スクリーンから聞こえてくるのは、 生き物たちの「鳴き声」?それとも「泣き声」?
この記事に該当する目標
私たちの暮らしを支える生態系は、加速している環境破壊によって脅かされています。この危機的状況を止める為には、私たち一人ひとりが地球の自然に対するマインドを変えていくことが求められます。
みなさんは“地球の自然が凝縮された、生きるミュージアム”をご存知でしょうか。
『ずかんミュージアム銀座』は、デジタルとリアルが融合した空間をめぐりながら、リアルな生態系や自然の壮大さを五感で体感できる新感覚の体験型施設です。
今回の記事では、ずかんミュージアム銀座に登場する4つのエリアを紹介しながら、そこから想起される環境問題についても触れていきます。
各ゾーンからみえてくる環境問題
ウォーターフォールゾーン
このゾーンは、豊かな水を有する日本らしい、美しい川を象徴する生き物たちが現れます。
薄暗い暗闇の中で、ホタルの揺らめく光と水の流れる音が、癒しの時間を与えてくれます。しかし、このような場所では「水質汚染」が進行していることにより、川の水が流れ込む海にまで悪影響を与えているのです。
蛇口をひねれば綺麗な水がでてくる日本ですが、生活排水の約2~4割が未処理のまま河川に放流されている地域が、まだ数多くあります。川の水が汚れると、海でプランクトンが増殖して赤潮が発生し、漁獲高の激減や、海中が酸素不足となって魚や貝が住めなくなってしまうのです。
ディープフォレストゾーン
このゾーンは、暖かい地域のうっそうとした森や、寒い地域の針葉樹の生えた森などにすむ生き物が現れます。
樹を表現した背の高い造形物があちらこちらにあり、迷路のようになっていますが、木々が揺れる音や足音を頼りにすると、様々な生き物たちに出会えます。
しかし、このような場所では「森林破壊」が進行していることにより、様々な生物のすみかを奪い、絶滅の危機に追い込んでいるのです。
国際連合の報告によると、2015年以降毎年失われる天然林の面積は、約10万平方キロメートルといわれており、東京都と同じ大きさの森が、今も1週間ごとに失われ続けているということです。現在、森林をすみかとする世界の野生生物のうち、絶滅の危機が高いとされる種の数は、1万4,000種以上にものぼります。
アンダーウォーターゾーン
このゾーンは、世界各地の様々な淡水に暮らしている、大きな生き物や不思議な生き物が現れます。
上から光が差し込んでいて、天井にもスクリーンがあり、まるで水の中から見上げているような感覚を楽しむことができます。
しかし、このような場所では「淡水環境の劣化」が進んでいることにより、両生類や魚類、水生昆虫などのすみかを奪い、水資源を枯渇させる危機にさらしているのです。
WWF(世界自然保護基金)は2020年9月に公開した『生きている地球レポート(Living planet report)2020』の中で、世界の淡水の生物多様性の豊かさが、1970年と比較して84%も減少していることを指摘しました。淡水環境に関連する脅威としては、河川などの水のつながりの分断と、水の過剰なくみ上げが挙げられます。
ワイルドフィールドゾーン
このゾーンは、サバンナのように背の高い草が広がる草原や、草がまばらに生えた乾燥地帯にすむ生き物たちが現れます。
広々とした大地が映し出された大きなスクリーンに囲まれて、開放感を覚えます。
しかし、このような場所では「砂漠化」が進行していることにより、農業や牧畜業など、食料の生産基盤が失われることになるので、世界で食料不足が進む可能性があるのです。
砂漠化は、作物を作るための過剰な耕作や開拓による土地の栄養分の消費、許容限度を超えた過剰な放牧による植物や水資源の消費、過剰な伐採による樹木の減少が原因です。土地の劣化によって、世界の食料生産が2035年までに12%減少すると予測されています。
美しい自然環境の裏には、今回紹介したような深刻な環境破壊が進行しています。人間と自然環境の繋がりは、切り離せないものであり、我々の行動が、多くの生き物たちを犠牲にしているかもしれません。
それを考えると、ずかんミュージアムに登場する生き物たちが、私たちに何か訴えかけているようにも見えてきます。ここで体感できる自然が、リアルな世界でも持続していけるようにという想いにつながるといいですね。