• トップ
  • 記事一覧
  • 横断的にメディアと連携して気候変動問題と向き合う「Media is Hope」の取り組み
RADIO

横断的にメディアと連携して気候変動問題と向き合う「Media is Hope」の取り組み


横断的にメディアと連携して気候変動問題と向き合う「Media is Hope」の取り組み

当WEBメディアと連携し、パーソナリティの新内眞衣さんとともに未来の地球をより良くするための17の持続可能な開発目標からなるSDGsを楽しく分かりやすく学べるニッポン放送のラジオ番組『SDGs MAGAZINE』。3月23日の放送では、気候変動問題と解決策周知に向けた取り組みを行う一般社団法人「Media is Hoe」を特集。共同代表を務める西田吉蔵さん、名取由佳さんを招き、具体的な活動について聞いた。

「Media is Hope」とは

新内 「今日は、私たちメディアとともに気候変動解決に貢献するチーム『Media is Hope』について、実際にスタッフの方をお呼びし、その活動についてご紹介します。一般社団法人『Media is Hope』の西田吉蔵さん、名取由佳さんです。よろしくお願いします」

西田 「ありがとうございます。よろしくお願いします」

名取 「よろしくお願いします」

2021年に発足した「Media is Hope」は、気候変動問題と解決策を一般社会に周知することを目的とし、新聞、テレビ、ラジオ、雑誌、ネット媒体などのメディアを横断して連携しながら、さまざまな事業を行っている非営利型一般社団法人。産業革命前から比較して気温上昇を1.5度未満にすることを目指し創設された。気候変動を解決できる社会を実現するためには、広く行動変容を促すメディアの力は必要と捉え、サポートにつながる活動に取り組んでいる。「メディアをつくる側もえらぶ側もお互いに責任を持ち、公平で公正かつ自由なメディアと持続可能な社会の構築」をビジョンに掲げ、環境保全活動、社会教育、各種メディアとの共同企画、環境問題全般における専門家や活動家の仲介及び連携など多岐にわたる活動を推進。気候変動に関する情報を広めるためのキャンペーンや企業とメディア関係者同士の意見交換の場も提供している。

新内 「お2人以外にメンバーはいらっしゃるんですか」

名取 「はい。今は7人で、実はアメリカとポーランドと日本の3カ国にメンバーがいて結構グローバルにやっております。気候変動の文脈だと、気候変動報道を先進的にやっている国っていうのがあるので、そういったところから知見をもらったりとか、いろいろと気候変動報道をサポートするような組織もあるので、そことパートナーシップを結ぶなどして活動しています」

新内 「はい」

西田 「先日も、ちょうどフランスの公共放送の気象担当の方と連携させてもらって、天気予報の中で気候変動をどういうふうに伝えると良いか、みたいなことを日本メディア向けにレクチャーしてもらうといった勉強会を開催しました」

新内 「フランスとかだと、天気予報の合間に気候変動の情報みたいなのが入っていることが多いっていうことなんですか」

名取 「はい。その知見を日本に展開するために勉強会を開きました」

新内 「日本と世界の気候変動に対するメディアの報じ方に差は感じられますか」

名取 「数としてはそんなに変わらない現実もあったりするんですけど、中身はだいぶ違っています。やはり視聴者、読者の人たちも関心が高いからこそ、リテラシーが上がっていく。先進的な国だとそういうことが起こっていて、日本だとまだまだ関心が追いついていないからこそ情報もふんわりしたものになっていたりとか、そういう課題があると思っています。なので、リテラシーを高めていくために今、サポートをしているという感じです」

COPをめぐる報道

新内 「具体的な活動にも触れていきたいのですが、『気候変動問題と解決策を一般的に周知すること』を目的にしている団体、ということで、昨年『COP29』に参加されたとか」

西田 「はい、2人とも参加しました」

「COP29」とは、2024年11月11日から22日まで開催された「国連気候変動枠組条約第29回締約国会議」のこと。黒海とカスピ海に挟まれたコーカサス地方にあるアゼルバイジャン共和国の首都バクーで開かれ、気候変動対策の長期目標の実現に向けて、各国が合意形成を図った。

名取 「もちろん政策とか協議をしていくのは政府団体や首脳陣の方々なんですけど、『COP』はそれだけではなく、本当にさまざまな気候変動に尽力されている人たちが集まって、その重要な会議の外でもさらにいろいろな会議を行なっています」

新内 「はい」

名取 「『自分たちの国はこんな取り組みをしていますよ』っていうブースがあったりとか、本当に数百、数千のセッションがあって、まさに地球規模で起きている問題をさまざまなコミュニティの人たちが一堂に介して話し合う場としてあるっていうのが醍醐味ですね。私たちのような首脳陣ではない人たちも参加して、そこで起きていることを取材したりとか、発信したりとか、ディスカッションに参加したりとかできます」

