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新内眞衣とSDGsを学ぶニッポン放送「SDGs MAGAZINE」目標5「ジェンダー平等を実現しよう」を長野智子さんが解説 #前編

新内眞衣とSDGsを学ぶニッポン放送「SDGs MAGAZINE」目標5「ジェンダー平等を実現しよう」を長野智子さんが解説 #前編

#RADIO
  • ジェンダー平等を実現しよう

新内眞衣さんがパーソナリティを務めるSDGsを楽しく、分かりやすく学べるニッポン放送のラジオ番組『SDGs MAGAZINE』。11月13日放送回のテーマは目標5「ジェンダー平等を実現しよう」。キャスター・ジャーナリストとしてグローバルに活躍する長野智子さんをゲストに迎え、日本の現状や課題について学んだ。

目標5は、誰もが平等に教育や就業などの機会を得て、個々の能力を発揮できる社会の実現を掲げたもの。 性別を理由にキャリアや教育の機会が絶たれる人がいる現状を踏まえ、「まだ、私がパーソナリティになってからしっかりとは触れていない目標で、実は日本はこの目標の達成度がとても低いとのことなんですが・・・」と切り出した新内さんは、世界で「ジェンダー平等」が叫ばれている理由の核心に迫るべく、キャスター・ジャーナリストの長野智子さんをスタジオに招いた。

新内 「よろしくお願いします。はじめまして・・・ですね」

長野 「そうですね。よろしくお願いします」

新内 「もともとはフジテレビのアナウンサーをやられていた」

長野 「はい、もう大昔ですが・・・」

新内 「いえいえ、今日はありがとうございます」

【長野智子さん・プロフィール】
米ニュージャージー州生まれ。
1985年、上智大学外国語学部英語学科卒業後、アナウンサーとしてフジテレビに入社。95年より渡米し、ニューヨーク大学・大学院において人間や歴史に対して及ぼすメディアの影響について研究。現在は自らも国内外の現場へ取材に出るかたわら、2019年からは国連UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)協会報道ディレクターも務める。

新内 「今回のメインテーマとして扱うのが目標5『ジェンダー平等を実現しよう』。今、日本でもさまざまな場面で『男女平等』『男性らしさ、女性らしさ』だとか『育休が』とか『LGBTQ+が』といったことが話題になっていますが、『そこを話すには、まず本質を知らないと・・・』ということで、改めてその部分をお伺いしたいのですが、そもそもこの目標5はどんなことを言っているのでしょうか」

長野 「もともと目標5は全ての女性、女の子が能力を最大限に発揮できる社会をつくりましょうということを掲げたものです。全ての人が性別にかかわらず平等に機会が与えられる社会をつくりましょうということなんです。何でこういうことが目標5に入っているのかというと・・・まず、この世界中で学校に行けない女の子がどれくらいいると思いますか」

新内 「えっ!」

長野 「日本では、必ずみんな行くじゃないですか」

新内 「義務教育の中に入っていますからね」

長野 「そう。でも、世界では行けない女の子が多くいる。どれくらいか、勘で良いので言ってみてください」

新内 「100万人くらいですか」

長野 「およそ1億3200万人です。ちょうど先週、バングラデシュにあるロヒンギャ難民のキャンプにUNHCRの仕事で行ってきたのですが、そこの全員が学校に行けないし、アフガニスタンも宗教的な理由で女の子が学校に行きづらい。世界中に、女の子というだけで学校に行けない子たちがたくさんいる。なので、まずそこからよね、ということです。全ての女の子が学校に行けて、平等な権利を持って生きられる社会にしましょうという概念から、このSDGsが始まっているんです」

世界には女性であるというだけで教育を受けられなかったり、10代で望まない結婚や出産をさせられたりするなど、さまざまな慣習による差別を受ける人がいる現状があるという。

新内 「女の子が学校に行きづらいということは、男性は行けるんですか」

長野 「男性は行けることが多いですね。難民の状況にもよるし、宗教にもよるのですが、女の子は家のお手伝いをしたり、小学生の年齢から学校に行けずに家事をやったりしている。学校で勉強をしていないと、大きくなってから数字も分からないし、字も読めないということになり、まず仕事に就けず、社会で取り残されてしまいます。勉強をする機会がないまま子供を産むことによって、健康のことを何も分からず赤ちゃんを死なせてしまったり、自分も病気になってしまったり、いろいろと大変なことが起きてしまっています。女だからとか男だからとか、生まれつきの属性、LGBTQもそうだけれど、それで権利がいろいろと影響されてしまうというのは良くない。それがない社会にしていきましょうというのが目標5の考え方なんです」

新内 「そうした問題はどういう理由から生まれるものなのでしょう」

長野 「それは国にもよるのですが、例えば日本はどうなのだろうと思った時に、これはちょっと難しい問題になるのですが、戦後に自民党政権がすごく長く続いた中での女性認識に大きな原因があります。自民党政権が戦略として福祉の費用を削減しようとなった時(1970年代)に、女性を『家庭長』という役割に据えて、福祉、家のこと、介護、子育て全部を女性に預けることで国費を削減する政策を戦略的に取ったんです。これはキャスターの安藤優子さんが本にも書いて研究されていることなのですが、その方法を取ったがゆえにそうした女性認識が定着して、日本の社会に『女は家』『男は外で仕事』みたいな文化、潜在的な意識が醸成されていってしまい、社会の仕組みに繋がったといわれています」

