先進国で最下位!?日本の「相対的貧困率」への課題とは?
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2023年7月4日、厚生労働省から「国民生活基礎調査」の最新値が公表されました。
この国民生活基礎調査とは、年齢層や家族構成など日本国民の生活実態を調査し統計したもので昭和61年から毎年実施されています。(3年に一度、大規模な調査を実施し、間の各年は簡易な調査を実施。)保健・医療・福祉・年金・所得等国民生活について世帯面から総合的に統計されており、日本の現状を把握するために重要な調査とされています。
今年7月に公表された最新の調査は2022年6月に実施されたものとなります。今回は、国民生活基礎調査の結果から見えるコロナ後の現在の日本の状況について考えていきましょう。
相対的貧困率とは?
そもそも貧困には様々な定義がありますが、大きく分類すると「相対的貧困」と「絶対的貧困」の2つに分けられ、医療を受けられない人や食べるものが手に入らず飢餓に苦しむ人など、生命を維持することが困難なことを絶対的貧困と定義付けられています。
一方で、聞きなじみのない人も多いかと思いますが、相対的貧困とは「その国の水準と比較して貧しい状態」を指しています。
そして、世帯の所得が「等価可処分所得」の中央値の半分に満たない状態となっている世帯員の割合が、一般的に「相対的貧困率」とされています。
この「等価可処分所得」とは、家計収入から税金などの非消費支出を差し引いた所得から世帯を構成する人数を元に算出されるもので、最新の「国民生活基礎調査」によると2021年時点での日本の相対的貧困層のラインは127万円とされており、日本の相対的貧困率は15.4%であることが分かりました。
厚生労働省より(https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa22/dl/03.pdf)
これはおよそ6.5人に1人が相対的に貧困状態であることになり、例えば子どもたちがアルバイトをしなければ生活費が足りない、金銭の問題で教育が受けられないなどが例に挙げられます。
先進国最悪の相対的貧困率
日本は、数値で見れば2018年の貧困率からは0.3ポイント改善していますが、一方で諸外国と比較をすると、アメリカ合衆国(15.1%)、大韓民国(15.3%)にも抜かれ、先進国の中で最も高い数値となっていることが分かります。
一方で、日本と同じく貧困率が高い数値の韓国では扶養義務者基準を段階的に緩和したことで「国民基礎生活保障制度」を受給者数が増加し、コロナ後に景気が回復すると共に貧困率も徐々に回復し続けています。ニッセイ基礎研究所より(https://www.nli-research.co.jp/report/detail/id=71675?site=nli)
日本よりも貧困率が高い国は、貧困率が人口の約半分に上昇したメキシコをはじめ、イスラエルやコスタリカなどが挙げられていますが、世界第3位の経済大国と言われている日本が先進国の中で最も高い数値であることは今後の課題として解決しなければならない問題です。
高齢者の一人暮らしへの課題も
日本では貧困率に関して他にも大きな問題を抱えています。
65歳以上の「高齢者世帯」が1693万1000世帯、全世帯の31.2%まで上昇し、数・比率と共に過去最多の数値を更新しました。
また、高齢者の1人暮らしは873万世帯と同じく過去最多の数値となり、高齢者世帯のうち51.6%を占めています。厚生労働省より(https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa22/dl/02.pdf)
高齢者世帯の平均所得も2020年と比べると大きく下がり、生活意識も48.3%が「生活が苦しい」と回答していることから、高齢者の生活はどんどん苦しくなっている現状が問題視されています。
また、高齢者世帯の相対的貧困率が中央値を大きく上回っていることから、現状だと高齢になればなるほど、格差が拡大してしまうということになります。
日本で暮らしている私たちにとって、相対貧困率が高いと聞くと疑問を持つ方も多いとは思いますが、SDGsの目標「1.貧困をなくそう」にも掲げられているように、「すべての人が平等に生活に欠かせない基礎的サービスを使え、土地や財産の所有や利用ができ、新しい技術や金融サービスなどを使えるようにする。」ことを達成するためには、まず現状を理解することがとても重要なことではないでしょうか。
貧困率に関しては改善の傾向や見込みがある数値もある一方で、細分化して見てみるとまだまだ格差が広がりを見せているのも現状です。
このような国が行う大きな調査の結果を紐解くことで、現在の日本の姿を冷静にかつ客観的に見つめ直すことができますね。