新内 「参加された感想は」

西田 「私は初参加で、世界で起こっている声みたいなもの、湧き上がっている熱量みたいなものを非常に強く感じました。やっぱり、日本だとなかなか感じることができないんですけど、特に気候変動の影響を受けやすい国の方々、小さな島に住まれている方とか、アフリカとか、南アジアの方々とか、そういった方と直接触れ合えたのは大きな体験でした」

新内 「今求められる国内の『COP報道』というのは、どのようなものなのでしょうか」

名取 「日本だと、『COP』に行けるメディアもかなり限られているので、どういう政策が決まったとか、どういう国がこの発言をしたとか、それだけだと一般の人たちからするとすごく遠いものに感じてしまう。『へぇ〜』で終わってしまう気がするんですよね」

新内 「うーん」

名取 「なので、『COP』 の報道っていうのは、そこで起きているストーリーや、いろいろな起きていることにもっともっと踏み込むことが必要だと思います。そういったものが、人々に届いていく報道ということになっていくんじゃないでしょうか」

「再エネの日」のイベントを通じて高める機運

「Media is Hope」は2024年9月22日に環境省と東京・渋谷区の後援で「みんなでつくろう再エネの日! 2024」というイベントを開催。気候変動解決に向けて取り組む企業や行政、専門家や実践者、メディアや若者など、さまざまな立場の人や団体が複合施設「渋谷サクラステージ」に集結し、今後の展開や連携に向けたトークセッション、ブースの出展などが行われた。

西田 「そもそもで言うと、テレビ朝日さんの山口豊さんというアナウンサーさんが、すごく気候変動の解決策を提示するような報道を積極的にしてくださっていて、『今まで番組の中の5分、10分の特集枠で放送されていたものを、もっと拡大して特番をぜひ組んでください』っていうお願いをしたところ、放送されることになったのがきっかけです。その放送を、ただ見守って『あぁ、良かったね』っていうだけじゃなくて、その番組をいかに盛り上げるかっていうことに注力しようということで、番組を見ること自体をお祭りにしようと(笑)」

新内 「おおおっ」

西田 「そこで、番組のパブリックビューイングのイベントをまずやろうと思いました。さらに、本当に気候変動の解決策に尽力されているメディア関係者だけじゃなくて、事業者の方だったりとか、若者だったりとか、専門家の方々だったりとか、みんなをお呼びして、本当にここから『気候変動を解決するんだぞ』っていう機運をつくりたいなと思って、イベントを開催いたしました」

新内 「盛り上がりは、いかがでしたか」

名取 「再生可能エネルギーって、かなり漠然と、自然でできるエネルギーとして良いイメージを持たれている方もいらっしゃると思うんですけど、逆に『それって不安定なんじゃないの』という意見があったり、山を削って太陽光パネルを敷いたりとか、結構ネガティブな実際の事例もある中で、それでも大事なソリューションになる。気候変動を解決する上でもそうなんですけど、実はエネルギーを自給自足するっていう観点でも、日本でエネルギーをつくって日本でまわすっていうことは、経済がまわるっていうことでもあるんですよね。そういう意味でも、気候変動の解決もそうですし、地域経済のためにも、再生可能エネルギーってものすごくいいポテンシャルを持っていて、希望なんだよっていうことを多くの方々に知ってもらいたい、体感していただきたいっていう思いを大切に、このイベントを開催したんです」

新内 「はい」

名取 「再生可能エネルギー(の啓蒙など)に尽力されているオピニオンリーダー、今だとスポーツ界、Jリーグの方にご登壇いただいたりとか、ファッションモデル、インフルエンサーの中でも感度の高い方だったりとか、ユースだったりとか、お笑い芸人さんでもSDGsを発信されている方が結構いらっしゃるので、そういったいろんな方々に参加していただいて、一般の方々も行き交う場所でのイベントで再生可能エネルギーに対するイメージが変わっていくんじゃないかなと思って、やっていました」

西田 「結構、ブースが面白かったですよね。いろんなところが出展していて」

新内 「あっ、そうなんですね」

西田 「スローファッションの受注会ができる…」

名取 「受注オンリーのサステナブルファッションのブースがあったりとか、環境の負荷を抑えた食のブースだったりとか」

西田 「大豆でできたアイスクリーム、『ソイスクリーム』というんですけど、それがめちゃくちゃおいしい。今年もやるとしたら、ぜひ食べに来てほしいなと思います」

戸田建設による浮体洋上風力発電を紹介

イベントでは、「Media is Hope」の後押しもあって実現したテレビ朝日の特別番組『SDGsスペシャル「再エネ革命!ニッポンの挑戦」』のパブリックビューイングが行われ、同番組では「SDGs MAGAZINE」でも以前取り上げた戸田建設のSDGsにまつわる取り組みを紹介。浮体式洋上風力発電がクローズアップされた。浮体式洋上風力発電は風車を洋上に浮かべて発電する仕組みで、再生可能エネルギーの最新技術として各国が導入に取り組んでいる。