新内 「歴史の中で根付いてしまったんですね」

長野 「そうです。やっぱり戦略的に政治がそうした立場を取ったというのがポイントだと思うんです。無意識に、そういう考え方になっているように思いませんか」

新内 「そうですね。イメージはあるかもしれないですね」

長野 「時代が昭和の高度経済成長期、戦後の荒れ野原からガンガンと力技で成長していくような時期には、『男性が24時間働きます』みたいな考え方で良かったかもしれません。でも、今や時代が変わっています。価値観が多様化して、人口減少で女性も労働力として期待されるというふうに、いろいろなところに目配りしないといけない時代に、男性だけの政治でそこまで目配りするのは難しいよねというふうに変わってきた。だからこそ、日本でもこういうことが話題になってきているんじゃないかなと思います」

ここで、新内さんが気になったのが『ジェンダー平等』が達成されないことで、どのような問題が起こるのかということ。長野さんは、女性議員の少なさが、女性に向けた政策の優先度の低さに繋がっていることを説明する。

長野 「時代が変わって『女性活躍』なんていう言葉を政治家たちが言い出しているけれど、超党派7党の女性議員さんと勉強会で、何で国会議員に女性が増えた方が良いのかという話しをした中でよく聞くのは、女性を取り巻くこと、健康や生理の貧困(経済的な理由などから生理用品を十分に入手できない状態にあることを指す言葉)、働き方など、女性にまつわる問題を政策で持ってくるのは女性議員だけということ。男性議員に悪気はないんですよ。ただ、分からないし、関心がないし、そこまで目が向かない。一方で、男性特有の病気とかは、すぐに政策に反映されるんです」

新内 「そうなんですね」

長野 「女性議員は、やっぱり女性のことを分かっています。子宮頸がんのワクチンとかでも、そう。女性議員しか気付けないことがあるのなら、そういう人を増やしていった方が、女性の働く環境も改善されていくし、もっと政策に反映されていくと思うんです。そういった意味で、女性が少ないとなかなか難しい面があります」

日本の現状・課題について聞いてきた新内さんは「世界ではどのような対策が取られていたりするんでしょう」と質問。そこで、長野さんが挙げたのが格差是正のためマイノリティに割り当てを行う制度「クォータ制」の考え方だ。「クォータ(Quota)」とは「割り当て」を意味する英語で、「クォータ制」は例えば議員や会社役員に一定数の女性を確保したい際などに、あらかじめ割り当てを行う取り組みを指す。発祥の地として知られるノルウェーでは、法制化によって一般企業にも「クォータ制」が浸透。女性の社会進出が大きく進んだことで知られる。

長野 「各国で、いろいろな形のクォータ制を導入しています。駐日ノルウェー大使館公使参事官のリーネ・アウネさんとシンポジウムでご一緒していろいろとお話を聞きましたが、ノルウェーでは1970年代という早い時期から政治でクォータ制を導入していたのだけれど、会社や経済では全然進まず、女性の役員や幹部が育たないという状況にあったそうです。このままだと200年経っても男女平等にならないと政治側から強い介入があり、条件を満たさない企業は解散や上場廃止など厳しい罰則を決めて経済界でもクォータ制を進めているんです」

一方、日本でも経団連が2030年までに30%という目標を掲げているものの具体的な罰則はなく、なかなか進まないのが現状だ。

長野 「世界120以上の国や地域でクォータ制の導入が進んでいて、意思決定機関に女性を増やしていこうという流れになっています。OECD(経済開発協力機構)に加盟する38カ国でクォータ制を取り入れていないのは4カ国だけ。ただ、その一つが日本なんです。世界でも取り入れていない国って少ない。なかなか珍しい国に私たちは住んでいるということです」

新内 「取り入れるきっかけがないまま、今まで来てしまったんですか」

長野 「取り入れましょうと、たくさんの女性の国会議員が働いたり、政策をまとめようとしたり、大学教授や専門家の方がやりましょうと言っているのに、まあまあ分厚い壁があってそこにいけないんです」

新内 「そうなんですね。日本には、どれくらい女性議員の方がいらっしゃるんですか」

長野 「参議院はかなり進んできて25%くらいになっているんですけど、問題なのは衆議院。9割が男性なんです。女性議員の割合が1割を切っているんです。これは、かなり何とかした方が良いかなという状況ですね」

新内 「それは、立候補する方が少なかったり、ということが原因にあるのですか」

長野 「いい質問ですね。立候補したい方が立候補できない状況になってしまっているのが一つの原因にあります。日本の衆議院って小選挙区制度を敷いていて、これが女性を増やすクォータ制と全くマッチングしないシステムなんです」

新内 「そうなんですね」

長野 「1選挙区に1人の当選者となってしまうと、何年もそこに居座っていらっしゃる“おじさん議員”とかがいて、なかなか新しく女性が参入する、候補で出るのは難しいんです。それもあって、衆議院にクォータ制を導入するには選挙制度と抱き合わせで変えていかなくては難しいとよく言われています。障害のある方とか、いろいろな方が政治に参加しやすくなるんじゃないかというのが、今の日本でクォータ制を導入しましょうという主張の背景になっているんです」

目標5「ジェンダー平等を実現しよう」について掘り下げた今回の放送を振り返り、新内さんは「本当にたくさんのお話を伺って非常に勉強になりました。今まで、あまり触れてきていなかった分野なので、その一歩を踏み出せたことがすごくありがたかったですし、自分で興味を持って調べるということが大事なんだなと思いました」と、新たな気付きを得た様子。「今回初めて触れたことも多く、自分がいかに無知だったか、未熟だったかというのを知ることができたので、これからもニュースに注視していきたいなと思います。これを聞いてくださっている皆さんの中でも、そういう方が増えたらいいなと思っています」と続けた。

まだまだ、さまざまな問題を抱える今回のテーマ。次回も引き続き長野さんをゲストに招き、らに深く掘り下げていく。

(後編に続く)

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