世界初!話題の“あたらない牡蠣”から考えるサステナブル・シーフード
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海のミルクとも呼ばれ、栄養も豊富な牡蠣。人気なシーフードですが、食あたりが心配だという人もいます。しかし、そんな不安を解決する嬉しいニュースが。今月、テレビで話題になり株価も急上昇中のゼネラルオイスターが、世界で初めて食あたりしない陸上養殖牡蠣の開発に成功したのです。今回は、持続可能な陸上養殖、海上養殖のあり方、そして私たちが美味しく海産物と共存するために知っておくべきポイントについて考えます。
あたらない牡蠣、陸上養殖の何がすごいの?
今回、ゼネラルオイスターのグループ会社ジーオー・ファームが開発した完全陸上養殖は、「あたらない牡蠣」を実現。安全性・清浄性の高い海洋深層水を活用することで、牡蠣が育っていく過程で食あたりの原因となるノロウイルスが存在しない環境を作りました。この方法で養殖された牡蠣は、安全面だけでなく、甘みも強く、タウリンやプロリンなどの栄養価も高いと評価されています。生産の過程を示すトレーサビリティや環境負荷の軽減といった面でも陸上養殖は注目を集めており、日本各地で積極的に推し進められている漁業です。このように陸上養殖の進化が加速していますが、一方、海上養殖では、どのような課題があるのでしょうか。
海を守るためのさかなの選び方、海上養殖牡蠣の課題は?
年々、海産物の消費量が増えていく中で、安定した供給を行うために養殖業も盛んになってきました。これに伴って様々な環境問題や社会問題も発生してきています。その中でも海上養殖は、自然環境にやさしい養殖のひとつですが、牡蠣も生き物である以上、排泄物を出します。ロープや籠で海に吊り下げて育てる養殖方法が一般的ですが、内湾などでたくさんの養殖施設を作ると、海底が排泄物によって汚染されるだけでなく、餌や酸素が十分に行き届かず成長不良に。したがって過密養殖を避けることが環境配慮へのカギになってきます。
こうした課題がある中で、東日本大震災で被害を受けた宮城県南三陸町戸倉地区の牡蠣養殖場は、津波で養殖施設のすべてを失いながらも見事に再興しました。さらに震災前に戻すだけではなく、海と共存するための復興を実現しています。過密養殖をやめ、試行錯誤の末に日本で初となるASC認証が、被災地の海から誕生しました。環境と社会に配慮した責任ある養殖業の普及を目指す非営利団体ASCは、国際的な視点から環境への負荷を軽減しつつ、公正な労働条件と地域活性化に協力する養殖業のサポートに努めています。
国際的な環境保全団体WWFは、海に優しいシーフードを選ぼうという目的で、シーフードガイドを公開しています。ここでは、5段階のサスティナビリティ評価もしており、国内の代表的なものでは、ホタテガイの垂下養殖が高い評価を獲得しました。
海のエコラベルMSCって?知っておきたいマーク一覧
WWFからサステナブル・シーフードの指標が出ているものの、実際に私たちが店頭でシーフードを選ぶときには何を基準にしたらいいのでしょうか。
天然水産物に付けられるMSCラベル
MSC認証の水産物は、環境やほかの海の生物に配慮して適切な漁業で捕られたものです。加工、流通、販売まで、認証を受けていない水産物と混ざらないように厳しく管理され、MSCラベル付きの製品として消費者が手にすることができます。
養殖水産物に付けられるASCラベル
ASCラベルは、海の環境や働く人の人権、地域との関係をきちんと保って養殖されたことを示すラベルです。MSCラベルと同じく認証を受けていないものとは混ざらないように厳しく管理されています。
これらのラベルで一番身近なところで言うと、マクドナルドでもMSCマークを見ることができます。サステナブルな漁業が行われていることが証明されたアメリカ・ロシア産のスケソウダラを使用しているフィレオフィッシュ。このパッケージにMSCマークが付けられているのですが、意外と気づかない人もいるのではないでしょうか。今後、ベルマークやエコマークのように当たり前に認知されていくために、まずはラベルの存在を知ってもらおうということで、2018年に海洋管理協議会のMSCアンバサダーに、芸能界随一のお魚好きココリコ田中直樹さんが就任しました。田中さんはサステナブルな水産物について「資源が限られてきているとは言っても、どうアクションを起こしたらいいのか……なかなかわからないと思う。環境を守るために、どう動いていったらいいのかっていうのはなかなか難しいところです。でも、スーパーでこのMSCエコラベルが付いた製品を選ぶだけで!それだけで海を守る取組みに参加することができるんですよね。MSC「海のエコラベル」は、気軽にすぐ参加できるプロジェクト。皆が参加しやすいものですから、どんどん広まってほしいと思う。そこの一端を担いたい。食卓に海のエコラベルのついた商品ばかりが並んでいるような時代になったらいいと思います。」と語っています。
持続可能な漁業(サステナブル・シーフード)を実現するためには、海産物を捕獲、養殖する上で生態系に与える影響に配慮しつつ、携わる人みんながルールを守りながら漁業の適切な管理システムに従って行うことが大切です。こうした仕組みを私たちも知り、ラベルを意識しながら消費者としての良い選択ができるようにしていきたいですね。