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省エネ法がなくなる?普及促進が急務な再エネの救世主「洋上風力発電」とは

省エネ法がなくなる?普及促進が急務な再エネの救世主「洋上風力発電」とは

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「限りある資源を大切に」と叫ばれて久しく、今世界中が脱炭素社会を目指して再生可能エネルギーの導入を進めています。その中でも、太陽光発電や地熱発電と比べて、安定性の高い再生可能エネルギーとして注目度されているのが「風力発電」です。

今回は、エネルギー問題が他人事ではないと認知されてきた今こそ押さえておきたい、日本の風力発電の現状と、新たな風力発電の形として注目を集めている「洋上風力発電」についてご紹介します。

世界における「エネルギー資源」の現状とは?

2015年のCOP21でパリ協定が採択されてから、エネルギー資源には限りがあると多くの人が認識するようになりました。しかし、現状のままエネルギーの消費を続けた場合、あと何年資源がもつのかは知らない人が多いかもしれません。

実のところ、天然ガスはあと49年、石油は54年、ウランが115年、石炭が139年ほどしかもたないと考えられています。石油や天然ガスについては、自分の大切な子どもや孫が生きる時代を脅かすほど、ごく近い将来に枯渇すると予測されているのです。

日本における「風力発電」の現状とは?

この危機から脱却すべく、再生可能エネルギーへの移行が進められていますが、中でも安定性の高い再生可能エネルギーとして注目されているのが「風力発電」。しかし、日本は世界と比べて風力発電量が少ないのが実情です。

NEDO(国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構)によると、2017年12月末における世界の風力発電の国別導入量は下記のとおりです。

1位 中国188,392MW(34.9%)
2位 アメリカ89,077MW(16.5%)
3位 ドイツ56,132MW(10.4%)
4位 インド32,848MW(6.1%)
5位 スペイン23,170MW(4.3%)

日本は3,400MW*(0.6%)で19位でした。
* 日本の導入量3,400MWは、GWEC Global Wind2017 Reportに記載の2017年12月末までの実績であるため、NEDOが集計した2017年度実績3,503MWとは異なっています。

JWPA(日本風力発電協会)によると、日本に導入された洋上風車は累計28基(58.6MW)で、過去最大の値を記録しているものの、風力発電の導入量は世界19位と遅れを取っているのです。

日本で風力発電の普及が進んでいない理由

日本の風力発電の普及を阻んでいるものとして、主に3つの原因があります。

1.適した土地が少ない

限られた国土に、風力発電基を設置するのは困難なもの。風車の設置には広大な土地面積が必要であるのはもちろん、設置場所は安定した風が吹く地域に限られます。風力発電の条件に当てはまる土地が少ないのが、1つの原因です。

2.導入費用が高い

発電のコストには、建設費や固定資産税などの「資本費」、人件費や修繕費などの「運転維持費」、化石燃料の価格や核燃料サイクルの費用などの「燃料費」、CO2対策費や事故リスク対応費用 などの「社会的費用」、原子力発電 の立地地域への交付金などの「政策経費」などがあります。
風力発電は、他の太陽光発電や火力発電、原子力発電と比べてコストが高いのが現状。再生エネルギーの主力として注目されているものの、2030年の試算でも、まだまだ太陽光発電などよりコスト高だと見込まれています。

3.騒音問題と天候による稼働停止の懸念

風車を回して電力を生み出す風力発電。広大な土地が必要であるとともに、近隣の住民から騒音への理解を得なければならないことも、拡大を難しくする要因と言えます。
また、悪天候や災害などによる故障や稼働停止といったリスクも、風力発電普及のハードルを上げている理由でしょう。

普及を阻む原因が立ちはだかる風力発電ですが、世界のスタンダードとなりつつある「洋上風力発電」に解決策を見出せるのではと、期待が高まっています。

世界ではスタンダード!? 洋上風力発電とは

洋上風力発電とは、海洋上に風力発電機を設置して稼働させるというものです。陸上と同様、風車を回転させることで電力を生み出します。洋上であることにより、次のようなメリットがあります。

1.安定した電力共有が可能

洋上では持続的に大きな風力を得られるため、安定した電力供給が可能になります。陸上より効率よく発電できると期待されます。

2.設置場所の確保がしやすい

陸上の風力発電では設置する地域の選定が普及のハードルとなっていましたが、洋上発電は騒音による影響や万が一の人的被害リスクが低く、設置場所の確保がしやすいのが魅力です。

こうしたメリットがある一方で、課題もあります。海域使用ルールに従いながら、漁業関係者や船舶運航事業者など、海域を先行的に利用している人々との利害調整が不可欠になることです。「再エネ海域利用法」など法整備は進んでいるので、これからの展開に期待です。
しかしながら、設置コストは陸上と変わらず高いのが問題。風力で発電した電気を電力会社が一定価格で一定期間買い取ることを国が約束する制度・固定価格買取制度(FIT制度)により、高額な資本金の回収をいち早く見込めれば、導入の後押しになることでしょう。

日本初!海に浮かぶ発電所「エネルギーの島」五島列島での成功例

長崎県西部、152の島が連なる五島列島。その中に位置する五島市は、11の有人島と52の無人島で成り立っている町です。その地域性を活かし、潮流発電、バイオマス発電、太陽光発電などによる再生可能エネルギーの取り組みが盛んに行われています。
「エネルギーの島」を目指す五島市は、日本における洋上風力発電のパイオニア。日本の中ではかなり早い段階で洋上風力発電の実証実験を開始し、2016年には浮体式の洋上風力発電で日本初の商用運転をスタート。海に浮かぶ発電所として、話題になっています。

漁業への影響が懸念されている洋上風力発電ですが、五島市での実証実験では、浮体の表面に付着した海藻が小さい魚を呼び、それを追ってさらに大きな魚が集まるなど、プラス面も多くみられたそうです。
2019年には、再エネ海域利用法に基づく促進区域に選定された五島市。浮体式洋上風力発電のさらなる設置計画も進行しているようです。今後も日本の洋上風力発電と再生可能エネルギーの普及を牽引していく街から、目が離せません。

五島市の取り組みは、日本の未来のエネルギー問題解決のロールモデルの1つ。日本の地の利を活かした「洋上風力発電」。さらなる広がりを期待したいですね。

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