んでいるらしいですね」

石川 「ああいう国はチャレンジングなので、そういうものに投資をしている。日本って、そういう海外の事例を見て3番目か4番目か5番目くらいに、何となく安全なようだから入れようかみたいな発想をする国なんですよ。昔、フランス大使館の大使と話していたら、言われたのよ。『俺たちは、世界で最初に何でもやる。日本はどうですか』と。僕は『日本は世界で一番最後にやるんです』と返した。『リスクを取りたくないから』と。それを言ったら、向こうはきょとんとしていたね。こっちからしたら、何でもかんでも最初にやろうとすることに、きょとんとするんだけど。どっちが良いかは人それぞれの判断。でも、僕は最後は嫌だね。最初にやりたいね、何かを」

新内 「そうした人が、もっともっと増えると」

石川 「日本も、もっと面白くなる」

新内 「そうですね。今日はたくさんのお話ありがとうございました」

石川 「ありがとうございました」

日本のエネルギー問題の最前線で活躍してきた石川氏の言葉には説得力があり、その忖度のない明快な主張に、新内さんは「すごく勢いがあって、しかも分かりやすい。楽しい時間でした。本当に、ハッキリとおっしゃってくれるので、確かにそういう考えもあるなと、たくさん参考になりました」と、さまざまなことを考えるきっかけを得た様子だった。さらに、今回の放送を通じて「今回は目標7について掘り下げてきましたが、エネルギーは有限のものなのだと改めて感じ、世界にあるエネルギーもいつなくなるかなんて分からないので、今ある資源をより長く使えるよう、私たちも工夫していかなくちゃいけないなと思います」と、改めてエネルギー問題を身近なこととして捉えていくことを誓った。

【次回放送は8月14日午後7時】

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