交通インフラを支え続ける三菱重工エンジニアリングの挑戦
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海外旅行をすると日本とのさまざまな違いの発見があるかと思いますが、交通インフラの違いに驚いたことはありませんか?新興国である東南アジア等の国に行くと、日本の東京等と違い、都市部でもバイクや自動車の量が多いことに気づいた人もいると思います。
世界404都市の交通状況の調査結果をまとめた「トムトム・トラフィック・インデックス」(https://www.tomtom.com/en_gb/traffic-index/ranking/)の渋滞レベルランキング2021を見ても新興国の都市が上位に並んでおり、このような新興国では、道路や鉄道等の交通インフラの開発や整備が課題として挙げられています。
交通インフラを整備することは渋滞問題の解決だけでなく、経済成長にも好影響があるのではないかといわれています。「経済成長とインフラの整備水準の関係性に関する国際比較研究(2015年)」(https://policy-practice.com/db/2_195.pdf)によると、先進国で総道路延長、総鉄道延長等の交通インフラの水準と10年間のGDP成長率が比例関係にあることから、自動車台数に応じた道路の整備や、人口に応じた鉄道の整備がGDPの成長に寄与する可能性が指摘されています。
国連持続可能な開発サミットで採択されたSDGsの中にも「9-1. すべての人々に安価で公平なアクセスに重点を置いた経済発展と人間の福祉を支援するために、地域・越境インフラを含む質の高い、信頼でき、持続可能かつ強靱(レジリエント)なインフラを開発する」とあるように、交通インフラを整備することは持続可能な社会の実現に重要だと考えられます。
長く使い続けられる交通インフラに欠かせない「交通O&M」とは
三菱重工エンジニアリングでは、人々の暮らしを支える交通インフラをより長くより最適に維持できるようにしたいという想いから、交通システムの建設だけでなく、運行および保守サービスまでを一貫して提供する「交通O&M(オペレーション&メンテナンス)」事業を強化しています。これにより、交通システムの設計、調達、製造、建設から運行・保守サービスまで、バリューチェーン(価値連鎖)の上流から下流まで一貫して提供できるようになります。
日々の運行・保守サービスを担うことで、設計や製造だけでは得られなかった様々な知見が蓄積でき、新しく交通システムを建設するとなった際の提案に活かすことが可能になります。また、各国で環境規制や法律が変更された場合や、設備更新、改修、増車、延伸等の要望にも迅速に対応することができます。交通インフラを長く最適に維持するためには、このような運行・保守サービスを拡充させることはもちろん、建設後20~30年以上と長期にわたるクライアントとの信頼関係も重要な要素だと考えています。
世界有数の国際ハブ空港であるシンガポールのチャンギ国際空港には、毎年6,500万人以上の人が訪れています。そんな多くの人の空港内の移動を支えているのが、ゴムタイヤ式全自動無人運転車両の「Skytrain」です。
この「Skytrain」は三菱重工エンジニアリングが設計から製造、さらに運行からメンテナンスまで一貫して行っていますが、2007年の稼働開始から乗降客数が年々増加し、2018年には空港ターミナルに隣接する大型商業施設が開業予定だったことからさらなる乗降客数増加が予想され、輸送力増強が急務となっていました。そのような状況の中、輸送力増強のための追加車両供給や増設工事などについて、それまで10年以上にわたって安定した運行・保守サービスを提供してきた実績が評価された同社が受注することとなりました。
SDGsへの貢献
このように、三菱重工エンジニアリングの交通O&M事業は、クライアントとの信頼関係を鍵に交通インフラの課題解決に貢献してきましたが、実はSDGsの目標達成にも大きく貢献しています。
同社の運行・保守サービスにより、適切なタイミングでの保守点検や修理、改良が可能となります。これは、人々の暮らしを支える交通インフラを長期、安全、安定して使用することに大きく貢献しています。そのため、目標9「産業と技術革新の基盤をつくろう」、目標11「住み続けられるまちづくりを」、さらには、目標12「つくる責任 つかう責任」につながるでしょう。
加えて、交通システムは電力で稼働するため、走行時に直接的な二酸化炭素の排出はありません。また、軽量ゆえにエネルギー効率もよく、環境への負荷が抑えられています。ゴムタイヤ式のため鉄道と比較して急こう配や急カーブにも対応可能なことから、バスや自動車などといった二酸化炭素を排出する市街地の移動手段に取って代わることもできます。このような観点で、SDGs目標13「気候変動に具体的な対策を」にもつながるといえます。
さらなる高みを目指して
三菱重工エンジニアリングは交通O&M事業を通じて、クライアントに対して付加価値の高いサービスを提供するだけでなく、持続可能な交通インフラの拡充にも貢献してきました。そして、新たな挑戦にも継続して取り組んでいます。特に海外での交通システム運営事業の拡大を視野に入れており、フランスのパートナーとともに事業会社をアラブ首長国連邦に設立し、昨年からドバイメトロのO&M事業に参画しています。さらに、アジア市場の強化を目的に新設されたシンガポールの「テクニカルサービスセンター」を拠点とし、フィリピン、マカオ、香港等のアジア圏への積極的な交通サービス事業の展開も目指しています。
設計や製造、建設の段階から、運行・保守に至るまでの全てを担っているからこそ得られるクライアントからの信頼や知識、人材を活かし、適切に要望に応えるだけでなく、環境への負荷軽減にも貢献している交通システムとその運行・保守を含めたアフターサービス。交通インフラプロジェクトへの積極的な参画を通じ、世界各国の地域の経済発展等への貢献や、渋滞などといった地域課題への解決策の提供も目指していきたいです。