世間に謝るってどういうこと?実は日本特有だった“ご報告文化”
ニュースを見ると比較的頻繁に目にする「謝罪会見」。企業としては謝罪会見を開かないにこしたことはありませんが、何か不祥事や予期せぬ事態が起きた際には謝罪会見という場は重要であるという意見がある一方で、週刊誌の不倫スクープを受けて世間に謝るための謝罪会見を開いて謝罪をするシーンを見たことがある人は多いでしょう、しかしこれは本当に必要なことなのでしょうか?実はアメリカでは謝罪会見というものはほとんどなく、文化の違いがあるにせよ世界からみると被害者本人ではなく社会に対して謝罪をするという日本の「ご報告文化」は珍しいものとされています。
ペンギン池事件、あえて世間に謝罪をしない選択とは
2023年3月24日に放送された日本テレビ「スッキリ」での生中継において、動物の安全を危ぶむ度を超えた演出があったと動物園が抗議を発表しました。「ペンギン池事件」とも言われている上記の一連の騒動について目にした人も多い中、放送倫理・番組向上機構(BPO)でも2023年3月にBPOに寄せられた意見が先月から121件増加したことを発表し、意見の中には本件に関して視聴者からの厳しい声も多数。
一連の騒動が3月24日に生放送で行われた後、同日に那須どうぶつ王国がSNS上でお知らせという形で声明を発表。週が明けた3月27日にMCを務める加藤浩次氏が番組冒頭コメントで謝罪、その後日本テレビ定例記者会見で石澤顕代表取締役社長が謝罪しました。その後、4月4日に那須どつぶつ王国は公式サイトで、3月27日の番組ならびに謝罪会見での謝罪を行うまでの間に、池に飛び込んだオードリーの春日俊彰氏と、番組制作責任者が謝罪のために来園し、直接謝罪を受けた旨の文書を公開しました。
この一連の騒動で特に注目されたのが、生放送時にリポートをしていた春日氏の行動でした。騒動の2日後のラジオ出演で本件には触れず、一時はだんまりと批判の声もありました。実際にはその空白期間、直接動物園に謝罪を行い、表立って謝罪コメントを発表せず沈黙を貫いていた。あってはならない事件であることに変わりはありませんが、あえて世間に謝罪をしないというスタイルに、SNSでは称賛の声が多く上がりました。
また、スープストックトーキョーが4月25日に開始した「離乳食後期の全店無料提供」の取り組みに対して心無い反応が立て続きました。翌日に発表した声明も、ペンギン池事件の春日氏同様、あえて謝罪という言葉を使わずに真摯にブランド理念を伝える姿勢に、「100点満点の回答」「揺るぎなくも柔らかな言葉選び」「間違ったことはしていない、という明確なスタンスが分かる」など評価の声でTwitterトレンドが埋まるほどの結果になりました。
ジェンダーバイアスが問題視されたメディア報道
SDGsという切り口で考えてみると、メディアがやるべきことは山積みです。その一つとして世界的指標ともいえるのが、世界中の報道機関とエンターテインメント企業に対し、SDGs達成に向けた協力推進の枠組みとして作られた「SDGメディア・コンパクト」。2018年9月に国連によって立ち上げられたこの取り組みは、主要な報道機関に対してゴール達成に向けた参画の拡大への協力を呼びかけています。
既に、産業新聞社や文化放送、読売テレビなどの日本の大手メディアが参加しており、2020年1月に国内11社目として参加報道機関となった講談社では、日本で初めてSDGsに全面的に取り組んだ女性誌として注目を集め、メディアを通じてサステナブルな社会の実現に向けて寄与していくことを明言しています。
まずは世間へ謝るというパターン化した日本の謝罪文化。また、会見では本題とは関係ないような質問が飛ぶ状況がまだ根強く残っている中で、世間に伝えるべき内容が希薄に報じられているといっても過言ではありません。一視聴者や読者である筆者としても、謝られるべきなのが本当は誰なのか、当事者でもないのに、便乗して怒ってしまってないか等、自身の心を省みながら課題と向き合っていきます。