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【その差20時間超!】 世界一長く働く日本の教員たちを救う?部活動の地域移行とは


この記事に該当する目標
8 働きがいも経済成長も
【その差20時間超!】 世界一長く働く日本の教員たちを救う?部活動の地域移行とは

新型コロナウイルス流行の影響もあり、多くの企業が従来の働き方を見直すタイミングではないでしょうか。さまざまな業界で働き方改革が進む一方、教育現場の長時間労働はいまだ改善されていません。病気や死亡に至るリスクが高まると言われている「過労死ライン」で働く教員も少なくないという現状も問題視されています。

2019年発表のOECD国際教員指導環境調査(TALIS)によると、日本の中学校教員の労働時間は週56時間、小学校教員は週54.4時間と報告され、中学校教員の労働時間は世界平均と比べても約20時間も多く、小学教員の仕事時間も調査国の中で唯一50時間を超え、世界一長時間労働であるという結果になりました。
世界一の労働時間だからこそ、それに見合った給料をもらっていると思うかもしれませんが、給料は世界一ではありません。

そこで今回は、世界一長時間労働である日本の教員の働き方について一緒に考えていきたいと思います。

世界で一番忙しい!?日本教員の労働環境問題とは

2019年に「公立学校の教師の勤務時間の上限に関するガイドライン」を文部科学省が発表しました。

このガイドラインには勤務時間外労働について1か月で45時間、1年間で360時間以内と目安が記載されていますが、実際にはこれを超える労働をしている教員がたくさんいるのも事実です。
先に紹介した教員の労働時間の調査からも、中学校教員は参加国平均の38.3時間と比べて大幅に上回っています。 このような教員の労働環境について、テレビなどのニュースで取り上げられることによって、日本の教員は過酷な労働環境にあるというイメージを持っている方が多いのではないでしょうか。

「教員の働き方改革」のひとつとして「部活動の地域移行」が開始

日本では、教員の労働時間の中で「課外活動の指導」は週7.5時間と、参加国平均1.9時間と比較すると、かなり多くの割合を占めているのが現状です。

そんな中「教員の働き方改革」の一つとして、2022年6月にスポーツ庁の有識者会議より、部活動改革の一つである「部活動の地域移行」が提言されました。
部活動は主に教員が指導を行いますが、「部活動の地域移行」はその名の通り、地域のスポーツクラブや民間企業、団体などが生徒たちの指導を行います。

高知県教育委員会が実施した「部活動の地域移行に関するアンケート」の調査結果によると、「部活動を地域クラブ等が担うことについての考え」という質問に対して、中学校教員の賛成派が71.3%、反対派が17.9%。中学校1・2年生の保護者は賛成派が53.4%、反対派が19.0%と、教員・保護者ともに部活動地域移行の取り組みに関して賛成意見が多いことが分かります。

また、中学教員への「部活動の指導に負担を感じているか」では、はいが63.1%、いいえが36.9%という結果となり、「学校部活動の課題と感じていること」には「多忙化により、指導ができない場合がある(78.4%)」「異動により専門的な指導の継続が難しい(66.4%)「専門的知識や指導技術の不足(61.5%)」という回答が見られました。教員の業務負担が多くなっている現状の中で、課外活動の負担が減り、かつ地域の企業や団体によって子供たちに適切な指導が行えることは、教員や保護者にとって賛成意見が多いようです。

また、SNSには、「部活の顧問をしていると家族との時間がなく、家にいてあげられるのは多くて週1なので、地域移行に期待したい。」「希望していないのに運動部顧問にさせられた、という声が毎年でるから地域移行は進めていくべきだと思う。」「部活動の顧問にちゃんと給料を払ってほしい。部活動が地域移行されると、1つの部活に対して数十万円支払われるのに、なんで教員が顧問すると1日1000円以下なのか。」という教員のコメントも寄せられています。

一方で、反対意見があることも事実です。保護者からは、「地域移行するのはいいけど、部活動指導員へ指導料がかかるなら、義務教育の一環として国や自治体が指導料を支払ってほしい。」「地域移行で外部発注になることで“義務教育外活動”になり、“当番が出来ない事情がある親”の子は、部活に出られなくなっていくがそれでいいのか。」など、厳しい意見も飛び交っています。また、地域や競技によっては指導ができる人材が集まらない場合も危惧されています。

部活動指導を行わない海外教員の労働環境

世界と比べると、労働時間や課外活動での指導時間がどの国よりも上回っている日本。日本のように部活動に似た活動は海外にもある一方で、教員が指導をする国は少なく、外部の機関に委ねられることが多いようです。

OECD国際教員指導環境調査によると、日本では課外活動の週の指導時間が7.5時間に対し、フィンランドやノルウェーの北欧諸国ではそれぞれ0.4%、0.7%と、学校で部活をするという概念がないため指導時間がほぼ割かれていません。
同じくドイツでも部活動とされる活動はなく、「フェアアイン」と呼ばれる非営利法人が運営するスポーツクラブなどを通して、子供たちが課外活動をする機会が設けられています。

改革推進期間を経て、教員の働く環境に改革が起きる未来へ

海外教員の働く環境も最初から整っていたわけではありません。働き方改革、部活動改革はまだ始まったばかりです。2023年度からの3年間を「改革推進期間」と定めた方針を元に、試行錯誤しながらも日本の教員の働く環境がより良い方向に変化していくことに期待していきたいですね。