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OPINION

SDGs「自分事化」するためにはどうすれば? 第一人者が「三つの疑問」に回答


SDGs「自分事化」するためにはどうすれば? 第一人者が「三つの疑問」に回答

SDGsが大切なのはわかるけど、いまいちピンと来ない──。みなさんがきっと感じている「3つの疑問」に、SDGs研究の第1人者である慶応義塾大学院政策・メディア研究科の蟹江憲史教授が答えます。

●疑問(1)
「17のゴール全部」ではなく「一部だけ」に貢献するんじゃだめ?

何もしないよりはもちろんいいですが、SDGsは17のゴール全てを実現しようとすることが重要です。互いに矛盾し合う要素をともに実現させようという努力から、イノベーションが生まれます。例えば企業が(8)働きがいも経済成長もだけを重視したのでは意味がなく、経済成長と他のゴールを両立させようとするからこそ、二酸化炭素の排出や環境への負荷を減らす技術が生まれます。

 新型コロナウイルスへの対応は象徴的です。(3)すべての人に健康と福祉をはもちろん最優先ですが、ジェンダーや雇用形態による不平等は起きていないのか、経済成長は無視していいのか。一人一人が17のゴール全てについて考えることで、何をするべきかが見えてきます。

●疑問(2)
大切なのはわかるけど、自分には縁遠いような気がして……。

SDGsを「自分事」に感じるために必要なのは、目の前にあるものが「どこから来て、どこへ行くのか」を想像する力です。例えばこのテーブルは違法伐採された木材じゃないのか。過酷な児童労働で作られていないか。いずれ使い終わったらちゃんと分別してリサイクルされる構造なのか。それとも修理して長く使えるのか。電気、水、服、食べ物など、朝起きてから夜寝るまで、目にしたり手に取ったりしたものについてそんな想像力を働かせれば、SDGsが他人事とは思えないはずです。

●疑問(3)
自分一人が少しぐらい習慣を変えても、地球の未来は変わらないのでは?

今回示した習慣はあくまで第一歩です。大事なのは一人一人が17のゴールを意識すること。その中から新しいアイデアが生まれたり、ビジネスが立ち上がったりするはずです。今の時代、その変化はあっという間に世界中の個人に伝わり、70億倍に増幅されます。

 地球の危機はもはや、政府や企業の努力だけでどうにかなるレベルではありません。このままでは確実に、今の生活を続けることはできなくなる。この星に住み続けるためには、私たち全員の力が不可欠です。SDGsは「No one will be left behind(誰も取り残されない)」が基本理念。弱い立場の人々を「取り残さない」だけでなく、全ての人々が「取り残される」ことなく参加しなければゴールは達成されないのです。