新内 「この浮体式洋上風力発電は、日本で今実際に動いているものなんですよね」

名取 「そうですね。長崎県五島市の沖合で戸田建設さんが取り組んでいらっしゃるんですけど、『再エネの日』の特番の中でも紹介されました。本当にものすごいご尽力で今、取り組んでいらっしゃるんですけど、われわれも実はその番組の後、実際に五島まで行って…」

新内 「えーっ!? 実物を見てきたんですか!」

名取 「はい。実物を拝見させていただきました」

西田 「そうなんです。戸田建設の広報部長にご案内いただいて、本当に間近で」

新内 「沖合にあるんですよね」

名取 「沖合5キロくらいのところに浮かんでいるんです。もう、すごく静かに浮かんでいるように見えて、私の方が揺れているっていう感じで。何千世帯っていうエネルギーを生み出すみたいなんですけど」

西田 「1800世帯の電力を1基で賄っている」

新内 「1基で!? すごいですね」

名取 「ものすごい可能性を感じましたね。海に浮かんでいる中の部分が魚礁になっていて、珊瑚がついて、そこに新たに魚が集まってきていて、漁師さんたちもものすごくウェルカムしているんですよね」

西田 「はじめはやっぱり住民の方への説明も、結構大変だったそうなんですけど、今では漁業組合の皆さんが、『むしろ魚が獲れてうれしい』みたいなことを仰っています」

表彰制度「Media is Hope AWARD」の意味

また、「Media is Hope」は気候変動解決に資する報道や取り組みを表彰する【Media is Hope AWARD】という取り組みも行っている。

名取 「SDGsとか、気候変動、社会課題に尽力するジャーナリストにお贈りしている賞です。気候変動の問題は、特に推進につながらないという課題があって、その中でもものすごく努力をされて報道している方が多いので、そういった方々に労いの気持ちを込めて表彰させていただいていています。『Media is Hope AWARD』をお贈りすると、やっぱり社内の中での空気が変わると仰るんですよね」

新内 「あぁ」

名取 「『外からの声』って非常に大きくて、私たちはメディアの外から表彰をさせていただいているので、社内の評価につながったりとか、新聞社で言うと『気候変動の記事で紙面が取りやすくなりました』っていうお声だったりとか、視聴者の人たち、読者、リスナーの人たちも『こんなメディアの方がいるんだ』って知るきっかけになる。なかなかメディアの方って、顔が見えないじゃないですか」

新内 「はい」

名取 「なので、やっぱり顔が見えて、そういう努力をされているっていうのを知られると、『応援しよう!』だったりとか、『読んでみようかな』『見てみようかな』っていう気になるので、いい取り組みになっていると思います(笑)」

西田 「(笑)」
そして番組の最後、恒例の質問。新内さんは「Media is Hope」の2人、西田さん、名取さんに「今、私たちができること」=「未来への提言」を聞いた。

西田 「私からは、メディアに対しての提言ということで『課題解決型のメディア』というのを提案させてもらいたいなと思っております」

新内 「名取さんは?」

名取 「私は『メディアを応援しよう!』です」

新内 「メディアを応援しよう?」

名取 「批判の声の方が、やっぱり大きくなりがち、大きくなっているなっていう印象を受けるので…。ただ、この社会の中でメディアっていうのは非常に大きな役割を持っていますし、本当にメディアの中で、こういった気候変動や社会課題を解決しようと思ってご尽力されている方、すごく多くいらっしゃるので、応援するっていう声も、同時に高めていきたいなと思っています。それって、一般の人たちもできる貢献だと思うんですよね」

新内 「はい」

名取 「視聴者だったり、読者だったり、リスナーの方々が『そういう報道を見たいです』って言うことだったりとか、報道してくださっている番組だったりとかを応援することっていうのが、そういう報道につながって、それは結局、私たちにも返ってくるっていう循環だと思うんです。『一緒に応援する』っていうことをしていただけたらなと思っています」

新内 「お2人の熱いエネルギーを私も感じながら今日は楽しくお話させていただきました。今週のゲスト、『Media is Hope』の西田さん、名取さんでした。ありがとうございました」

名取 「ありがとうございました」

西田 「どうも、ありがとうございました」

「Media is Hope」の取り組みを聞き、新内さんは「すごく熱量の高いお2人に来ていただいて、いろいろワクワクするお話をしてくださいました。すごく勉強になりましたし、五島の方にも行かせていただきたいなと思います」と、またSDGsにつながる取り組みへの思いを強くし、情報を発信するメディアの一つとしての自覚を深めた様子だった。

そんな新内さんが2022年4月からパーソナリティを務めてきたラジオメディアである『SDGs MAGAZINE』は、2025年4月にリニューアル。お笑いタレントの土田晃之さんがパーソナリティ、新内さんがパートナーを務め、毎週土曜日の正午から午後4時までオンエアされているニッポン放送「土田晃之 日曜のへそ」の中で、生放送として届けられることになった。「これからも『SDGs』の達成のために、日曜日のこの時間に情報をお伝えしていくことは変わりありませんが、ちょっと放送の形式が変わります。4月からもよろしくお願いします」と新内さん。また新たな環境で、SDGsに関わる情報を発信していく。