申真衣さんに聞く「会社経営・キャリア・子育て」におけるジェンダーレスな考え方とは?
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東京大学を卒業後に金融業界でキャリアを築き、2017年設立のPEファンド・ミダスキャピタルが出資する株式会社GENDAで代表を務めている申さんは2人の子どもを育てながら、働く女性とママを応援するファッション誌『VERY』の専属モデルとしても活躍しており、ロールモデルとして憧れる人も多くいます。
今回のインタビューでは、申真衣さんが考える「会社経営・キャリア・子育て」におけるジェンダーレスな考え方について話を伺いました。
女性の社会進出と役員登用
まず日本の現状や最近感じることについてお話を聞くと、「アベノミクスと共に日本でもジェンダーギャップ解消のための動きが始まったと思います。日本においては、少子高齢化等の様々な理由がある中で、ジェンダーギャップを始めとする、多様な世の中を許容する世の中になってきたことはすごく良いことだと思っています。もちろん日本だけでなく、世界においてもこの流れは大きな転換点なのではないかと思います。」と話す申さん。
また、女性の社会進出が難しい理由については「小さい頃から見る漫画、アニメ、絵本などで無意識に偏見やバイアスを生んでしまっている可能性があるなと子育てをしながら感じています。男の子は王子様のように強くなければいけない、女の子はお姫様のようにおとなしくおしとやかでいなければならない、など様々な角度から「こうあるべきだ」というジェンダー差を受けてしまっているのではないか」ともいいます。
ミダスキャピタルとSDGs
申さんが現在所属しているGENDAの出資元ファンドであるミダスキャピタルグループでは、2024年までに管理するファンドが過半数もしくは筆頭株主である企業全社で、経営幹部に女性を1名以上登用することを決めています。
ミダスキャピタルグループの1つであるGENDAとして女性幹部登用を始めとするダイバーシティ経営として大切にしていることを聞くと、申さんは 「企業は顧客の多様化に即していく必要があります。ジェンダーだけでなく、年代やバックグラウンドの異なる多様な考えを持つ人の意見を聞くことは大切にしたいです。」と答えました。
また、 「社員に向けて経営陣として正しいメッセージを伝えることを意識しています。男性の社員が育休をとりやすいよう、男性経営陣が率先して育休をとるなどステレオタイプを覆すようなメッセージを社員に向けて発信していかないといけないと思っています。一方で、全ての社員が育児休暇を取らなければいけないということではなく、そこにも自由があるべきで、育休の取得有無は事由に取捨選択できるような環境作りが必要だと考えています。」と話します。
申さんのキャリアと子育て
会社の代表であると同時に2児の母親でもある申さん。子育てをする際にジェンダーバイアスを作らないようにするには、どうすれば良いのでしょうか。申さんは、「普段から私と夫は”女の子だから”、”男の子だから”ということを一切言わないようにしています。しかし成長していく中で、私達のような考えとは異なる人に出会うこともあると思います。私は親や大人の考えがすべて正しいわけではないと思っているので、その時に周りに聞いたりしながら自分で何が正しいのかを考えていこう、ということを伝えなくてはいけないと思っています。」と話します。
また、「お行儀が悪い時は、女の子なんだからマナーをよくしよう、というのではなく、お行儀が悪いと家族以外の人とご飯を食べる時にご飯が美味しくなくなるよね、などジェンダーを意識させるような伝え方にならないよう気をつけています。子供接するときにも性別や年齢に関係なく一人の人間として話すことを意識しています。」とも。
また、申さんはキャリアと子育ての両立を体現しています。その秘訣はパートナー選びにあるそうで、「実は、結婚への不安や葛藤があり、パートナーと結婚の意味をすり合わせるために一緒に結婚生活に関する契約書を作りました。」といいます。家事と育児は分担する、転勤による別居はなるべく一年半以内にするなど、結婚する上で価値観のすり合わせを行ったことでより良い関係が築け、キャリアと子育てを両立できているそうです。
申さんの取り組みとSDGs
申さんの考え方や会社としての取り組みは、実はSDGsの達成に大きく関わります。SDGsは持続可能な社会のために定めた17の目標のことを言います。さらにそれぞれのゴールの中でいくつかの具体的なターゲットが定められています。
その中でも、今回は5-1「すべての女性と女の子に対するあらゆる差別をなくす」5-5「政治や経済や社会のなかで、何かを決めるときに、女性も男性と同じように参加したり、リーダーになったりできるようにする」5-c「男女の平等をすすめ、すべての女性や女の子があらゆるレベルで能力を高められるように、適切な政策や効果のある法律を作り、強化する」などのターゲットの達成に関わっています。 ミダスキャピタルは社会によって無意識の中に刷り込まれるバイアスを取り払い、より自由に楽しく働くスタンスを重視しており、申さん自身も育児や働き方の中でジェンダーに囚われない自由を大切にしているのですね。
最後に
自分の幸せのものさしを誰かの手に委ねず、自分が幸せだと感じることを見つけることが一番大切だと話す申さん。
申さんのようにニュートラルな考え方を持ち、無意識下にあるバイアスにとらわれず、自由に働ける社会の実現のために、一人一人がより柔軟な捉え方で人と接することが大事だと思いました。
[プロフィール]
GENDA代表取締役社長 申 真衣 (しんまい)
東京大学経済学部経済学科卒。 2007年ゴールドマン・サックス証券株式会社入社。金融法人営業部で金融機関向け債券営業に従事。その後、2010年より金融商品開発部にて、金利・為替系デリバティブの商品開発・提案業務、グローバルな金融規制にかかる助言業務等幅広い業務に従事。2016年4月、金融商品開発部 部長、2018年1月、マネージングディレクターに就任。
2018年5月、株式会社GENDAを共同創業。
2019年6月より現職。