夏の防犯対策、親子で覚えよう!世界共通の「助けて」のハンドサイン
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※この記事は2022年1月10日に掲載したものです
毎年1月10日は「110番の日」と、私たちの防犯意識向上を目的として定められました。振り込め詐欺、強盗、ひったくり、ストーカーなど、私たちの身の回りには危険がたくさん潜んでいますが、最近では新型コロナウイルス感染拡大の影響で在宅時間が増えたことから、DV(ドメスティックバイオレンス)や児童虐待が深刻化しているといわれています。
2020年度のDV相談件数は19万30件(※1)、児童虐待相談件数は20万5044件(※2)と、どちらも過去最大の相談件数だったと発表されています。
そんな中、M-1グランプリでお笑い芸人の真空ジェシカさんが取り入れたり、TikTokで話題になっているのが、「助けて」を意味するハンドサインです。この世界共通のハンドサインをみなさんご存知でしょうか。
誰もが知っておくべき世界共通の「助けて」のハンドサイン
「助けて」を意味するハンドサインは、カナダの女性と女児の権利を守る財団「Canadian Women’s Foundation(カナダ女性財団)」によって「助けが必要であることをビデオ通話や対面において相手に知らせるハンドサイン」として考案されました。
1.助けを伝えたい相手に向けて、手のひらを広げる。
2.親指を手のひらの内側に曲げる。
3.親指の上に、他の4本の指をかぶせるように握る。
この一連の動作が「助けて」という意味になり、声を出せない状況などで助けを求める場合に使います。加害者がすぐそばにいる状況でも、知人やまわりに助けを求められる素晴らしいアイデアだと、2020年頃からニュースやSNSを通じて世界中に拡散、国境や宗教も飛び越えた世界共通の助けを求める合図になりました。
海外のネット上では、窓越しの通行人に合図をしたり、自宅に来た人を玄関先で対応する加害者の後ろから合図をしたりするなど、このハンドサインを使った助けを求める方法として広まっています。
ハンドサインを知っていたから解決した海外の事件
実際にアメリカでは、この「助けて」のハンドサインで10代の女性が救出された事例もあります。
女性を救出したケンタッキー州ローレル郡の保安官事務所によると、男性に連れ去られ、助けを求める女性が乗っていた車の後方の運転手が、女性の「助けて」のハンドサインに気づいて911に緊急通報。さらに、当局と連携しながら車を追跡し、女性は高速道路を降りたところで捜査官たちに無事保護されました。保護された女性はノースカロライナ州在住の16歳の女性で、保護される2日前に両親が行方不明届を出していたそうです。
この女性はTikTokでこの「助けて」のハンドサインを知ったそうで、助けを求めるサインに気づいた運転手も同様に、このハンドサインを知っていたそうです。女性は、自宅のあるノールカロライナ州からテネシー州、ケンタッキー州、オハイオ州と長距離にわたり連れていかれ、その間、まわりの車にハンドサインで助けを求めていたそうですが、ようやく気づいてもらえて保護されました。
この事件が無事解決したのは、助けを求めるためのハンドサインを連れ去られた女性が知っていたこと、ハンドサインの意味を理解していて緊急通報した運転手がいたからこそ。このアメリカの事件からもわかるように、助けを求めるほうも、助けを求められるほうも、「助けて」を意味するハンドサインを理解していなければ、事件は解決しなかったかもしれません。
いつ何が起こるか、いつ自分がどちらの立場になるかということは、誰も予測することは出来ません。110番の日をきっかけに「助けて」のハンドサインを、自分のためにも、誰かのためにも、不測の事態に備えて広げていきたいですよね。
助け合える社会になるには、個人の力では限界の場合も
万が一の事態に巻き込まれないためにも、日頃から防犯に対する意識を持っておくことは大切です。しかし、たとえばストーカー問題、DV、児童虐待などは、個人の防犯意識だけで防ぐことはできません。
また、ひとくくりにDVといっても、その内容は暴力だけに限らず、精神的DV、性的DV、経済的DVと多岐に渡ります。同様に児童虐待も、身体的虐待、性的虐待、ネグレクト、心理的虐待とさまざまな虐待があり、児童虐待による死亡事件は年間70件を超え、単純に計算すると5日間に1人の子供が命を落としていることになります。
これらの問題は、個人の防犯意識で防ぐことができるという類ではなく、社会全体でかかわり、考え、そして解決するべき問題になります。また、DVや児童虐待という問題が起きる要因の一つとして、固定的な性別役割分担意識や性差に関する偏見、無意識の思い込みという私たちの中にアンコンシャスバイアスが存在していることもあります。
「女性だから・子供だからこうあるべきだ」「“普通”はそうだ」「こうに決まっている」「どうせ無理」といった、自分の中で固定されている価値観、能力や解釈、理想の押しつけといったアンコンシャスバイアスが、フェミサイドしかり、ジェンダーにもとづく偏見や不平等につながっていることも問題の根底にあるかもしれません。
110番の日をきっかけに、さらにもう一歩踏み込んで、多様性を認め合う社会、誰もが幸せになれる社会、助け合える社会に近づくためには、今、私たちは何ができるのかを考えてみませんか。
とはいえ、今日からすぐできることの第一歩として、まずは予測できない事態に備えて、自分のためにも、誰かのためにも、「助けて」のハンドサインを広げていきましょう。
※1 内閣府男女共同参画局資料
※2 厚生労働局資料