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SDGsの原則「誰一人取り残さない」を発達障害の療育に。 科学的根拠と実践を活かした「発達障害へのアプローチ」とは


この記事に該当する目標
4 質の高い教育をみんなに
SDGsの原則「誰一人取り残さない」を発達障害の療育に。 科学的根拠と実践を活かした「発達障害へのアプローチ」とは

国連が掲げるSDGsの原則は、「目標とターゲットがすべての国、すべての人々、及びすべての部分で満たされるよう、誰一人取り残さない-leave no one behind-」こと。
SDGsの17目標のうち、No.4「質の高い教育をみんなに」に関連して、発達障害(自閉症スペクトラム障害、注意欠如・多動性障害(ADHD)など)の子どもたちの特徴を早期に発見し、幼少期から適切で継続的な療育を受けられる環境づくりを目指す「エビデンスに基づく早期療育モデルの地域実装※」という取り組みがあります。
RISTEXの支援対象研究開発プログラム

中心となるNPO法人「ADDS(共同代表 熊 仁美)」は、慶応大学心理学部のゼミを母体とし、発達障害の子どもたちの居宅に赴いて療育する現場体験を基に「現在のサポートに足りないものは何か」をリアルに掴みそれらの問題を社会科学的に解決するべく研究開発や現場での実装を続けています。

親と子が一緒に的確に学ぶことで、継続的な支援を可能に。

プログラムのポイントは、タイトルの通り、「科学的に効果の実証された応用行動分析に基づいた療育サポートを行う」ことで、大きな柱となるのは以下の3つ。

①科学的な研究に基づく療育カリキュラムの開発。慶応大学との共同開発「AI-PAC(アイパック)」を基に、世界中の研究成果を参考に発達支援における600の課題を設定し、一人ひとりの子どもにフィットした発達評価とカリキュラムを提供すること。

②親子が療育を通じて共に学ぶ「ぺあすく」の実施。子どもだけを専門家が療育する手法を改良し、親子が共に「自分たちに合った」療育を学び、さらに保護者が「我が子の専門家」になることで、将来的にも継続可能なサポート力を習得すること。

③サポートの担い手「ABA初級セラピスト」の育成研修。限られた専門家だけではなく、科学的な研究を活かした人材育成をおこなうことで、ABA(応用行動分析)の知識と能力を備えた「親子療育を効果的にサポートできる人材」を育てる取り組み。

さらに、これらのサポートの提供にICTを効果的に導入。療育アプリケーションの利用によって、自宅でもタブレットで発達支援カリキュラムを利用したり記録をとったりすることができ、この点は新型コロナ感染症によるリモート環境下でも高い評価を得ています。コロナ渦で、通所が不可能な場合のオンライン療育は、児童発達支援の報酬算定対象として認められたそうです。

発達障害の早期発見の仕組みは、行政により整備が進み、成果が上がってきています。しかし、その後の療育サポート体制はまだまだ不足なのが現状です。多くの保護者は初動で行政を頼るので、そこにこのプログラムや仕組みが実装されていれば、子どもたちが早期に効果的な療育を受けるチャンスが拡がります。そして、発達障害という個性を持っていても、社会で豊かに暮らしていける未来への希望が生まれるでしょう。
現在、このプログラムは、江戸川区に導入され、今後のさらなる実装が期待されています。「理想は、発達障害という概念が社会からなくなること」、そのために、このプログラムがより多く実装され、社会に役立ってほしいと研究開発者は語ります。

どんな人にもその人にしかない資質があり、一人ひとりが社会の中で輝くために、「人が生きるための科学=社会科学」が活かされている事例です。

RISTEX  https://www.jst.go.jp/ristex
ADDS https://www.adds.or.jp/