制服の「おさがり」嫌な子供は何割?続く物価高で家計の助けにも
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寒かった冬が終わり、春の陽気がやってきました。新しい生活が始まった方も多いのではないでしょうか。
その中でも我が子の入園・入学は、一生に一度の大きなイベントですよね。親も子ども自身も期待や不安が交差する中で、式を迎える前の準備に大忙し。学校や保育園、幼稚園などに通うために必要な物をそろえると思いますが、その費用はなかなかの出費。制服や教科書、入学してからも給食費や修学旅行の積立など様々なところでお金がかかりますよね。
そんな中、日本には「おさがり」という文化があります。新入生になったのに誰かのおさがりの制服なんて…と感じる方もいると思いますが、実はSDGsにも深い関係が。
今回は、日本でおさがりの文化がどのように発展しているかをお伝えしたいと思います。
根強く残る「おさがり」の文化
兄弟や姉妹がいたり、大きなマンションで育った方なら、必ず一度は聞いたことがあるであろう「おさがり」という言葉。昔は物は使えなくなるまで使うべきということが日本の常識だったため、親族間や親しい家族同士であればおさがりを着たり使ったりすることが普通でした。今でもフリーマーケットや古着屋が発展していることでもよくわかると思います。学校の制服も同じように、おさがりを譲ってもらったり、譲ったりする地域も少なくありません。
2018年に文部科学省が実施した調査によると、1年間の学校教育費は公立小学校で6万3,102円、公立中学校になると13万8,961円かかるとの統計が出ています。
公立中学校ではその18.3%が学用品や実習で使う材料費、21.1%は模擬テストなどを受けるための教科外活動費となっており、中でも一番高い出費となっているのが制服や通学バッグに使う通学関係費で、27.1%の割合を占めていることが分かりました。
この統計を見ると、おさがりをもらったら家計が助かることも納得です。
しかし、親や本人にとっても入園・入学は一生に一度のこと。子どもに「新品の制服がいい!」と言われてしまったら、親としては買ってあげたくなります。
では、なぜおさがりは嫌なのでしょうか?
おさがりは格好悪いこと?
2023年2月に学生服の製作と販売をする菅公学生服株式会社が実施したアンケートで、学生服のリユースについて全国の中学・高校生1400人に調査を行ったところ、なんと8割を超える人から「とても良い」や「まあ良い」と回答がありました。しかし、「自分が実際にリユースの学生服を利用したいと思うか」というアンケートでは、「利用したい」や「どちらかと言えば利用したい」と答えた人は約5割にまで減少しました。
理由としては「少し気持ちが悪い」や「一生に一度だから新しい制服を着たい」という回答が挙げられました。
新品の制服と比べると少しよれていたり、採寸をしていないので自分の身体に合っていなかったりすることが、子どもながらにも恥ずかしい気持ちがあることも、よく分かります。
制服が特別なものであることは変わりありませんが、新しい制服を買う費用を抑えることで、その他の体験や経験を積むための支出といった未来の自分たちへの投資につながったり、リユースの促進となることで結果的にはごみの削減や資源の消費、二酸化炭素の排出が抑えられたりと、SDGsの達成にもつながっていくということも事実です。
リユース用品を集めて宝探し
そんなおさがりですが、実は近年全国各地で盛り上がりを見せているイベントがあります。
長野県では、「リサイクルプラザ」と呼ばれる”おさがり交換会”が開かれ、2月のイベントでは子育て世代で行列ができるほどの人気でした。小さな子どもは成長が早く、洋服を買ってもそれほど着ないでサイズが合わなくなってしまうこともしばしばあります。リサイクルプラザは、そんな子ども服や育児用品を持ち込み、持ち込んだ分だけ無料で他の人が持ち込んだものと交換ができるイベント。多くのリユース品が集まるので、その中から自分の欲しい物を探すことが宝探しのようで楽しいと評判です。
また、制服のおさがりを届けたり譲り受けることができる「osagari」というアプリも注目を集めました。考案したのは種子島に住む女子高校生2人。元々横の繋がりの深い地元の学生は、先輩からおさがりの制服譲ってもらうことが多いようです。しかし、留学生も多い種子島では、そういった繋がりがない学生もいます。そんな学生たちに向けたアプリの制作の高校生自らが行い、アプリ制作のためのクラウドファンディングを成功させました。
おさがりという文化があることで誰かと繋がったり、タンスに眠っているままのまだ使える洋服が、自分ではない誰かによって輝きます。お財布に優しいのはもちろん、環境やリサイクルされる”もの”自体にも優しいおさがり。
ものを大切に使うことについて、ぜひこの機会に考えてみてはいかがでしょうか。