東京パラリンピックを撮影したゲッティイメージズがビジュアルで目指す多様な社会とは? 障害者のリアルな“日常”を描いた「Disability Collection」
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1336219019, Lintao Zhang /ゲッティイメージズ
新型コロナウイルスの影響で1年延期され、緊急事態宣言下・原則無観客で開催された東京パラリンピックが、9月5日に閉幕しました。世界162の国・地域から集まった約4400人の選手が13日間で22競技、539種目に参加し、日本からは史上最多254人の選手が参加、51個のメダルを獲得しました。
競泳の宮崎哲選手や鈴木孝幸選手、車いすテニスの国枝慎吾選手、マラソンの道下美里選手など多くの日本人選手が活躍し、車いすラグビーや車いすバスケの激しいぶつかり合いや、ボッチャの戦略性の高い頭脳戦など、世界トップレベルのプレーの数々に、オリンピック同様、多くの人が驚きや感動を覚えたのではないでしょうか。
国際パラリンピック委員会(以下IPC)オフィシャルフォトエージェンシーのゲッティイメージズは、東京パラリンピックでの彼らの雄姿を、写真を通して世界中に届けました。
ゲッティイメージズの検索データによると、世界で最もダウンロードされた日本人アスリートの写真は、女子100m背泳ぎS1決勝で銀メダルを獲得した山田美幸選手が、表彰台で東京2020大会の銀メダルマスコットを足で受け取り、満面の笑みを浮かべた瞬間を捉えた1枚。生まれつき両腕がなく両足の長さも異なる山田選手は、場内の拍手にも左右長さの違う足を上げて声援に応えます。競技の際も、車椅子から自分で降り、自分の足でプールサイドまで歩いて腰をかけ、落ちるようにして入水。
障害があるから諦めるのではなく、障害があるからこそできることを工夫してベストを尽くす。競技初日に最年少メダリストとなった彼女の天真爛漫な笑顔は、私たちに勇気を与えました。
どんな障害も自らの努力や周囲のサポートによってカバーしながら、最大限のパフォーマンスをする選手たちの姿を見て、「多様性」や「共生社会」について考えるきっかけになったことは間違いないでしょう。多様性を考えるうえで、パラリンピックが果たす役割が大きいことは、アンドリュー・パーソンズIPC会長の「スポーツは私たちに多様性の中の調和を見せてくれた」という閉会式のスピーチからも読み取れます。
一方で、理想的な共生社会はなかなか実現できていないのが現状です。障害者が立ち向かう課題に対する、社会の広い理解が深まらない要因には、障害者に対するステレオタイプが影響しているかもしれません。実際、2020年に日本のゲッティイメージズのサイト上でダウンロードされたビジュアルのうち、障害者のアイデンティティを持つ人が含まれているビジュアルは1%弱。そのうち身体的な障害を示すビジュアルが全体の58%を占めています。障害のある人のリアルな日常を描いたビジュアルそのものが少ないことはもちろん、人々が描く障害者のイメージの多くが、“障害”のみにフォーカスした、偏ったものが多いため、知らず知らずのうちに固定概念を生み出していることも要因の一つではないでしょうか。
共生社会の実現に向けて「多様性と調和」を掲げた「#WeThe15」というキャンペーンをご存じの方も多いでしょう。社会の人々の障害者への意識を変え、世界の人口の15%を占める12億人の障害者への偏見や差別をなくすことを目的に、東京2020パラリンピックにあわせ発表された動画キャンペーンは、世界的なムーブメントになりました。
映像には、子供を抱えた車椅子の男性や、街で暮らす義足の女性、結婚式を迎えた視覚障害のカップルなど、様々な障害を持つ人たちが、恋人とデートしたり、チームメイトとサッカーで遊んだり、ときにはスマホを落としたり…誰もが経験したことのあるような日常の生活を送っている様子が描かれています。「There is nothing “special”about us.(私たちは特別ではない)」。彼らの“障害”にフォーカスするのではなく、ありのままの日常の姿を映すことで、障害のある人は決して「特別な存在」ではなく、多様性の一部であることに気づかせてくれます。
世界最大のストックフォトサイト「iStock」を運営し、デジタルコンテンツを世界200カ国以上に提供するゲッティイメージズ。そんなゲッティイメージズが、障害に対する固定観念を打破することを目的に障害のある人のリアルな日常を描いたビジュアルコレクション「Disability Collection」もまた、”障害は「克服する」ものではなく、アイデンティティの一部として日常とともにある”ということをビジュアルを通して伝えています。
「Disability Collection」を制作する側と利用する側双方のために作成されたチェックポイントは、障害のある人に対して、固定観念にとらわれない理解を深めるためのヒントとして参考になるかもしれません。下記はその一部です。
・義肢や車椅子などの器具や補装具、その人の障害のみにフォーカスせずに、その人のさまざまな活動が描かれていますか?
・障害を「克服する」必要があるものとしてではなく、その人のアイデンティティの一部として表現されていますか?
パラリンピックをきっかけに、「多様性」や「共生社会」と向き合う機運が高まっている今こそ、障害者に対する差別や固定概念を無くしていくための社会の在り方を改めて見つめ直しみてはいかがでしょうか。
「Disability Collection」は、こちらからご覧いただけます。
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